昨年からハマっています、米澤穂信さんの作品。
去年は『インシテミル』が映画化されたこともあってか、最近は、本屋さんで特設コーナーとかもよく見かけますね。
私がこれまで読んでいる作品と言えば。
単発物では、映画にもなった『インシテミル』。
シリーズ物では、「やらなくても良いことはやらない。やらなくてはいけないことは手短に」をモットーとする人生省エネ主義の主人公が、なぜか、その人生のモットーとは裏腹に、学校に潜む日常の謎を解くため奔走する羽目になる『古典部シリーズ』。
そして、同じくシリーズ物では。
決して目立たない出しゃばらない「小市民」を目指しているにも関わらず、どうしても偉そうに推理を広げてしまう小鳩クンと、自分に嫌な想いをさせた人には徹底的に復讐しないと気が済まないスイーツ大好きな小佐内さんの『小市民シリーズ』ですね。
『小市民シリーズ』は、タイトル全てに、季節限定スイーツのタイトルが付いているので、私の中で『スイーツシリーズ』なのですが(笑)
で。
つい先週、読み終えたのは、『古典部シリーズ』の第4作。
『遠まわりする雛』です。
私、この人の作品では『古典部シリーズ』より『小市民シリーズ』の方が好きだなぁ~とずっと思っていたのですが。
『古典部シリーズ』も第3作目から、キャラクターの性格など色々分かってきて、愛着が湧き。
今では、両方とも選べないくらい好きですね。
特に、この『遠まわりする雛』は、『古典部シリーズ』の中でも、一番好きな作品かも~~~。
『古典部シリーズ』は、主人公が高校1年生の折木奉太郎。
彼の人生のモットーは「やらなくても良いことはやらない。やらなくてはいけないことは手短に」。
人生は省エネで生きる主義。
何事にも我関せずを通す彼が、高校に入学し、ひょんなことから古典部に入部。
すると同じ部員の好奇心旺盛なお嬢様、千反田えるに振り回され、日常に潜むあんな謎こんな謎を推理することになり。
省エネどころか、実に有意義な学校生活を送ってしまうことになる~という物語。
シリーズ1作目の『氷菓』は、何十年も前から創刊されている古典部文集のタイトルの謎を解き明かすお話。
なぜ、当時の古典部員は、文集タイトルを『氷菓』にしたのか。
これが明らかになって時、哀しい過去が判明するのですよね。
シリーズ2作目の『愚者のエンドロール』は、解決編のないミステリ映画の結末を推理する話。
シリーズ3作目の『クドリャフカの順番』は、文化祭中に起こる、『ABC殺人事件』を真似たかのような連続窃盗事件の謎を推理するお話。
米澤さんの作風の特徴としては。
とにかく、読後スッキリしない・・・というか。
なんとも、切な~~~く、もどかし~~~い気持ちにさせられるのですよね。
でも、その読後感が、なんかヤミツキになっちゃうというか。
特に、この『古典部シリーズ』の特徴としては。
その場に居ない人の『想い』を推理する・・・ということが多いと思います。
そして、推理した結果、スッキリすることもあれば、そうでないことの方も多いというか・・・。
で。
話は戻って。
シリーズ4作目、『遠まわりする雛』、読み終えました。
今回は短編集でして。
シリーズ1~3が、春、夏、秋と時系列を追っているの対し。
こちらは、短編自体が、春夏秋冬、いろいろな季節のお話。
主人公達の1年を描いた・・・って感じかな。
シリーズ1~3の事件の合間合間の彼らの姿・・・というか。
7つの短編集、とても面白かったです。
「やるべきことなら手短に」
これは、主人公ホータローが、古典部に入部したての頃のお話。
好奇心旺盛なお嬢様・えるに振り回されるきっかけ~みたいな感じ。
放課後の音楽室に出た幽霊の謎。学校の怪談みたいでおもしろい!
