今日は、先週末見た、映画『インシテミル 7日間のデスゲーム』の感想をば。
この映画は、推理作家・米澤穂信さん原作の『インシテミル』の映画化。
私は、米澤さんの作品が大好きで、デビュー作の『古典部シリーズ』はもちろん、スイーツな『小市民シリーズ』、そして、もちろん、この『インシテミル』も読んでいます。
小説版の感想はコチラ↓↓↓
「2010年10月19日『インシテミル』
原作を知ってはいますが、でもでも、このテのクローズドサークル物は映像で見た方が面白いかなぁと思い、映画を楽しみに見てきました。
で。
映画を見て、ビックリしたのは。
小説とは、物語のディテイルも、犯人も全然違うと言うこと!
これは、ビックリです。
なので、原作と映画は、「別作品」と捉えるべきかなぁ。
つまり、小説の『インシテミル』の実写化ではなくて。
小説『インシテミル』を原案に作った映画が、この『インシテミル 7日間のデスゲーム』だと思った方が良いかと。
そういう意味では、原作を読んでいても、映画は楽しめるし。
また、逆に、映画を見た人でも、原作小説を楽しめると思います。
・・・・・・・・・まあ、原作ファンから言わせていただくと・・・映画版は、色々と突っ込み所も多いのですが(^^;
という訳で。
映画のあらすじは・・・というと。
人文科学の被験者になるバイト。
時給11万2千円。
こんな好条件に惹かれて、10人の男女が、実験場所である、暗鬼館に集まってきます。
彼らは、地下に作られた、暗鬼館という施設で、外界から隔離された状態で1週間ほ過ごします。
その様子は24時間常に、モニターで監視されており。その代わり、時給は、11万2千円の24時間分。
それが1週間。
バイトを終えたときには、有り得ないほどの大金を手に出来るわけです。
集まった男女は・・・というと。
車を買う目的でやってきたフリーター・結城理久彦(藤原竜也)
元OL・須和名祥子(綾瀬はるか)
ウェブデザイナー・関水美夜子(石原さとみ)
元会社社長・安東吉也(北大路欣也)
研修医・大迫雄大(阿部力)
大迫の恋人で熱リスト・橘若菜(平山あや)
世田谷に住む専業主婦・渕佐和子(片平なぎさ)
リストラに喘ぐ中年・西野宗広(石井正則)
大学生・真木雪人(大野拓朗)
経歴不明者・岩井荘助(武田真治)
彼らは、外界から隔離された地下施設で、様々なルールの下、1週間を過ごすことになります。
がしかし。
その「ルール」の中に。
人を殺しても良い。
寧ろ、殺した人には、ボーナスが支給される・・・・・ということが分かり、騒然となります。
とはいえ。
1週間、何事もなく過ごすだけでも、超大金が貰える訳で。
何も、わざわざ、人殺しなんかする必要ない、仲良くやろう・・・・・・と全員が協定を結びます。
がしかし。
全員の心の中に、疑惑が芽生えたのは否めません。
「アイツは、新聞で見た虐待園長に似ている」
「アイツは、新聞で見た殺人犯に似ている」
皆の心の中に、不審や疑惑が頭をもたげる中。
翌日に、西野が死体で発見されます。
たった10人の閉ざされた空間。
つまり、犯人は、この中にいる・・・・・・・・!
被験者達の、疑心暗鬼は、第二・第三の殺人を呼び起こすのでした。
果たして、この中で、生き残れるのは、何人なのか・・・・・・・?
で。
感想は・・・・というと。
小説ファンなら、少し、ガッカリするかな~という感じではあります(^^;
なんというか。
小説版は、ミステリ好きな作者の、ドイルやクリスティ、ヴァン・ダイン等に対する、古典ミステリのオマージュが、随所随所に散りばめてあります。
作者は、大好きな古典ミステリに「淫してみる」意志で、この作品を書かれた・・・とのことで。
原作では、古典ミステリのお約束がふんだんに取り入れられてて。
「推理物」として確立している訳ですが。
この映画だと、そういう、古典ミステリへのオマージュは、完全に取り払われた形でして。
そういう意味では、この作品で、作者が書きたかったことは、映像として再現されていないのでは?と思ってしまいました。
推理物というよりは、単なる、サイコサスペンスな感じかな?
