【Live Information】
中学~高校時代には、たいていの人は「好きな芸能人、憧れの歌手」に夢中になったりしますね。
ぼくは、なぜかとくにアツく入れ込んだ芸能人はいなかったです。
太田裕美さんとか、石川秀美さんとか、キャンディーズのランちゃんとか好きでしたけれど、、、でも、なんとなく「いいな」程度だったですね。
もっぱらロック、とくに洋楽ばっかり聴いていたので、いわゆる歌謡曲、とくにアイドル系歌手の曲はテレビの歌番組で見るくらい。わざわざレコードや雑誌を買ったりはしなかったです。
1980年代を席捲した女性歌手といえば、なんといっても松田聖子さんと中森明菜さんでしょう。
とにかく出すレコードは片っ端からチャートの首位に立つし、テレビでこのふたりが見られない日はなかったし、雑誌の表紙やカラーグラビアを飾るのもしょっちゅうだったし。
明るいイメージでチャーミングな聖子さん。
陰りがあって例えていうならちょっと蓮っ葉な雰囲気の明菜さん。
なにかにつけて対照的でした。
そんなふたりのレコードを、いつの間にかぼくも買うようになっていました。
その理由は、ふたりのリリースする曲は単なる歌謡曲とは違い、ロックやポップス色が濃く、彼女たちのルックスやキャラクターを抜きにしても、その曲だけを充分楽しむことができたからです。
「ミ・アモーレ」は明菜さんの11枚目のシングル・レコードです。
彼女の曲作りを支えるコンポーザー・チームは、デビュー当初から1枚ごとに変わっているんですね。
とくに作曲陣は、来生たかお、芹澤廣明、大沢誉志幸、細野晴臣、林哲司、玉置浩二、高中正義、井上陽水など、ポップス~ロック寄りの、当時の俊英ぞろい。
曲の雰囲気も偏らず、クオリティの高い、バラエティに富んだ作品群ができ上ったのも、こうしたことが関係しているのかもしれません。
そういえば、明菜嬢のシングル・レコードのジャケット裏面には、歌詞とともにメロディとコードを記載した譜面が印刷されていました。
今と比べてあまり楽譜が手に入らなかった当時としては、とても嬉しかったです。
この曲の作曲者は、ジャズ・ピアニストの松岡直也さん。
日本におけるラテン・ジャズ系の大御所ミュージシャンです。
ちなみに松田聖子さんの作品では、日本ジャズ界を代表するミュージシャン、ジャズ・トランペッターの日野皓正さんが、1984年に「夏服のイヴ」を作曲していますが、これもライバル関係の表れなのでしょうか。
1980年代後半の日本音楽シーンはジャズ・ブームに湧いていました。1986年の角川映画「キャバレー」で使われた「レフト・アローン」や、1987年の武田薬品「アリナミンA」のCMで使われた「テイク・ファイヴ」によって火がついたものですが、もしかすると、当時の大スターだったこのふたりがジャズ・ミュージシャンに作品を依頼したことがそのブームの発端だったのかもしれません。
エスニックな感覚がただようなヒット曲といえば、1979年の「異邦人」(久保田早紀)が有名ですが、この曲も異国の香りがほのかに漂う、情緒豊かな曲です。
翳りのあるややセンチメンタルなメロディーが明菜嬢にぴったりです。
サビでの高ぶり、エンディングで繰り返されるビブラートの効いた「アモーレ」のフレーズ。
官能的ですらあります。
ラテン・パーカッションとブラス・セクションが南米のイメージを膨らませてくれます。
ベースを弾いているのは、これも日本のラテン・ジャズに絶対に欠かせない高橋ゲタ夫さん。
熱さを秘めつつも緩やかに、そして強力にグルーブするリズム・セクションが心地いいんです。
不思議な魔力を感じるカーニバルの夜。
もしあなたとはぐれてしまったら、その魔力と熱狂にときめく私は、、、
という、聴き手に想像を委ねるような歌詞が、これまた非日常の危険な雰囲気を漂わせているんです。
この内容、明菜嬢の歌いっぷりにとってもマッチしているのではないでしょうか。
それにしても明菜嬢の声って、その存在感というか、醸し出す空気の濃さはやはり半端じゃないですね。
ひくめの声質、ダークな雰囲気、どこかミステリアスな表情。
あの山口百恵さんを彷彿とさせるところもあったりして。
でも時折り見せる笑顔は屈託がなくて、とっても可愛らしいんです。
単なるアイドルでは収まらない、いや収まるはずのない、素晴らしいボーカリストです。
「ミ・アモーレ」はオリコンで初登場1位、63万枚を超える売り上げを記録する大ヒットとなりました。
明菜嬢は、この曲で1985年の日本レコード大賞を受賞しています。
そして今では、この曲は以後に連なる「サンド・ベージュ」「ジプシー・クイーン」「タンゴ・ノアール」「アルマージ」などのエスニック路線のはしりとも言える位置づけがなされています。
【歌 詞】
◆ミ・アモーレ [Meu amor é…]
■歌
中森明菜
■シングル・リリース
1985年3月8日
■作詞
康珍化
■作曲・編曲
松岡直也
■録音メンバー
中森明菜(vocal)
松岡直也(keyboards)
和田アキラ(electric-guitar)
井上満(cavaquinho)
高橋ゲタ夫(electric-bass)
広瀬徳志(drums)
三島一洋(latin-percussions)
フランシス・シルヴァ(latin-percussions)
吉田憲司、林研一郎、岸義和(trumpet)
西山健治、中沢忠孝、花坂義孝(trombone)
友田啓明グループ(strings)
Eve(chorus)
■収録アルバム
D404ME(1985年)
■チャート最高位
1985年週間チャート オリコン1位(1985.3.18~3.25 2週連続)
1985年年間チャート オリコン2位
推定売上枚数 約63万枚
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