この時の主人公は、まだ、「人生省エネ主義」を徹底してて。シリーズ3作目まで読んでいる身としては、そんなホータローの姿勢が懐かしかったです。
「大罪を犯す」
普段はめったに怒らない、お嬢様・えるが、授業中に生徒を激しく叱る数学教師に対して、臆することもせず意見する・・・というお話。
その数学教師は、自分のミスを、生徒のミスと勘違いし、激怒した訳ですが、その教師側のミスをえるが指摘するのですよ。
で。
その教師のミスというのは。
まだ授業で教えていない箇所を、既に教えていると勘違いし、生徒があまりに無知だったので激怒した・・・という物なのですが。
なぜ、数学教師は、えるのクラスと、他のクラスの進行具合を間違えたのか・・・。生徒にも厳しい代わりに、自分にも厳しい先生が、なぜ、そんなミスをしたのか? ホータローの推理が光ります。
この作品の読後も、独特だったな。
あまりにも厳しく先生に意見したえるが、
「先生に悪いことしたかもしれません・・・」
と呟いたのが印象的でした。
「正体見たり」
これは、夏休みのお話。
古典部の合宿で、田舎の民宿に行くことに。
そこで、女子部員のえると、摩耶花が幽霊を見ます。
「幽霊なんて存在するわけがない」というホータローは、その幽霊の正体を推理。
怪談系なお話は好きです~。
古典部の合宿という設定も良かったですね!
そして、読後は・・・やっぱり、切なかった・・・というか。
何でも真相が分かれば良いってモンでもないのかもなぁ~と。
「心あたりのある者は」
放課後の学校に流れた校内放送。
いかにも慌てた風の、教頭先生による、
「10月31日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、職員室柴崎のところまで来なさい」
という放送。
なぜ、名前を言わないのか?
それは、名前が分からないから・・・としても。なぜ、名前の分からない者を呼び出すのに、こんなに大慌てになっているのか?
放課後の教室で、この放送を聞いていた、えるは、興味を持ち。
そして、ホータローが、10月31日に巧文堂で何が起こったのかを推理することになります。
この作品に限った訳ことではないですが、ホータローって、ミステリで言うところのいわゆる「安楽椅子探偵」なのですよね。
でも、殺人とかのないミステリでの「安楽椅子探偵」ぶり、良いですね。
「あきましておめでとうございます」
この短編集の中でも、特に面白かったお話です。
お正月の夜。
地元の名士・・・昔で言うところの大地主の娘である、お嬢様えるは、父親の名代で、ある神社に新年のご挨拶に伺うことに。
その神社では、同じ古典部員の摩耶花が巫女姿でバイトしている~ということもあり。
初詣とひやかしも兼ねて、えるに付き合って神社に行くホータロー。
そこで、ひょんなことから社務所の仕事を頼まれ。
えると2人で、蔵に酒粕を取りにいきます。
が。
間違って、蔵ではなく納屋の方に入ってしまい、しかも、2人が納屋にいることを知らずに、誰かが施錠!
夜の神社。
とても寒い中、納屋に閉じこめられてしまった、ホータローとえる。
とはいえ、神社には参拝客も多いので、大声を出せば、すぐに人が気付いて助けてくれる~~~そう楽観視したホータローですが。
異を唱えたのは、える。
というのも、彼女は名士である父親の名代として挨拶に来た身。
それが、同級生男の子と、夜に納屋にいて閉じこめられた・・・となると、なにやらイカガワシイ噂を立てられでもしたら困る、と。
因みに、えるもホータローも携帯を持っていません。
そんな訳で、2人は納屋に閉じこめられたまま、なんとか、巫女バイト中の摩耶花に自分たちの危機を知らせられないか思案する・・・というお話。
いつもは当事者になることなく、第三者の視点で推理をするホータローですが、今回ばかりは、自分が当事者。
真っ暗で激寒な納屋にいつまでも閉じこめられていては大変・・・と、必死に脱出策を推理します。
事件(?)の当事者になってしまうホータローというのが珍しくって。興味深いお話でした。
「手作りチョコレート事件」
福部里志というホータローの中学時代からの友人。彼もまた古典部員です。
そして、里志のことを好きなのが、摩耶花。
彼女は、中学の時から、里志にアタックしているものの。
それをのらりくらりと交わしている里志です。
別に、摩耶花のことを嫌いというわけではなく、友人としては仲の良い、里志と摩耶花。
そんな摩耶花がバレンタインデーに、里志に手作りチョコを作るのですが。。。。
そのチョコが盗まれるというお話。
う~ん。
これも、読後感がなんとも言えなかった。
多分、真相を明らかにしたら、摩耶花だけでなく、えるも、とても傷付くに違いない。
なので、男子チームであるホータローと里志は、嘘の推理を展開し、彼女達をやり過ごすのですよね。
でも、そうすることによって。
えるや摩耶花は傷付かなかったかもしれないけど。
全然関係ない女子生徒に、チョコ泥棒の濡れ衣を着せてしまうことに。
無実の女子生徒は、卒業するまでずっと、えるに「チョコレートを盗った人」という目で見られ続けてしまう訳ですよね。
それは、ちょっと・・・酷い。
そして、そうまでして嘘の真相を組み立てたのに・・・摩耶花は多分、本当は誰がチョコを盗んだのか、真実を知っている感じですし。
結局、この嘘は、誰が得だったのか・・・・・・?
