“りゅうこつ座イータ星”は太陽質量の90倍と30倍の恒星からなる銀河系でも最大級の連星です。
この連星が太陽フレアの1万倍以上の高エネルギー粒子をまき散らしている様子が、世界で初めて観測されたんですねー
普通の星が、このような現象を起こすことは予期されないことのようですよ。
高エネルギーはどこから?
“りゅうこつ座イータ星”は、りゅうこつ座の方向約7500光年彼方に存在する連星で、太陽質量の90倍と30倍という2つの大質量星が互いの周りを公転しています。
恒星同士の連星としては天の川銀河の中で最も重いものの1つになる。
1840年代に大爆発を起こし、全天で2番目の明るさにまで増光したことがあり、連星の周囲には、このときの爆発で放出されたと思われる物質が鉄アレイのような形に広がっているんですねー
この“りゅうこつ座イータ星”を国際共同研究グループが観測。用いられたのは、NASAのX線天文衛星“NuSTAR”でした。
国際共同研究グループはNASAゴダード宇宙飛行センターと広島大学大学院によるグループ。
すると、X線の中でも特にエネルギーの高い“硬X線”がこの天体から放射されていることが分かります。
ゴダード宇宙飛行センターの研究グループでは、8年前にNASAのガンマ線天文衛星“フェルミ”の観測データを解析し、強力なガンマ線が“りゅうこつ座イータ星”付近から放射されていることを明らかにしていました。
ガンマ線が放射されるには光速近くまで加速された電子や陽子が必要になります。
でも、こうした超高エネルギー粒子はブラックホールや中性子星などで作られるのが普通で、“りゅうこつ座イータ星”のような普通の恒星に、これほど高いエネルギーまで粒子を加速できる激しい現象があるとは考えられていませんでした。
ただ、“フェルミ”はガンマ線の飛んでくる角度の分析精度があまり良くないんですねー
なので、観測されたガンマ線が“りゅうこつ座イータ星”出たものか、それとも“りゅうこつ座イータ星”の近くにガンマ線源となる未知の天体が隠れているのかがはっきりしていませんでした。
一方、“NuSTAR”は1万電子ボルト以上のエネルギーを持つ“硬X線”を集光できる初の天文衛星で、現在稼働している観測衛星では唯一、“硬X線”で高解像度の撮像が行えます。
このおかげで今回、“硬X線”源の位置を5秒角以内の精度で突き止め、“硬X線”が確かに“りゅうこつ座イータ星”から出ていることが明らかになります。
今回得られた硬X線のスペクトルは“フェルミ”で得られたガンマ線のスペクトルとスムーズにつながっていることから、“フェルミ”が観測したガンマ線も、“りゅうこつ座イータ星”が起源だと考えられます。
衝撃波が高エネルギーを作り出していた
“NuSTAR”は“硬X線”の明るさの変化を高い精度で測定することもできます。
研究グループでは、“りゅうこつ座イータ星”からの“硬X線”を2014年から4年間にわたって継続的に測光し、連星の2つの星が5.5年周期で最も近づくときに“硬X線”の明るさが数か月間にわたって急激に弱まることを発見。
このことは、“硬X線”の源である超高エネルギー粒子が2つの星の相互作用で生じている証拠になります。
質量の大きな星では、陽子や電子といった荷電粒子を高速で噴き出す“恒星風”という現象が起こっています。
太陽でみられる“太陽風”も恒星風の一種になる。
こうした大質量星が連星になっていると、2つの星から噴き出す恒星風が中間で激しく衝突し、衝撃波が常にできている状態になります。
衝撃波にはフェルミ加速と呼ばれる仕組みで粒子を加速する働きがあるので、連星から噴き出した恒星風の粒子が、この衝撃波によって加速されると考えることができます。
そう、このメカニズムが“りゅうこつ座イータ星”で実際に働いていて、加速された粒子が宇宙線となって宇宙空間に撒き散らされていることを今回の発見が明らかにしたんですねー
連星系が宇宙線をどれだけ作り出しているのか? 恒星風同士の相互作用でどのように高エネルギー粒子が加速されるのか?
