2024年5月24日更新
“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ(Tenacity)”がケネディ宇宙センターに到着したそうです。“テナシティ”による“ドリーム・チェイサー”の初飛行が予定されているのは2024年後半。
7800ポンド(約3.5トン)の物資を搭載した“テナシティ”は、ケープカナベラル宇宙軍基地からヴァルカンロケットにより打ち上げられます。
“テナシティ”は、操縦性能の技術実証を行った後、国際宇宙ステーションのロボットアームを使って把持・結合。
約45日後に国際宇宙ステーションを離れて、ケネディ宇宙センターの打ち上げ着陸施設(旧シャトル着陸施設)へ帰還することになります。
NASAのケネディ宇宙センターに到着した“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ”。(Credit: NASA/Kim Shiflett) |
2024年5月11日更新
オハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設に持ち込まれていた“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ(Tenacity)”は、衝撃や振動、熱真空試験など、一連の評価を完了。現在は、2024年後半に予定されている初打ち上げに向け、2機の“ドリーム・チェイサー”をフロリダ州のケネディ宇宙センターに輸送する準備を進めています。
ちなみに、“ドリーム・チェイサー”の2号機“崇敬や恭順を意味するレヴァレンス(Reverence)”はコロラド州ルイビルのシエラ・スペース社の工場で製造されています。
ケネディ宇宙センターで“ドリーム・チェイサー”は、音響テスト、電磁干渉と互換性のテスト、熱保護システムの最終検査がを受けることになります。
その後、初テスト飛行となる“商業輸送サービス2”が予定されています
“ドリーム・チェイサー”を搭載するヴァルカンロケット初号機の打ち上げは成功しているので、もうスケジュールの延期はないはずですよ。
ニール・アームストロング試験施設にある熱真空試験室内に積み重ねられたドリーム・チェイサー初号機“テナシティ(Tenacity)”とカーゴモジュール“シューティング・スター(Shooting Star)”。(Credit: Sierra Space) |
2023年11月5日作成
小型スペースシャトル“ドリーム・チェイサー”が初試験打ち上げへ前進! 初号機“テナシティ”は組み立てを終え数週間の内に試験施設へ民間宇宙ステーションの開発などを手掛ける航空宇宙企業シエラ・スペース(Sierra Space)社が、スペースシャトルの1/3ほどの大きさの宇宙往還機“ドリーム・チェイサー(Dream Chaser)”の初テスト飛行に向けて準備を進めているようです。
初号機“テナシティ”の機体組み立ては完了。
今後、数週間の内にオハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設へ持ち込まれる段階にきているようです。
“ドリーム・チェイサー”の初号機の名前は、“粘り強さ”や“不屈”を意味するテナシティ(Tenacity)。
国際宇宙ステーションの脱出艇“HL-20”から始まり、国際宇宙ステーションへ向かう有人宇宙船へのチャレンジを経て、“商業輸送サービス2”の契約を獲得して補給船として復活した“ドリーム・チェイサー”にピッタリの名前ですね。
初号機の完成を祝うシエラ・スペース社の社員たち シエラ・スペース社は、長年の熱意、数えきれないほどの画期的なイノベーション、そして絶え間ない努力の結晶“ドリーム・チェイサー”を誇らしげに公開。初号機“テナシティ”は完成し、数週間以内にオハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設に環境テストのために出荷される。(Credit: Sierra Space) |
小型スペースシャトル“ドリーム・チェイサー”
シエラ・スペース社が開発を進めている有翼の宇宙往還機が“ドリーム・チェイサー”です。
“ドリーム・チェイサー”は、小さいながらも翼を持っていて、胴体そのものが揚力を生む“リフティング・ボディ”を持っています。
スペースシャトルのように宇宙から滑走路に着陸し、15回以上の再使用をこなす小型シャトルで、国際宇宙ステーションへの輸送ミッションや、大分空港での運用の検討も進められていました。
製造はロッキード・マーティンが担当し、社内にある特別開発チーム“スカンク・ワークス”が培ってきた技術が活用されるそうです。
全長は約9メートル、翼の長さは約7メートルで、スペースシャトルの1/3ほどという小ささ。
翼は空母艦載機のように折りたたむことができ、既存のロケットのフェアリングの中に収められて打ち上げられます。
