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スポーツは、言うなれば人間ドラマです。
勝利のためにひたすらベストを尽くし、悔いを残さないよう全力を尽くす選手たち。
ぼくたちは、彼らのプレイそのものに驚嘆し、人生さながらの劇的なゲーム展開に心を震わせ、透けて見える彼らの生き様に感涙する。
その瞬間、選手たちは自分の全てを投げうっているからこそ、見ているわれわれも熱い想いを共感できるんですね。
スポーツを題材にした映画も数多くあります。
感動のポイントが分かりやすく伝えられるからでしょうか。
スポーツ映画の名作といえば、『メジャー・リーグ』、『ロッキー』が真っ先に頭に浮かびます。
そして、ぼくとしては強く強く、『ティン・カップ』を推したいのです。
スポーツって、だいたいがスピード感があることで興奮度も増すと思うんです。
逆に、スピード感のないスポーツってなんだろう。
野球でいえば投手戦のときの外野手とか。
カーリングもそうかもしれない。
やっぱり、プレーする時間の大半を歩いているゴルフかな。
ところがこの『ティン・カップ』、とくにクライマックスときたら、ひとりで部屋で観ていてもガッツ・ポーズはしてしまうし、思わず「おぉ~~!」という歓声は出てしまうし、なんなら感動のあまり胸はドキドキ目はウルウルなんです。(個人差は、もちろんあります)
ゴルフって、テレビで放送されていると、実は結構そのまま見入ってしまうんです。
視聴者が飽きないよういろんな場面に切り替えたり、アナウンサーと解説者のやりとりがあったり、プレイバックを入れたりして、制作側が緊張と緩和のバランスをうまく取っているからなんですね。
つまり、投手戦の野球にも、カーリングにも言えることだと思うんですが、スピード感というより緊張感が漂っていれば、ゲームは締まるんです。
『ティン・カップ』は映画であるだけに、盛り上がるような編集のうまさをとても感じますね。
それから、近年のライヴDVDを観ても思うことですが、ギャラリーの表情やしぐさをうまく取り入れた画面は、試合そのものの緊張度や観ているこちらの興奮度などを高める効果がありますね。とくにアメリカ人のストレートな感情表現や、手の動きなどは表情豊かでとてもカッコいいですから。
主演は、ケヴィン・コスナー。
「当たりはずれの大きい俳優」などという評もあるみたいですが、ぼくは大好きです。
ハンサムだけど、どこか野性味が感じられるし、チャーミングです。
そして、彼は運動神経がとてもいいんですね。
今までに「さよならゲーム」(野球)、「ラヴ・オブ・ザ・ゲーム」(野球)などに出演していますが、身のこなしやフォームなど、本物のスポーツ選手と比べても違和感がありません。(ちなみに「さよならゲーム」も、この「ティン・カップ」と同じくロン・シェルトン監督作品です)
彼が、この映画の主人公である不遇の天才ゴルファー、「ティン・カップ」ことロイ・マカヴォイを演じます。
不遇といっても暗さはありません。ティン・カップは、自分の能力を信じすぎるほど信じている自信家で、がさつとまでは言わないにしてもちょっとワイルドで、はっきりとした自己主張を持っている男です。
ティン・カップことロイ・マカヴォイ(ケヴィン・コスナー)
相手役のモリーンを演じるのは、レネ・ルッソ。
シリアスな雰囲気も出すかと思えば、コミカルなやりとりやアクションもなんなくこなします。
いっときは「メジャー・リーグ」(共演トム・ベレンジャー)、「リーサル・ウェポン」(共演メル・ギブソン)、「アウトブレイク」(共演ダスティン・ホフマン)、「ザ・シークレット・サービス」(共演クリント・イーストウッド)、「ショウタイム」(共演ロバート・デ・ニーロ&エディ・マーフィー)など、「これでもか」というくらい話題作のヒロインを務めていましたね。
ドリーン(リンダ・ハート:左)とモリー(レネ・ルッソ:右)
ストーリーのポイントは、なんといってもティン・カップの強気で、血の気が多くて、「一か八か」的なキャラクターです。
今だったら「アンガー・マネジメント」を勧められるタイプでしょうね。
モリーに対しては一途で、自分のことを省みることができたり、子どもっぽかったりするところもあるのですが。。。
堅実なプレーを「弱気」「臆病」と捉えるところがあったりして、「気持ちを抑えろ」と言う信頼のおけるキャディにして親友のロミオともしばしばケンカになったりします。しかし冷静なロミオは、心の中ではティン・カップの実力を信じています。ティン・カップが自分で自分の感情をコントロールできれば最高のゴルファーなのだ、と知っています。