そもそも、原作には、暗鬼館で過ごす被験者達に、かなり、細かいルールが与えられるのです。
それらのルールは、古典推理小説に乗っ取ったもので、そのルールの所為で、彼らは、行動を制限され、それ故に、殺人も起こっていきます。
でも、映画版では、細かいルールは無し。
簡単で大まかなルールのみ。
なので、ルール違反をする人も多かったし、そもそも、ルール違反をすることに、あまり躊躇いがない。
それゆえに、暗鬼館での生活が、原作に比べてルーズになっている気がします。
とはいえ、原作を読みながらでも、
「あれ? どうだったっけ?」
と思う複雑なルールですし。
映画で、そこまで、複雑なルールを描けなかったのは、分かりますが。
なので、ホント、原作を読まれている方は、映画は「別作品」と捉えた方が、絶対に良いです。
原作は、ちゃんと考えれば、推理出来るのですが、映画は、本当にただのサスペンスって感じかなぁ。
緻密な理論に基づいた、推理は必要ないです。っていうか出来ないと思う。
そして。
外界から隔離された、閉ざされた世界で起こる連続殺人。
そもそも、この設定自体が、漫画めいているというか、推理小説ならではの世界観な訳ですよ。
なので、こういう、漫画のような設定は、その小説世界の閉ざされた空間でのみ、有効というか、リアリティがあるというか。
限定された世界だけで、物語が展開される方が、面白いと思うのですよね。
でも、映画版は、変に外の世界・・・外界と繋がっているのです。
つまり、被験者の一週間は、有料ネット配信で、世界中に居る会員の人達が見てて。
みんなが、閉ざされた空間で起こる連続殺人鑑賞を楽しんでいる・・・・・・という。
これは、映画のみの設定なのですが。
この設定は要らなかったのではないかと思います。
閉ざされた空間で起こる特異な出来事だけに、中途半端に外界と接触を持たせると・・・・なんというか、一気に、チープな感じになってしまうのですよね。
何の実験で、何が目的なのか、分からないからこそ感じる恐怖っていうのもあると思いますし。
なのでネット配信とかで、俗世間と繋いでしまったのは、安直というか安っぽすぎました。
勿論、行間から色々なことを感じられる小説と違って、視覚的に捕らえる映画なわけですから。
映画鑑賞者がハッキリ分かる理由付けが必要だったのかもしれない・・・・・とは思いますが。
わたし個人的には、全体的に、チープ過ぎる仕上がりを感じましたです。
あと、個人的にツッコミ所といえば。
全体的に、暗鬼館の設定が甘いのですよね。
原作では、とにかく、怖い施設なのですよ。
そもそも、殺人鬼が紛れ込んでいるというのに、各個室に鍵はない。
その上、スライド式のドアは、音も立てずに開閉できる・・・・・・。
つまり、部屋で寝ていたとしても、殺人犯は、音もなく、各個室に出入り出来るわけですよね。
だからこそ、皆、恐怖に怯え。
部屋で過ごさないといけない夜中、恐怖を感じ、一睡も出来ない。
そして、唯一、鍵がかかる空間が、各部屋のお風呂なのですが。
そのお風呂は、異様に暑い、サウナのような温度設定になっていて。
長期間籠もることは不可能。
つまり、誰にも、逃げ場はないわけなのですよね。
でも、映画では、ドアも音を立てて空いてたし。
お風呂も、普通のシャワールームだった(^^;
つか、個室のドアが、ガラガラガラ~って音を立てて開いた時には、目を疑ったよ(^^;
そして。
それぞれの登場人物の雰囲気が原作と違ってた~~。
つか、何故に、大迫が、あんなに嫌なヤツ&変態になってたのだ?
霊安室で恋人とHとか、変態過ぎるだろ大迫(^^;
原作では、単に、リーダーシップのある大学生だったのにね。
そして、綾瀬はるかさん演じる須和名も。
原作のように、有り得ないほどのお嬢様じゃなくて・・・ごく普通の女の子って感じでしたし。
わたし的には、怖いくらい世間慣れしていないお嬢様を見たかったなぁ。だって、その方が怖いと思うモン。
そして。
原作では若者だった安東が、映画ではおっちゃんになっていたのも、ピックリでした。
ラストの須和名さんに関しても、あまりにアッサリしすぎて、安直というかチープというか・・・・・・。
もちろん、原作とことごとく違うからこそ、映画を楽しめたのですが、ね(^^)b
う~ん。
本格推理物というよりは、完全に、サスペンス物って感じでしょうか。
売りでもある「心理戦」というのが弱かったのは残念ですが。
とはいえ。
原作を先に読んでいた私にとっては、原作と全然違うので、
「真相や、如何に!!??」
とドキドキしっぱなしだった訳ですが、ね。
もちろん、怖かったですし。
サスペンス・エンターテイメントとしては、充分に楽しみました。
あっ、そうそう。
暗鬼館に出てくる、ガードという名のお世話ロボット。
小説を読んだ限りではR2D2(byスターウォーズ)なイメージがあったのですが。
映画では、UFOキャッチャーのアームみたいな機械でしたね。
外観は、なんか、凄く怖かったです。
で。
映画を見終わった後、なんとなく、ゲーセンを覗いてUFOキャッチャーを見ると。
「あ。ガード」
と思ってしまったという(笑)
・・・・・・という感じで。
映画『インシテミル 7日間のデスゲーム』の感想でした~(*^^*)
映画だけ見られた方には、小説をお薦めします。
映画とは、展開も犯人も違いますし。
楽しめるかな~と(^^)b