里志の複雑な心理と、それを理解できないホータロー。
スッキリしないなぁ(>_<)
「遠まわりする雛」
この短編が、この本の表題作にもなっています。
流石、表題作だけあって、一番面白かったし、好きなお話です。
彼らが2年生に進級する直前の春休みのお話。
「生き雛祭」という、お雛様行列のお祭りで、毎年お雛様を務めている地元の名士のお嬢様・える。
祭り行列の参加者の一人が、急なケガで出られなくなったから・・・と、ホータローに代役を依頼します。
そして、嫌々ながらも引き受けるホータロー。
がしかし。
祭り当日。
行列が通らなくてはいけない橋が工事を始めてしまい通行止めに。
その橋の工事については、予め、祭りで行列が通るから、工事開始は、祭りが終わってからにしてくれと通告してあり、業者側も了解していたハズなのに。
祭りの主催者を名乗った何者かが、
「行列は、その橋を通らなくなったから、祭りの日からでも、工事を開始してOK」
と連絡したとのこと。
お陰で、祭り直前に、主催者側は大パニック。
違う橋を通るとなると、行列の距離が倍になってしまい。
終わりの時刻が大幅にずれ込むことになる。
行列の後も、なにやかやと行事が目白押しな上、テレビ局の取材も入っているというのに、それは困る。
かといって、地域の古い行事のため、近道をし、違う地区に入るというのも、風習的に憚られる。
一体、誰が何のために、こんな嘘をついて、祭りを混乱させたのか?
通行止めになって、祭りの進行がうまくいかない・・・。
なんだか、現実にもいかにも有りそうな、身近なお話が面白かったです。
そして、お祭りだけでなく、えるやホータローの想いが色々と明らかになるお話でもあって。
やっぱり、読後は切なかった。
っていうか、普段はどこか超然としてるお嬢様なえるだけど。
本当は、「家」に縛られてでないと生きられないのかな~と、それを思うと、なんだか、苦しい。
ただ「家」を背負って生きていくことに、彼女自身は、不満を持っているのか? それとも、生まれたときから当たり前なこととして育っているから、何も疑問を抱いていないのか。それは分からないけど。
でも、彼女には、将来に自由な選択肢がないのかなぁと考えさせられる作品でした。
そして、ホータローも。
いつもは、好奇心が旺盛すぎるえるを、少々、うっとうしく感じていたハズなのに。
生き雛祭でのえるを見て、彼女への恋心を認識しちゃうのですよね。
で。
「手作りチョコレート事件」の時、理解できなかった里志の気持ちが始めて分かるようになる・・・という。
これまでは、ある意味、ただ漫然と部活動をしていただけのメンバーだけど。恋心が芽生えたり、将来の進路を考えたりと、彼らの時間が動き出したっていう印象を受けました。
でも、確かに。
実際の高校生活に於いても。
なんとなく日々の学校生活を送っている1年生のころから比べると、2年生になると進路のことも含めて、色々と考えることが多くなりますよね。
それに、恋だのなんだのが加わると。
ホント、いつまでも、子供ではいられないというか・・・。
古典部メンバーも、そんな感じで、少しずつ、成長していって居るのかな~と思いました。
次回作・・・彼らが2年生に進級したお話も、もう出版されているのですよね。
読むのが楽しみです!
