ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

「鍛冶でっせ」に行った

2013年07月02日 | 木工
関西方面に納品に行き、「鍛冶でっせ」に行ってきました。

「鍛冶でっせ」は刃物の一大産地である兵庫県三木市で行われる刃物の物産市で、まだ二回目らしいです。
先日清水市で「削ろう会」(後述)というエンスーな催事があり、
行ってみたいなあとネットを見ているうちに、ちょうど兵庫に行く頃に「鍛冶でっせ」があることを知りました。
これはぜひのぞいてみたい!と思い、お客様にもわがままを言って日程を調整しました。


木工屋をやっている一つの喜びに、刃物で木を加工する楽しさがあります。
刃物をよく研ぎ、道具をちゃんと調整することで、木は小気味よい手ごたえや音がして切れていきます。
切れる刃物を使うことで作業は早く進み、出来上がる物は綺麗になります。
私は決して道具道楽の輩ではありませんが、刃物を使いたくて木工をやっているような側面もないではない。

そんなわけで兵庫に行くと三木に寄って、一つ二つと鋸やノミや鉋などの刃物を買って使っていました。


そんな三木の鍛冶屋さんたちが大勢集まるイベントなのです。
機会があるなら行かないわけにはいかない。





会場は道の駅三木にある三木メッセ。
いつもは閉まっていて、私は初めて入る建物です。

着くと、朝10時なのにごった返す人ごみ、熱い熱気!刃物がいっぱい!
のこぎり、ノミ、鉋、彫刻刀、などの手道具屋が多い。



携帯で一枚写真を撮って、あとは物色に没頭してしまいました。



刃物を作っている鍛冶屋さんがブースに立って熱心にお客さんと話をしています。
私も話を聞きたくてもなかなか順番が回ってこないくらいの感じ。
熱くいかに苦労し工夫して刃物を作って入るかをお話しています。

私も実際に普段使っている刃物を作って入る職人さんに会えてお話しできて感激。

若い人が跡を継いでいる鍛冶屋さんも見受けられてこれも嬉しい。
需要が減ってだんだん先細りではあろうけれど、まだまだ絶やしてはならない技術ですから。

お客さんもけっこう若くて熱心な人が多くて、これも驚き。
なかなか高いものも買っている様子が好ましい。



奥の実演コーナーで、鉋削り競技会のようなこともやっていました。

削ろう会」というイベントがあります。
どれだけ美しく薄いカンナ屑を出すことができるかを競う会です。
伝統的な鉋の技術を守り育てようという意気込みを感じる催事です。
この会場でやっているのと削ろう会との関係はわかりませんが、同じような内容と思われます。
いくつものチームがあって、みなさん鉋を持って木に向かっています。
二の腕の逞しい日に焼けた若者達が大切な自慢の道具を愛おしそうにいじりながら鉋かけをしている姿がまことに微笑ましい。
こんなに仕事と道具を愛している職人たちがいることが頼もしい。
この国もまだまだ大丈夫、と思ってしまう。おおげさ?

まあちょっと本音を言うと、
この競技会では素直な柾目の幅の狭い木(ヒノキ?)を使って鉋屑を出しています。
私の様な木工屋はもっと木目のひねくれた幅の広い広葉樹の板を削る必要があって、
求められるものはちょっと違うのかなと思います。






残念ながら、私もだいたいの物は揃えてしまったので、それほど買い込むものはありません。
若い頃にもっとお金があってこんな会に出会えていたらよかったのに。



で、買ったものは、




大ぶりの縦挽きの鋸。
近所の金物店では決して見つからなかったもの。
機械でも切れなかった幅広の板がこれで割れるかも。






裏刃用の仕上げ砥石。

片刃の刃物には切れ刃と裏刃の両面があります。
裏刃はぴかっと平らに研ぎあげ、切れ刃は日常研ぐ側です。
切れ刃は場合によっては丸くも研ぎますが、裏刃は真っ平らが基本です。
この裏刃の平面精度を保つための硬い砥石がこれ。






切出し。小刀。
今使っている小刀は刃が長く、研ぐのに時間と手間がかかります。
そこであえて刃の小さいものが欲しかったのです。


というように、普通の店では買えないようなもので前から欲しかった物を買うことができて大満足でした。






午後一時まで三木にいて、それから群馬に帰りました。
ちょっと強行軍。
日が暮れてからの峠越え。

車のライトに何か細かいものが照らされてました。



うりぼう。
まだ20cmくらいのかわいいやつが6~7頭。かわいい!
車が近づいても逃げず、草叢に入ったり出たりしている。
魚の群れみたいに兄弟で寄り添ってぶいぶいいいながらうろうろしています。

山に帰ってきたなーと思いました。