読み終わりました(≧▽≦)
先週末に発売された、藤木稟さん著の『黄泉津比良坂、血祭りの館 探偵・朱雀十五の事件簿3』!!
ちなみに、このシリーズは、10年くらい前に徳間書店から出ていた作品で、去年から、角川ホラー文庫で表紙も一新して復刊されているものです。
そして、表紙イラストを描かれているのは、『バチカン奇跡調査官』シリーズの表紙を描かれているTHORES柴本さんです(^^)b
この朱雀シリーズの復刊も、今回で3巻目。
シリーズ1、2に関しては、こちらの日記で書いてます↓↓↓
『陀吉尼の紡ぐ糸 探偵・朱雀十五の事件簿1』
『ハーメルンに哭く笛 探偵・朱雀十五の事件簿2』
1、2巻では、舞台は昭和9~10年の帝都・東京。
一高(今の東京大学)出身のエリート検事だったものの、ある事故から失明してしまい、その後は検事を辞めて、吉原の顧問弁護士をしている朱雀十五が、一見、物の怪の仕業のように思われる、奇怪な殺人事件を謎解いていくミステリです。
本当に物の怪や幽霊でないと不可能・・・というような摩訶不思議でおどろおどろしい事件なのに、朱雀が推理すると、ちゃんと説明のつく、人間の手による犯罪なのだ・・・ということが解き明かされて。
この世で一番怖いのは、怨霊でも祟りでもなくて、人間そのものなんだ・・・と思わせる怖さのあるお話でした。
でもでも、今回の3巻は、1、2巻とは、ちょっと趣向が違いまして。
舞台も、帝都ではなくて、奈良の十津川。
和歌山との県境で、熊野詣で有名な、熊野の近くですね。
関西でも数少ない、とても深い山の中です。
そして、時代も大正時代。
朱雀も、まだ目が見えている少年、現役の一高生なんです。
そう、これは、朱雀十五が少年時代に経験した事件の物語。
十津川の山奥の山頂に、まるで、他者の介入を拒むように聳え立つ、豪華絢爛な洋館。
そこには、代々、その地を治めて来た、地元の旧家である天主家一族が住んでいるのですよね。
その天主家の敷地内には、どういう造りになっているのか、決して鳴らない鐘のある鐘楼と、絶対に動かないと言われている2つの巨岩があるのですよ。
で、そのならない鐘が鳴ったり、動かない岩が動いた時、凶事が起こる・・・という言い伝えが。
そんなある時、決して人間の力では動かせないような、巨大な岩が動き。
凶事の前触れでは?と家人や召使の恐れる通り、それをきっかけに、脈々と続いてきた歴史ある血族達がどんどんと殺されていく連続殺人が起こる・・・というお話です。
とりあえず、もう、とにかく、終始怖かったです(>_<)
っていうか、1、2巻も、おどろおどろしい恐怖はあったのですが。
なんというか、それは、舞台が昭和初期、モダンな帝都で起こるので(いや、それはそれで余計に怖いんだけど)、まだ、なんというか、現実味というか、人間味を感じるのですがね。
今回のお話は、そんな帝都からとても離れた、田舎の山奥。
帝都は、もう色々とモダァンな文化が開花している時代。
そして、都会の喧騒に満ち溢れている。。。。
でもでも、今回のお話では、そういう帝都のモダァンさも都会の華やかさも喧噪も無い。
ただただ静かな、世間の動きから取り残されたような一族が住む洋館が舞台で。
しかも、旧家にありがちな、「お家ルール」っていうのかな?
日本の法律が適用されないことが、まかり通っている考え方の人達ばかり。
「天主家で起こったことは、全て、天主家の中で解決します。警察などに通報して、家の醜聞が世間に知られたらとんでもない(キリッ)」
というような世界ですよ~。
そして、婚姻関係も、尊筋と言われる、一族の中でも本家筋の人間同士で、つまり、濃い血の繋がり同士で繰り返されているのですよね。
うん。
多分、この時代でも、法律的に結婚できないでしょ!?って間柄の者同士で婚姻関係を結んで、家を存続させている・・・・。
はたまた、一族の長である宗主は、一夫多妻制。
側室を持つのもOK。
でも、その側室も、天主家ゆかりの者でないとダメ。
そういう一族の様々な管理は、外に居る「御審議役」という人たちによって、監視されている・・・・。
なんか、もう、完全に時代から取り残されている感じがとても怖いですよね。
そして、そんなルールを破って、現宗主・茂道が、帝都からお気に入りのショーガール・境子を第二夫人として迎え入れたところから、一族の過去の祟りが復活したっていうのかな?