と。
今日は、先週読み終わった『遠まわりする雛』の感想でした☆
去年は『インシテミル』が映画化されたこともあってか、最近は、本屋さんで特設コーナーとかもよく見かけますね。
私がこれまで読んでいる作品と言えば。
単発物では、映画にもなった『インシテミル』。
シリーズ物では、「やらなくても良いことはやらない。やらなくてはいけないことは手短に」をモットーとする人生省エネ主義の主人公が、なぜか、その人生のモットーとは裏腹に、学校に潜む日常の謎を解くため奔走する羽目になる『古典部シリーズ』。
そして、同じくシリーズ物では。
決して目立たない出しゃばらない「小市民」を目指しているにも関わらず、どうしても偉そうに推理を広げてしまう小鳩クンと、自分に嫌な想いをさせた人には徹底的に復讐しないと気が済まないスイーツ大好きな小佐内さんの『小市民シリーズ』ですね。
『小市民シリーズ』は、タイトル全てに、季節限定スイーツのタイトルが付いているので、私の中で『スイーツシリーズ』なのですが(笑)
で。
つい先週、読み終えたのは、『古典部シリーズ』の第4作。
『遠まわりする雛』です。
私、この人の作品では『古典部シリーズ』より『小市民シリーズ』の方が好きだなぁ~とずっと思っていたのですが。
『古典部シリーズ』も第3作目から、キャラクターの性格など色々分かってきて、愛着が湧き。
今では、両方とも選べないくらい好きですね。
特に、この『遠まわりする雛』は、『古典部シリーズ』の中でも、一番好きな作品かも~~~。
『古典部シリーズ』は、主人公が高校1年生の折木奉太郎。
彼の人生のモットーは「やらなくても良いことはやらない。やらなくてはいけないことは手短に」。
人生は省エネで生きる主義。
何事にも我関せずを通す彼が、高校に入学し、ひょんなことから古典部に入部。
すると同じ部員の好奇心旺盛なお嬢様、千反田えるに振り回され、日常に潜むあんな謎こんな謎を推理することになり。
省エネどころか、実に有意義な学校生活を送ってしまうことになる~という物語。
シリーズ1作目の『氷菓』は、何十年も前から創刊されている古典部文集のタイトルの謎を解き明かすお話。
なぜ、当時の古典部員は、文集タイトルを『氷菓』にしたのか。
これが明らかになって時、哀しい過去が判明するのですよね。
シリーズ2作目の『愚者のエンドロール』は、解決編のないミステリ映画の結末を推理する話。
シリーズ3作目の『クドリャフカの順番』は、文化祭中に起こる、『ABC殺人事件』を真似たかのような連続窃盗事件の謎を推理するお話。
米澤さんの作風の特徴としては。
とにかく、読後スッキリしない・・・というか。
なんとも、切な~~~く、もどかし~~~い気持ちにさせられるのですよね。
でも、その読後感が、なんかヤミツキになっちゃうというか。
特に、この『古典部シリーズ』の特徴としては。
その場に居ない人の『想い』を推理する・・・ということが多いと思います。
そして、推理した結果、スッキリすることもあれば、そうでないことの方も多いというか・・・。
で。
話は戻って。
シリーズ4作目、『遠まわりする雛』、読み終えました。
今回は短編集でして。
シリーズ1~3が、春、夏、秋と時系列を追っているの対し。
こちらは、短編自体が、春夏秋冬、いろいろな季節のお話。
主人公達の1年を描いた・・・って感じかな。
シリーズ1~3の事件の合間合間の彼らの姿・・・というか。
7つの短編集、とても面白かったです。
「やるべきことなら手短に」
これは、主人公ホータローが、古典部に入部したての頃のお話。
好奇心旺盛なお嬢様・えるに振り回されるきっかけ~みたいな感じ。
放課後の音楽室に出た幽霊の謎。学校の怪談みたいでおもしろい!