有人宇宙船版の“ドリーム・チェイサー”はアトラスVロケットの先端にむき出しの状態で搭載される設計だった。
帰還時には翼を広げ、スペースシャトルが着陸していたケネディ宇宙センターのシャトル着陸施設(滑走路)に着陸することになります。民間企業による有人宇宙船の実用化
国際宇宙ステーションへの物資輸送を行うため開発が進められている“ドリーム・チェイサー”。
もともとはNASAの“民間企業による有人宇宙船の実用化を支援”計画の下で、開発が進められていた宇宙船のひとつでした。
カプセル型宇宙船になるスペースX社の“ドラゴン”やボーイング社の“CST-100”とは異なり、スペースシャトルに似たリフティング・ボディを持つ“ドリーム・チェイサー”。
ベースになったのは、かつてNASAのラングレー研究所が国際宇宙ステーションからの緊急帰還用として開発を進めていた、“HL-20”という宇宙船でした。
“ドリーム・チェイサー”の源流は、1960年代のソ連で開発されていた実験機“BOR”にまでさかのぼることができます。
1986年になり、“BOR”とNASAなどがかねてより研究していた胴体そのものが揚力を生む“リフティング・ボディ”機との融合が図られ、国際宇宙ステーションの脱出艇“HL-20”の開発を開始。
でも、1990年には資金難により開発は中止… 以来、“HL-20”の存在は長らく忘れ去られることになります。
2005年になり、スペースデヴ社というベンチャー企業が“HL-20”の研究成果や試験機などを受け継ぎ“ドリーム・チェイサー”としてよみがえり、2008年にはスペースデヴ社をシエラ・ネバダ社が買収。
現在はシエラ・ネバダ社から分離したシエラ・スペース社が、国際宇宙ステーションへ向かう補給船として開発を行っています。
このような経緯から分かるように、もともと“ドリーム・チェイサー”は有人宇宙船として開発されていて、シエラ・スペース社も当初は国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送用としてNASAに売り込んでいました。
地球低軌道まで7人の乗員を輸送でき、滑走路へ着陸できる上に、再使用も可能。
そして輸送能力の高さからも“ドリーム・チェイサー”は注目されていました。
有人宇宙船を貨物専用にした“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”
実際にNASAからの発注が行われるまでには、ラウンド形式でいくつかの審査が行われています。
その最終候補まで残った“ドリーム・チェイサー”ですが、最終的にNASAがこの計画で選んだのはボーイング社とスペースX社でした。
ここで、小型のスペースシャトルが宇宙へ行くチャンスは途切れてしまうことに…
でも、シエラ・ネバダ社は諦めていませんでした。
“ドリーム・チェイサー”を貨物専用にした“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”を発表するんですねー
この機体で、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”の契約獲得を狙い、2016年見事に勝ち取ることになります。
一方、開発はやや遅れていて、2013年に実施されたヘリコプターを使った滑空試験飛行では着陸に失敗。
2013年10月の試験飛行では、順調に滑空飛行していたが左側の車輪が出ず着陸には失敗。左側の翼を擦る形で着陸している。2017年11月に実施された滑空試験飛行に成功している。
2017年11月に行われた2度目の滑空試験飛行。“ドリーム・チェイサー”はエドワーズ空軍基地滑走路22Lへの着陸を成功させている。(Credit: SNC) |
現在開発が進んでいる無人の補給船“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”。
シャトル型の機体の後部にはカーゴ・モジュール“シューティング・スター(Shooting Star)”を持っていて、機体とカーゴ・モジュールを合わせると与圧物資を約5000キロ、非与圧物資を約500キロ、合計で約5500キロの物資を国際宇宙ステーションに運ぶことができます。
また、シャトル型の機体を活かして、約1750キロの物資を国際宇宙ステーションから地球に持ち帰ることもできます。
特に注目すべき点は、“ドリーム・チェイサー”は翼を使って大気圏内を滑空飛行し、滑走路に着陸することができること。
これにより、搭載物にかかる加速度は1.5Gと小さくなるので、壊れやすい物資なども安全に持ち帰ることができるんですねー
さらに、着陸後すぐに持ち帰った物資を取り出せるという特徴も持っています。
もちろん、国際宇宙ステーションからの物資回収は、スペースX社の“ドラゴン”補給船でも行えます。
でも、“ドラゴン”補給船はカプセル型なので加速度が大きく、また海に着水するため、“ドリーム・チェイサー”のこうした特徴は唯一無二のものになります。