現宗主には、正妻・鴇子との間に長男・安蔵が一人いるのですが。
安蔵は、気の病で、とても跡取りが務まりそうもない。
となると、第二夫人が生んだ方の長男・太刀男が跡取りか・・・という風にみなされているのですが。
この太刀男、お家のルールに頑ななまでに忠実で、「跡取りは正妻の長男・安蔵が継ぐべきであり、自分には資格がない」とひたすら辞退しているのですよね。
自分が生んだ子とはいえ、そんな太刀男を快く思わない第二夫人は、可愛がっている次男・箱男を跡取りにさせたいと思い。
怪しいツテを使って、変な薬を入手。
現宗主・茂道に、自分が生んだ次男を跡取りにし、莫大な遺産を相続させるよう、遺言を書かせようとするのですが・・・。人を意のままに操れるという、その怪しげな薬が効き過ぎたのか、茂道、薬を飲んだ途端、遺言を書く間もなく、ポックリ死亡。
死体を隠すために、境子は、箱男と、同じく自分の生んだ娘・弓子の3人で、茂道の死体をバラバラに解体して、櫃の中に隠すのですよね。
これが冒頭シーン。
でも、そんな境子たちの悪事を皮切りに、今度は、正当な跡取りである正妻の生んだ安蔵が殺害され。
それにショックを受けた、正妻・鴇子も、飛び降り自殺。
洋館に住んでいる、一族たちは、恐怖に震えあがります。
そんな中、自分たちが直接手を下したのは、宗主・茂道だけなんだけど、都合良く邪魔者が消えてくれて、これ幸いとほくそ笑む第二夫人境子達。。。。。。なのですが。。。。。。。
なぜか、第二夫人が宗主のバラバラ死体を隠しておいたハズの櫃から、彼女の次男・箱男の死体が出てきたり。
そして、鍵のかかった部屋で寝ていたハズの娘・弓子も、何者かに殺害されます。
そしてそして、第二夫人自身も、塔の上に吊るされた形で死体となって発見。
・・・と、どこまで続くんだ、連続殺人!!って感じです。
そんな凶行が、曼荼羅の趣向や、はたまたキリスト教の趣向を取り入れた、不可思議な造りの洋館で起こっていく訳ですし。
しかも、そんな連続殺人が起こる中、浅草のオペラ座がいきなり訪ねてきて。
既に死んでいるハズの、現宗主に依頼された・・・と言って、オペラ『魔笛』を上演するのですよね。
でも、そこで上演される『魔笛』が、この屋敷で起こっていることを物語に取り入れたようなオペラで。
不気味な事、この上ないっっ!!!
また、このお屋敷の大広間には、宗主・茂道の家族である、鴇子、安蔵、境子、太刀男、箱男、弓子の、それぞれの名前をモチーフにした、鳥、蔵、鏡、太刀、箱、弓を描いた西洋画が飾られているのですが。
その、鳥や蔵、太刀、箱、弓、鏡の部分が、何者かによって切り裂かれていて。
その裏側に、怪しげな詩が書かれていて。
考えみたら、皆、その詩の通りに殺されているのですよね。
ここら辺りは、『そして誰もいなくなった』を彷彿としちゃいました。
人里から隔離された山奥、閉ざされた洋館、呪われた血族、そして、詩の通りに殺されていく見立て殺人、館を徘徊する亡霊、などなど、などなど。
古今東西のミステリー要素、てんこ盛りって感じでして。
ミステリーファンとしては、美味しい物語でした。怖いけどね。
あっ、そうそう。
この物語。
サブタイトルに『朱雀十五』と書いてあったり、はたまた、帯やあらすじの部分に「少年時代の朱雀十五の活躍!」って書いてあるから、そういう先入観で読みましたが。
さてさて、朱雀十五は、どこに出てくるのでしょう(^^)b
というか、ラストのラスト、物語の終わる直前まで、朱雀十五の名前は一切出てこないのですよね。
とはいえ、十五シリーズを読んでいる者なら、その描写で、「この子が実は十五なんだろうなぁ」とすぐに分かるとは思いますが(^m^)
この一族の参事・・・・境子が茂道を殺して隠したために、真相を知らない、他の人達は、皆、「宗主、失踪!」って思う訳で。
そんな宗主失踪の直後から、安蔵の死、鴇子の自殺と不吉なことが続いたので、清めのために、東京から、僧侶が呼ばれるのですよね。
こうして、慈恵という僧が、この呪われた洋館にやってくるのですが、慈恵は、見習い坊主である自分の息子・聖宝を連れてくるのですよ。
でも、この息子、まだ学生で、髪の毛もあるし、普段は学生服を着ている。
そしてそして、物凄い美貌の美少年坊主。
この現役一高生の聖宝こそが、朱雀十五なのです(^m^)
本当にラストのラストで、「僕の本名は朱雀十五といいます」って明かされるのですよね。
っていうか、あの朱雀十五が、子供の頃はお坊さん見習いだったなんて・・・なんかビックリっ。
いや、予め、「少年時代の朱雀十五の活躍」という前知識がなかったら、全然別作品だと思って読んでいただろうなぁ。
っていうか、知らずに読んで、ラストにビックリしたかった(笑)
まあ、今回の復刊では「朱雀十五の事件簿3」って、サブタイトルもついてますし。
すぐにピンと来ちゃうけど。
もしかしたら、最初に出版されたときは、そういうのが明かされていなくて。
初めて読んだ人は、ラストに「おおおぉぉぉ~~~っっ」って思ったりしたのかな? かな?