この時の主人公は、まだ、「人生省エネ主義」を徹底してて。シリーズ3作目まで読んでいる身としては、そんなホータローの姿勢が懐かしかったです。
「大罪を犯す」
普段はめったに怒らない、お嬢様・えるが、授業中に生徒を激しく叱る数学教師に対して、臆することもせず意見する・・・というお話。
その数学教師は、自分のミスを、生徒のミスと勘違いし、激怒した訳ですが、その教師側のミスをえるが指摘するのですよ。
で。
その教師のミスというのは。
まだ授業で教えていない箇所を、既に教えていると勘違いし、生徒があまりに無知だったので激怒した・・・という物なのですが。
なぜ、数学教師は、えるのクラスと、他のクラスの進行具合を間違えたのか・・・。生徒にも厳しい代わりに、自分にも厳しい先生が、なぜ、そんなミスをしたのか? ホータローの推理が光ります。
この作品の読後も、独特だったな。
あまりにも厳しく先生に意見したえるが、
「先生に悪いことしたかもしれません・・・」
と呟いたのが印象的でした。
「正体見たり」
これは、夏休みのお話。
古典部の合宿で、田舎の民宿に行くことに。
そこで、女子部員のえると、摩耶花が幽霊を見ます。
「幽霊なんて存在するわけがない」というホータローは、その幽霊の正体を推理。
怪談系なお話は好きです~。
古典部の合宿という設定も良かったですね!
そして、読後は・・・やっぱり、切なかった・・・というか。
何でも真相が分かれば良いってモンでもないのかもなぁ~と。
「心あたりのある者は」
放課後の学校に流れた校内放送。
いかにも慌てた風の、教頭先生による、
「10月31日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、職員室柴崎のところまで来なさい」
という放送。
なぜ、名前を言わないのか?
それは、名前が分からないから・・・としても。なぜ、名前の分からない者を呼び出すのに、こんなに大慌てになっているのか?
放課後の教室で、この放送を聞いていた、えるは、興味を持ち。
そして、ホータローが、10月31日に巧文堂で何が起こったのかを推理することになります。
この作品に限った訳ことではないですが、ホータローって、ミステリで言うところのいわゆる「安楽椅子探偵」なのですよね。
でも、殺人とかのないミステリでの「安楽椅子探偵」ぶり、良いですね。
「あきましておめでとうございます」
この短編集の中でも、特に面白かったお話です。
お正月の夜。
地元の名士・・・昔で言うところの大地主の娘である、お嬢様えるは、父親の名代で、ある神社に新年のご挨拶に伺うことに。
その神社では、同じ古典部員の摩耶花が巫女姿でバイトしている~ということもあり。
初詣とひやかしも兼ねて、えるに付き合って神社に行くホータロー。
そこで、ひょんなことから社務所の仕事を頼まれ。
えると2人で、蔵に酒粕を取りにいきます。
が。
間違って、蔵ではなく納屋の方に入ってしまい、しかも、2人が納屋にいることを知らずに、誰かが施錠!
夜の神社。
とても寒い中、納屋に閉じこめられてしまった、ホータローとえる。
とはいえ、神社には参拝客も多いので、大声を出せば、すぐに人が気付いて助けてくれる~~~そう楽観視したホータローですが。
異を唱えたのは、える。
というのも、彼女は名士である父親の名代として挨拶に来た身。
それが、同級生男の子と、夜に納屋にいて閉じこめられた・・・となると、なにやらイカガワシイ噂を立てられでもしたら困る、と。
因みに、えるもホータローも携帯を持っていません。
そんな訳で、2人は納屋に閉じこめられたまま、なんとか、巫女バイト中の摩耶花に自分たちの危機を知らせられないか思案する・・・というお話。
いつもは当事者になることなく、第三者の視点で推理をするホータローですが、今回ばかりは、自分が当事者。
真っ暗で激寒な納屋にいつまでも閉じこめられていては大変・・・と、必死に脱出策を推理します。
事件(?)の当事者になってしまうホータローというのが珍しくって。興味深いお話でした。
「手作りチョコレート事件」
福部里志というホータローの中学時代からの友人。彼もまた古典部員です。
そして、里志のことを好きなのが、摩耶花。
彼女は、中学の時から、里志にアタックしているものの。
それをのらりくらりと交わしている里志です。
別に、摩耶花のことを嫌いというわけではなく、友人としては仲の良い、里志と摩耶花。
そんな摩耶花がバレンタインデーに、里志に手作りチョコを作るのですが。。。。
そのチョコが盗まれるというお話。
う~ん。
これも、読後感がなんとも言えなかった。
多分、真相を明らかにしたら、摩耶花だけでなく、えるも、とても傷付くに違いない。
なので、男子チームであるホータローと里志は、嘘の推理を展開し、彼女達をやり過ごすのですよね。
でも、そうすることによって。
えるや摩耶花は傷付かなかったかもしれないけど。
全然関係ない女子生徒に、チョコ泥棒の濡れ衣を着せてしまうことに。
無実の女子生徒は、卒業するまでずっと、えるに「チョコレートを盗った人」という目で見られ続けてしまう訳ですよね。
それは、ちょっと・・・酷い。
そして、そうまでして嘘の真相を組み立てたのに・・・摩耶花は多分、本当は誰がチョコを盗んだのか、真実を知っている感じですし。
結局、この嘘は、誰が得だったのか・・・・・・?