ロミオ(チーチ・マリン:左)とティン・カップ
恋するモリーを振り向かせよう、そして人生を立て直すきっかけにしようと、ティン・カップは全米オープンに出場するのですが、初日は恋敵にして学生時代からのライバルであるシムズになんと16打差をつけられ、順位も気持ちも沈んでしまうんです。
ラウンド後のラウンジでシムズに嫌味を浴びせられてるのを聞いていたモリーは頭に血が上って(このあたり、感情の高まり方がティン・カップによく似ているのが笑える)、マカヴォイはラウンジ内から屋外の池の鳥にワン・ボール、ワン・ショットでボールを当てられる、という不可能とも思える賭けをシムズに突きつけます。
この不可能とも思える賭けに勝ったティン・カップは翌日から快進撃を続け、最終日の優勝争いに残ってシムズと熾烈な争いを繰り広げるわけです。
そのティン・カップの前に立ちふさがるのが、グリーン手前の池が行く手を阻む難攻不落の18番ホール。
確実に刻んで確実にスコアをキープするか、正面からコースに挑むか。
3日目まで、その池に阻まれ続けるものの、なんとか平静を保って好調を維持するティン・カップ。
そして、最終日に迎えた18番ホール。
ここを冷静に攻められればほぼ優勝は確実なのです。
シムズ(ドン・ジョンソン:左)とティン・カップ
しかしティン・カップの夢は、「イーグルを取ればあのジャック・ニクラウスを超えられる!」。
そして彼の打ったセカンド・ショットはついに池を超え、グリーンに乗る。
ついにこの難ホールを攻略したか!と思いきや、グリーンの傾斜のせいでボールは後戻りして、池へ・・・。
4日連続して池にボールを落としたティン・カップは、これまでの3日間ボールをドロップして池の傍から確実に打ち直したにもかかわらず、この日はついに同じ場所からの打ち直しを迷わず選択するのです。
自分をコントロールできていたティン・カップが、素の自分へ戻る瞬間です。
打ち直し、ボールはまた池へ。
何かに取り憑つかれたように何度も打ち直し、ボールはそのたびに池へ。
意固地なだけなのか、単なる強情か、やけくそなのか、勝算はあるのか。
そしてとうとう・・・。
ティン・カップは敗れました。
でもそれは相手に対する敗北ではなく、自分に対しての敗北です。
しかし、胸を張っていい敗北ではないでしょうか。
自分の感情をコントロールしきれなかったけれど、自分を貫き通して敗れたのですから。
ティン・カップは、試合に勝つことより、自分の生き方を貫くことを選んだんですね。
でも、ということは、試合には負けたけれど、自分で自分に突きつけた挑戦には勝った、とも言えるのではないでしょうか。
だからこそクライマックスでこんなにも感動できるのではないかと思うんです。
クライマックスのスリル感は、ぼくの大好きな「ミッドナイト・ラン」や「タワーリング・インフェルノ」に並ぶものだと思っています。
◆ティン・カップ/Tin Cup
■1996年アメリカ映画
■配給
ワーナー・ブラザーズ
■製作総指揮
アーノン・ミルチャン
■製作
ゲイリー・フォスター
デヴィッド・レスター
■公開
1996年8月16日(アメリカ)
1996年9月14日(日本)
■監督
ロン・シェルトン
■脚本
ジョン・ノーヴィル、ロン・シェルトン
■音楽
ウィリアム・ロス
■出演
ケヴィン・コスナー(ロイ・マカヴォイ)
レネ・ルッソ(モリー・グリスウォルド)
ドン・ジョンソン(デヴィッド・シムズ)
チーチ・マリン(ロミオ・ポーザー)
リンダ・ハート(ドリーン)
デニス・バークレイ(アール)
レックス・リン(デューイ)
ルー・マイヤーズ(クリント)
リチャード・ラインバック(カート)
ジョージ・ペレス(ホセ)
ミッキー・ジョーンズ(ターク)
マイケル・ミルホーン(ブーン)
ジム・ナンツ(CBSアナウンサー)
ケン・ヴェンチュリ(CBSアナウンサー)
ベン・ライト(CBSアナウンサー)
ゲイリー・マッコード(本人役)
クレイグ・スタドラー(本人役)
ピーター・ジェイコブセン(本人役) etc
■上映時間
135分
■エンディング・テーマ
「This Could Take All Night」(アマンダ・マーシャル)
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