なお、カーゴ・モジュールは使い捨てで、帰還時には国際宇宙ステーションで発生したゴミなどを搭載。
シャトルとの分離後には地球の大気圏に再突入し、ゴミと共に燃え尽きることになります。
初となる試験打ち上げに向けて
現在、“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ”は組み立てを完了し、数週間の内にオハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設へ持ち込まれる段階にきています。
NASAは、この試験場で1~3か月ほどの期間をかけて振動や音、厳しい熱、真空環境での耐久性などを試験する予定です。
“テナシティ”は、2023年12月15日に環境試験を開始。カーゴモジュール“Shooting Star”と積み重ねられた打ち上げ形態で振動テストが進められている。
一連の試験をクリアすれば、“ドリーム・チェイサー”はフロリダ州にあるケネディ宇宙センターに移送され、初となる試験打ち上げに備えることになります。そこで、気になるのは打ち上げの日程。
この打ち上げは、今のところ4月の実施が予定されているものの、スケジュールが予定通りに進むかどうかは分かりません。
もともと、“ドリーム・チェイサー”は2023年に初フライトが予定されていました。
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の新型ロケット“ヴァルカン”の2度目のミッションに搭載され、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げる予定でした。
この試験打ち上げは、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”契約下で行われるもの。“商業輸送サービス2”では、“ドリーム・チェイサー”を使い最低6回の補給ミッションを行うことが決まっている。
でも、ヴァルカンロケットも開発が遅れているんですねー初の打ち上げを12月に予定している段階です。
“ヴァルカン”は第2段の“セントールV”の試験中に水素が漏洩して爆発、これを受けて初打ち上げが延期されている。
なので、ここで何か問題が見つかれば、“ドリーム・チェイサー”の初飛行にも影響する可能性があります。これまで、ヴァルカンロケットの初打ち上げは延期を繰り返している状況なので、“ドリーム・チェイサー”の初打ち上げもいつになるか不安になってきます。
有人宇宙船版の“ドリーム・チェイサー”は、アトラスVロケットに搭載される設計でした。
ヴァルカンロケットが間に合わないときには、実績のあるアトラスVロケットに乗っけて、さっさと打ち上げてしまえばいいのに!
っと思ってしまいますが、そういう訳にはいかないのでしょうね。
諦めていない地球低軌道への有人飛行
これらの関門を無地に突破できれば、次の目標は国際宇宙ステーションへのドッキングになります。
シエラ・スペース社は、将来的に“ドリーム・チェイサー”による地球低軌道への有人飛行も可能にしたいと考えています。
そこで、期待されるのが、ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジン社との共同プロジェクト。
こちらは、国際宇宙ステーションの後継になることが期待されている商用宇宙ステーション“オービタル・リーフ(Orbital Reef)”に向かう、有人の“ドリーム・チェイサー・ミッション”です。
シエラ・スペース社では有人機版“ドリーム・チェイサー”の開発も継続しているので、補給機版の実績や、今後の需要の変化などによって、宇宙飛行士を乗せて飛ぶ可能性もありそうです。
現状、NASAが国際宇宙ステーションへ荷物や人員を輸送できる宇宙船は、スペースX社のドラゴン宇宙船のみ。
ボーイング社が開発中の有人宇宙船“スターライナー(CST-100 Starliner)”は、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を、2024年4月以降に延期… これにより運行開始時期も2024年夏から2025年初頭へと延期されています。
新型コロナのパンデミックもあり、その後の開発もまた遅延に見舞われたものの、シエラ・スペース社では“ドリーム・チェイサー”の2番目の試験打ち上げ用の機体を、2026年の完成を目標として準備に取り掛かっているようです。
国際宇宙ステーションの緊急脱出艇から有人宇宙船を経て、無人補給船となって宇宙へ飛び立つことになる“ドリーム・チェイサー”。
運用までには、初の試験打ち上げや大気圏再突入、国際宇宙ステーションとのドッキングなど、まだまだ試験や開発が続くことになります。
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