宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

食連星で精度が向上した大マゼラン雲までの距離

2013年03月24日 | 宇宙 space
南半球の空に見える大マゼラン雲。
この銀河は、天の川銀河のそばにある矮小銀河になります。

チリのコンセプシオン大学らの国際研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のラシーヤ天文台などで、この大マゼラン雲に属するめずらしい種類の連星を詳しく観測しました。






大マゼラン雲
十字のマークは
観測が行われた食連星の位置





その結果、大マゼラン雲までの距離を、誤差2%以下というこれまででもっとも高い精度で求めることに成功したんですねー
その数値は16万3000光年だそうです。

今回、研究チームが観測したのは、食連星というタイプの天体です。
食連星とは、地球から見て2つの星が互いの前を通過しあう軌道を持つので、隠し合って食が起こる連星のことです。






食連星のイメージ図




その際の明るさの変化から、星の大きさや質量などの情報が得られるんですねー
こうした情報と、連星系全体の明るさと色から、天体までの距離を正確に知ることができます。

従来は高温の星で、この手法が用いられてきました。
でも、得られる数値が十分に正確とは言えませんでした。

今回の研究では連星の両方が低温の赤色巨星という、ひじょうにめずらしいペアを8つ観測して、
これまでよりはるかに正確な距離が得られたんですねー

天の川銀河のすぐそばの天体である、大マゼラン雲までの距離を正確に知ること。

これは、他のもっと離れた銀河までの距離も精度よく測定したり、宇宙の膨張率(ハッブル定数)を決めたりするのに重要になります。

なので、この手法を向上させて、
今後数年間で大マゼラン雲までの距離の誤差を1%以下にすることは、
宇宙論や天体物理学のさまざまな分野に広く役立つ成果になるんですねー