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モバライダー mobarider

観測史上最も遠い銀河は、約134億光年彼方にある“GN-z11”に確定したそうです。

2020年12月20日 | 銀河・銀河団
ケック望遠鏡の分光観測により、おおぐま座方向の銀河“GN-z11”の赤方偏移が正確に求められました。
これにより分かったのは、地球からおよそ134億光年の彼方に“GN-z11”があること。
“GN-z11”はビッグバンから4億年後という初期宇宙にあり、観測史上最も遠くに見つかった銀河のようです。

最も遠くにある銀河

宇宙で最初に生まれた銀河は、いつどのように生まれたのでしょうか?

この謎に対する答えを求めて、研究者たちは最も遠くにある銀河を探し続けてきました。

2016年にハッブル宇宙望遠鏡の観測データから発見された、おおぐま座の方向に位置する“GN-z11”も、そのような最遠銀河の候補の一つです。

“GN-z11”には遠方銀河(ライマンブレイク銀河)に特徴的なスペクトルが見られるので、おそらく約134億光年彼方の銀河だろうと推測されていました。
ライマンブレイク銀河は、広帯域フィルターを用いて高赤方偏移銀河に特有のライマンα輝線よりも短い波長における連続スペクトルのブレイクを捕まえるライマンブレイク法によって同定される高赤方偏移銀河のこと。

地球からの距離が約134億光年(赤方偏移11.09)とする、ハッブル宇宙望遠鏡の観測にもとづいた研究成果がイェール大学により発表されていましたが、これまで正確な距離は測定されていませんでした。
ハッブル宇宙望遠鏡が観測した約134億光年彼方の銀河“GN-z11”(中央右の挿入図)。(Credit: NASA, ESA, and P. Oesch (Yale University))
ハッブル宇宙望遠鏡が観測した約134億光年彼方の銀河“GN-z11”(中央右の挿入図)。(Credit: NASA, ESA, and P. Oesch (Yale University))

ビッグバンから4億年後に存在する急速に成長した若い銀河

遠くの宇宙に存在する天体までの距離は、赤方偏移をもとに算出されています。
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまう。この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになる。

そこで、北京大学カブリ天文天体物理研究所と東京大学の研究グループが用いたのは、ハワイのマウナケア山頂にあるケック天文台“ケックⅠ望遠鏡”でした。
“ケックⅠ望遠鏡”に搭載された近赤外線分光器“MOSFIRE”を使い、近赤外線の波長で“GN-z11”の分光観測を行ったんですねー

観測の結果、研究グループは炭素イオンと酸素イオンが放つ光を検出することに成功。
これをもとに赤方偏移の値を10.957と算出しています。

そして、研究グループが結論付けたのは、“GN-z11”が約134億光年彼方にある観測史上最遠の銀河であることでした。

今回、“GN-z11”から検出された炭素の強度と、炭素と酸素の強度比の関係は、一般的なモデルでは説明できないもので、現在の銀河には見られない特殊な物理状況を示唆していました。

研究グループによると、観測されている“GN-z11”の推定年齢は7000万年と若く、質量は太陽の10億倍と見られています。
このことから考えられるのは、“GN-z11”が急速に成長したということでした。

また、研究グループは“ケックⅠ望遠鏡”による“GN-z11”の観測中に、数分間の継続した明るいバーストをとらえたそうです。

分析の結果、研究グループが考えているのは、このバーストが“GN-z11”で発生したガンマ線バーストによって生成された可能性があること。
このことは、ビッグバンから4億年後という初期宇宙の銀河でも、ガンマ線バーストが発生し得ることを示唆しているのかもしれません。
上:ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3“WFC3”にフィルター(F160W)を装着して観測された“GN-z11”(矢印)。下:“GN-z11”の炭素の赤外線スペクトル。緑色の部分は“GN-z11”から放射された炭素の輝線で、波長は約1910Åで紫外線領域にあるが、赤方偏移によって波長が伸びて波長2.28μmの赤外線として観測されている。他には超2μmの酸素も観測された。(Credit: 東京大学)
上:ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3“WFC3”にフィルター(F160W)を装着して観測された“GN-z11”(矢印)。下:“GN-z11”の炭素の赤外線スペクトル。緑色の部分は“GN-z11”から放射された炭素の輝線で、波長は約1910Åで紫外線領域にあるが、赤方偏移によって波長が伸びて波長2.28μmの赤外線として観測されている。他には超2μmの酸素も観測された。(Credit: 東京大学)
138億年前のビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とヘリウム、そしてごく少量のリチウムしか存在していませんでした。
このため、宇宙で最初に誕生した“第一世代星(ファーストスター)”は、これらの元素から形成されたと考えられています。

水素やヘリウムしか含まない原始ガス雲は、光を出して冷えることがあまりありません。
なので、重力が圧力に打ち勝って収縮して星になるためには、ガス雲の質量が大きい必要があるんですねー

そう、初代星は太陽質量の100倍くらいの非常に重い星が多く、わずか1000万年程度で超新星爆発を起こしていたと考えられています。

リチウムより重いすべての元素(重元素)は、こうした初代星の内部で最初に合成され、超新星爆発でばらまかれることになります。

ばらまかれた残骸のガスから第二世代の星が作られ、その星が爆発して星間ガスに還る っという過程が繰り返されることで、宇宙の中で重元素が次第に増えていきす。
たとえば、太陽はビッグバンから何世代も後に生まれた恒星なので、木星14個分ほどの質量の重元素を含んでいる。

このため、初代星は初期宇宙の進化を理解する上で非常に重要な天体なんですが、確実に初代星だといえる天体は観測ではまだ見つかってないんですねー

今回の観測では炭素や酸素が検出されているので、“GN-z11”は宇宙最初の世代の銀河ではないことを示しているのかもしれませんね。


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