今後、“りゅうこつ座イータ星”やこれに似た連星を“NuSTAR”で観測することで、このような謎を解く手がかりが得られるのかもしれませんね。
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2つの恒星風が連星を包み込む星雲
この連星が太陽フレアの1万倍以上の高エネルギー粒子をまき散らしている様子が、世界で初めて観測されたんですねー
普通の星が、このような現象を起こすことは予期されないことのようですよ。
高エネルギーはどこから?
“りゅうこつ座イータ星”は、りゅうこつ座の方向約7500光年彼方に存在する連星で、太陽質量の90倍と30倍という2つの大質量星が互いの周りを公転しています。
恒星同士の連星としては天の川銀河の中で最も重いものの1つになる。
1840年代に大爆発を起こし、全天で2番目の明るさにまで増光したことがあり、連星の周囲には、このときの爆発で放出されたと思われる物質が鉄アレイのような形に広がっているんですねー
この“りゅうこつ座イータ星”を国際共同研究グループが観測。用いられたのは、NASAのX線天文衛星“NuSTAR”でした。
国際共同研究グループはNASAゴダード宇宙飛行センターと広島大学大学院によるグループ。
すると、X線の中でも特にエネルギーの高い“硬X線”がこの天体から放射されていることが分かります。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“りゅうこつ座イータ星” |
ガンマ線が放射されるには光速近くまで加速された電子や陽子が必要になります。
でも、こうした超高エネルギー粒子はブラックホールや中性子星などで作られるのが普通で、“りゅうこつ座イータ星”のような普通の恒星に、これほど高いエネルギーまで粒子を加速できる激しい現象があるとは考えられていませんでした。
ただ、“フェルミ”はガンマ線の飛んでくる角度の分析精度があまり良くないんですねー
なので、観測されたガンマ線が“りゅうこつ座イータ星”出たものか、それとも“りゅうこつ座イータ星”の近くにガンマ線源となる未知の天体が隠れているのかがはっきりしていませんでした。
一方、“NuSTAR”は1万電子ボルト以上のエネルギーを持つ“硬X線”を集光できる初の天文衛星で、現在稼働している観測衛星では唯一、“硬X線”で高解像度の撮像が行えます。
このおかげで今回、“硬X線”源の位置を5秒角以内の精度で突き止め、“硬X線”が確かに“りゅうこつ座イータ星”から出ていることが明らかになります。
今回得られた硬X線のスペクトルは“フェルミ”で得られたガンマ線のスペクトルとスムーズにつながっていることから、“フェルミ”が観測したガンマ線も、“りゅうこつ座イータ星”が起源だと考えられます。
観測を行うX線天文衛星“NuSTAR”(イメージ図) |
衝撃波が高エネルギーを作り出していた
“NuSTAR”は“硬X線”の明るさの変化を高い精度で測定することもできます。
研究グループでは、“りゅうこつ座イータ星”からの“硬X線”を2014年から4年間にわたって継続的に測光し、連星の2つの星が5.5年周期で最も近づくときに“硬X線”の明るさが数か月間にわたって急激に弱まることを発見。
このことは、“硬X線”の源である超高エネルギー粒子が2つの星の相互作用で生じている証拠になります。
質量の大きな星では、陽子や電子といった荷電粒子を高速で噴き出す“恒星風”という現象が起こっています。
太陽でみられる“太陽風”も恒星風の一種になる。
こうした大質量星が連星になっていると、2つの星から噴き出す恒星風が中間で激しく衝突し、衝撃波が常にできている状態になります。
衝撃波にはフェルミ加速と呼ばれる仕組みで粒子を加速する働きがあるので、連星から噴き出した恒星風の粒子が、この衝撃波によって加速されると考えることができます。
そう、このメカニズムが“りゅうこつ座イータ星”で実際に働いていて、加速された粒子が宇宙線となって宇宙空間に撒き散らされていることを今回の発見が明らかにしたんですねー
連星系が宇宙線をどれだけ作り出しているのか? 恒星風同士の相互作用でどのように高エネルギー粒子が加速されるのか?
今後、“りゅうこつ座イータ星”やこれに似た連星を“NuSTAR”で観測することで、このような謎を解く手がかりが得られるのかもしれませんね。
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