里志の複雑な心理と、それを理解できないホータロー。
スッキリしないなぁ(>_<)
「遠まわりする雛」
この短編が、この本の表題作にもなっています。
流石、表題作だけあって、一番面白かったし、好きなお話です。
彼らが2年生に進級する直前の春休みのお話。
「生き雛祭」という、お雛様行列のお祭りで、毎年お雛様を務めている地元の名士のお嬢様・える。
祭り行列の参加者の一人が、急なケガで出られなくなったから・・・と、ホータローに代役を依頼します。
そして、嫌々ながらも引き受けるホータロー。
がしかし。
祭り当日。
行列が通らなくてはいけない橋が工事を始めてしまい通行止めに。
その橋の工事については、予め、祭りで行列が通るから、工事開始は、祭りが終わってからにしてくれと通告してあり、業者側も了解していたハズなのに。
祭りの主催者を名乗った何者かが、
「行列は、その橋を通らなくなったから、祭りの日からでも、工事を開始してOK」
と連絡したとのこと。
お陰で、祭り直前に、主催者側は大パニック。
違う橋を通るとなると、行列の距離が倍になってしまい。
終わりの時刻が大幅にずれ込むことになる。
行列の後も、なにやかやと行事が目白押しな上、テレビ局の取材も入っているというのに、それは困る。
かといって、地域の古い行事のため、近道をし、違う地区に入るというのも、風習的に憚られる。
一体、誰が何のために、こんな嘘をついて、祭りを混乱させたのか?
通行止めになって、祭りの進行がうまくいかない・・・。
なんだか、現実にもいかにも有りそうな、身近なお話が面白かったです。
そして、お祭りだけでなく、えるやホータローの想いが色々と明らかになるお話でもあって。
やっぱり、読後は切なかった。
っていうか、普段はどこか超然としてるお嬢様なえるだけど。
本当は、「家」に縛られてでないと生きられないのかな~と、それを思うと、なんだか、苦しい。
ただ「家」を背負って生きていくことに、彼女自身は、不満を持っているのか? それとも、生まれたときから当たり前なこととして育っているから、何も疑問を抱いていないのか。それは分からないけど。
でも、彼女には、将来に自由な選択肢がないのかなぁと考えさせられる作品でした。
そして、ホータローも。
いつもは、好奇心が旺盛すぎるえるを、少々、うっとうしく感じていたハズなのに。
生き雛祭でのえるを見て、彼女への恋心を認識しちゃうのですよね。
で。
「手作りチョコレート事件」の時、理解できなかった里志の気持ちが始めて分かるようになる・・・という。
これまでは、ある意味、ただ漫然と部活動をしていただけのメンバーだけど。恋心が芽生えたり、将来の進路を考えたりと、彼らの時間が動き出したっていう印象を受けました。
でも、確かに。
実際の高校生活に於いても。
なんとなく日々の学校生活を送っている1年生のころから比べると、2年生になると進路のことも含めて、色々と考えることが多くなりますよね。
それに、恋だのなんだのが加わると。
ホント、いつまでも、子供ではいられないというか・・・。
古典部メンバーも、そんな感じで、少しずつ、成長していって居るのかな~と思いました。
次回作・・・彼らが2年生に進級したお話も、もう出版されているのですよね。
読むのが楽しみです!
と。
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