そうそう。
この物語・・・というか、この血みどろ事件。
完全な解決はしていないのですよね。
なので、謎は謎のまま。。。。。
来月復刊される、『黄泉津比良坂、暗夜行路 探偵・朱雀十五の事件簿4』に続きます。
そして、エピローグで分かるのですが、時代は、元に戻ってて。
現在、つまり、昭和初期の朱雀十五。。。まだ目が見えていた頃の少年僧侶ではなく、盲目の弁護士として登場するのですよね。
あの惨劇から14年後。
今度は、天主家の「絶対に鳴らない鐘」が鳴り響き。
そして、また、血の惨劇が始まる。
そんなわけで、天主家の執事が、14年前の事件を体験している聖宝・・・つまり、十五に事件解決の依頼をし。
そして、夜行列車で、十津川に向かっている十五・・・・・というシーンで、物語は終わります。
上巻・下巻って感じなのですね。
そういえば、今回、絶対に人が動かせるような重さではない巨岩が動いた・・・という謎も、まだ解かれていないですし。
そして、今度は、鳴らない鐘が鳴るとは!!
来月発売の巻で、今回の謎と合わせて、真の解決が見られるのがとても楽しみです。
あ、そうそう。
確かに、今回のお話は、完全解決はされていませんが。
でもでも、色々と驚きの展開があり、ミステリとして、とても面白かったです。
なんというか、冒頭で、第二夫人である境子が、自分の夫を殺し、子供たちと共謀してバラバラにするのですが。
そのシーンがあまりにも鮮烈だったので。
途中で「本当に境子が殺したのは、宗主・茂道だったのか?」という疑問が急浮上した時は、目から鱗で。
では、宗主は生きている?と思って、読み進めていくと。
またまた、ラストのラストで、それがひっくり返ってゾッとする。
いやいや、凄く心地よくダマされました。
今回は、一旦、怨霊の仕業・・・ということで落ち着いちゃいましたが。
『バチカン奇跡調査官』もそうですが、どう考えても、奇跡だったり、怨霊だったりの仕業にしか見えない不可能犯罪が、実は、人間の手によるもので。すべてはトリックである。科学で解決できる。・・・というのが、この作者さんの作品傾向ですし。
きっと、きっと、血祭りの館のトリックもあるハズなのですよね!
それが、物凄く楽しみです。
とりあえず、今の私には、全然推理できません! 分からない~~っ。
次巻が発売されるまで、あとひと月。
真剣に推理してみたいです!!!
そしてそして。
この物語の舞台となる十津川には行ったことないのですが、そのすぐ近くの熊野には、私も数年前に行ったことがありまして。
どういう風景の所か、イメージも湧きやすいのですよね。
そして、物語に出てくる、決して動かない千曳の岩も、どことなく、和歌山にあるゴトビキ岩(見に行きましたよ~)を連想させたりで。
あの静謐な空気、祈りの場、神様の使いである鴉、色々と思い出します。
まさに信仰の対象としての地。
その空気感を知っているだけに、もしかしたら、かの地では、人間の関与できない、神憑り的な何かがあったり、はたまた、霊的なものがあったりしても、不思議ではないな・・・と思えるだけに。
余計に怖く感じたお話でもありました。
とにかく、続きが楽しみです。