今日は、一昨日鑑賞した、映画『蜜蜂と遠雷』の感想を。
恩田陸さんの小説の映画化。
私は、原作未読で鑑賞しました。
クラシック音楽やピアノが大好きなので、予告編を見た時から、とても楽しみにした作品です。
世界的に注目される、国際ピアノコンクールに挑む4人の天才ピアニストたちを描いた物語。
ある事情により長らくピアノから遠ざかっていた、かつての神童・栄伝亜夜は、自身の復活を賭けて。
出場者の殆どが音大生という中、既に就職、結婚し、1児の父でもあり、年齢制限ギリギリという条件の下、「生活者の音楽」を魅せようと、ラストチャンスに挑む高島明石。
亜夜の幼馴染で、海外でずっとピアノに励んできた、優勝候補のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
謎めいた天才少年・風間塵。
4人それぞれが、それぞれの想いや理想を掲げ、コンクールに臨みます。
■映画『蜜蜂と遠雷』予告編
コンクールの数日間を描いた物語です。
その数日間の中で、4人の天才ピアニストに焦点を絞り、彼らの裡なる想い、夢や理想、願いと共に、熱い演奏シーンが描かれます。
とにかく、演奏シーンは、鳥肌が立つほど圧巻!!
また、4人それぞれの裡に秘めたものが、「演奏」という形の違いで描かれているところも感動的です。
音楽が好きな人には、是非是非見て欲しいシーンでした。
映画全体を通して、「音」や「空気」を大切にして、丁寧に描いているなぁと感じました。
風の音、雨の音、雷の音、ステージを歩く足音・・・などなど、全ての「音」が、まるで、音楽が鳴っているかのように聞こえました。
また、コンクールのステージを控える舞台裏の空気、そして、ステージ上のライトの明るさ、熱さ。
映画を見ているだけなにの、自分もその場にいるかのような、呼吸をすることも躊躇ってしまいそうな、張り詰めた緊張感がとても心地良かったです。
私自身、ピアノではないですが、音楽や演劇をやっていた経験があるので、なんとなく、そのステージに上がる前、ステージ上の感覚が思い出されて、自分の想い出と重なったからなのかもしれません。
音と空気が凄く丁寧に描かれているところが、良かったです。
ただ、音楽や空気感にスポットを当て過ぎてしまったせいか、肝心の人物像に、迫り切れていなかった感は否めませんでした・・・。
それぞれ、色んな想いを抱える4人のピアニスト達。
その人物の背景が、「???」って感じだったのです。
これは、原作小説を読んでいなかったからかもしれませんが。。。
ヒロインの亜夜は、彼女にとって、ピアノの存在そのものとも言える母親が亡くなったことなんだろうなぁっていうのは分かりましたし。
また、年齢制限ギリギリでコンクールの世界に挑む明石も、彼の「生活者の音楽」を魅せようとする葛藤や努力も伺えたのですが。
亜夜の幼馴染で優勝候補のマサルは、結構、背景が見えてこずに謎でしたね。
そういえば、彼も、亜夜と同じような子供用の水筒を愛用してて。彼も幼いときは、亜夜のお母さんからピアノを習っていたとのことですし、もしかしたら、亜夜のお母さんが作ったものなのかなぁとは思ったのですが、そこにどういう意味があったのかな?とか。
いろいろ見えてこない背景が多かったです。
そして、さらに謎なのが、16歳の天才少年・塵。
著名な先生の推薦状付き。しかも、審査員たちが試される「ギフト」なる存在。
確かに、天才過ぎる感性を感じさせる独特な雰囲気を持った子でしたが、既に故人である、その先生との関係性等、よく分からなかったです。
が、塵を演じた俳優さんの演技には、圧倒されました。
音楽の女神に愛された神童を見事に体現されてて、素晴らしかったです。
また、斉藤由貴さん演じる、審査員の女性。
彼女も、かつてのピアニストだったようで、何か音楽に対して挫折や葛藤を経験してきたのだろなぁとは思ったのですが。彼女に対しても、もっと知りたかったです。
全体的に、人物の描き方を浅く感じたのですが・・・でも、音楽に挑む人間・・・音楽と共に生きる人間、もっと言えば、音楽を支配し支配される人間について描いているので、音楽がしっかり描かれていたらそれで良いのかなぁ~とも。
上手く言えないけど・・・人間の生に比べたら、ずっとずっと長く、永遠に生きているといっても過言ではない芸術。
その芸術の前では、人間は小さいものなのかな?と思うと、映画であまり人物背景が見えなかっても、まあ、いいのかな~とも思えてきたり。
しかし、その一方で、芸術も人間が創りだすもの! 人間あっての芸術なんだから、もっともっと、芸術に生きる人物を描き込んで欲しかったなぁとも思えたりで。
難しかったです。
彼らについて、もっともっと知りたくなったので、原作小説、上下巻を買いましたよ(*^^*)
映画を見てて、感動する一方で、芸術の世界は、本当の本当にごく一部の、音楽の女神に愛された天才にしか見えない景色があるんだろうなぁとも感じられて・・・凡人の音楽好きな私なんかは、少々、切ない気持ちになったりもしました。
でも、それも含めての芸術の魅力。魅惑。
やっぱり、音楽って凄い!! その表現者となる人たちは素晴らしい!!と感動させてくれる映画だったです。