アメリカの宇宙企業ロケットラボ社が、打ち上げたロケットの第1段機体を回収する試験に成功しました。
回収された第1段機体を再使用できれば、打ち上げコストを下げることができます。
ただ、ロケットラボ社が目指しているのは、第1段機体の回収と再使用による打ち上げ頻度の向上なんですねー
これは、衛星の打ち上げ需要に対して、ロケットの製造が追いつかないということが理由でした。
今回の試験で第1段ロケットは太平洋上に着水するのですが、最終的なゴールはヘリコプターを用いた回収。
この成功により実現に一歩近づいたようです。
これまでに打ち上げられた“エレクトロン”は16機。
このうち15機が成功し、失敗は1号機のみで2号機以降は連続して打ち上げに成功しています。
これによりロケットラボ社は、小型・超小型の商業打ち上げ市場におけるリーダーとして確固たる地位を築いています。
でも、その一方で世界中で高まる小型・超小型衛星の打ち上げ需要に対して、ロケットの製造が追いつかないという課題を抱えることに…
さらに、アメリカを中心に複数の企業が近い性能のロケットの開発を進めていて、今後競争が激化することが予想されていました。
そこで、ロケットラボ社が2019年に発表したのは、“エレクトロン”の第1段機体を回収し再使用できるようにすることで、打ち上げ頻度を高める計画でした。
ロケットの回収と再使用というと、スペースX社のロケット“ファルコン9”がすでに実用化しています。
ただ、スペースX社の再使用は、打ち上げコストを低減するためのもの。
これに対してロケットラボ社は、あくまで打ち上げ頻度の向上が目的で、打ち上げコストの低減は副次的なものとされています。
“ファルコン9”はロケット・エンジンを噴射しながら高度を下げていき着陸するのに対して、“エレクトロン”では翼の形をしたパラシュート“パラフォイル”を使って降下し、ヘリコプターにより空中で捕まえる方法をとっています。
2019年12月と2020年1月に行った“エレクトロン”の打ち上げでは、第1段機体に誘導・航法システムやテレメトリー・システム、コンピュータ、そしてスラスターなど、回収に必要なハードウェアやシステムを搭載。
実際に打ち上げ後の第1段機体を大気圏に再突入させ、実証試験を行っています。
さらに、今年の4月には、ヘリコプターから“エレクトロン”の第1段機体を模した試験機を投下。
パラフォイルを展開し降下している試験機を、別のヘリコプターで捕まえるという試験を実施しています。
そして、今回は実際の打ち上げを利用し、想定している回収方法とほぼ同じ流れの試験を実施。
ただし、ヘリコプターでの回収は除かれていました。
この試験のミッション名は“Return to Sender(差出人に返送)”。
打ち上げに用いられた“エレクトロン 16号機”の第一段機体は、差出人の元に届くのでしょうか?
2020年11月20日12時20分(日本時間)、“エレクトロン 16号機”はニュージーランドのマヒア半島にあるロケットラボ社所有の発射場から離昇。
順調に飛行し、第1段と第2段の分離が行われたのは離昇から約2分半後、高度約80キロの地点でした。
その後、第1段機体は大気圏再突入に適した姿勢にするため、スラスターを噴射し機体を180度反転。
大気圏に再突入すると機体を安定させつつ、降下速度を落とすためのドローグ・シュートを展開しています。
高度1キロに差しかかると、メインのパラシュートを展開し発射場から数百キロ離れた太平洋上に着水。
船で回収された機体はロケットラボ社の施設へ運ばれ、今後検査やデータの分析などが予定されています。
ロケットラボ社では着水時の速度は秒速10メートルほどで、ロケットが海水で濡れる以外は大きなダメージが加わることはないとしています。
なので、着水した機体も海水の洗浄やメンテナンスを行い、問題が無ければ再使用するそうです。
もちろん、最終的なゴールはヘリコプターによるロケットの回収なので、洗浄などをすることなく再使用することを目指しています。
これにより、ロケットラボ社が打ち上げた衛星の総数は95機になったそうです。
打ち上げられた衛星に含まれていたのは、スペース・デブリを除去する技術の試験機“ドラッグレーサー”2機、海上監視システムの構築を目指した衛星“BRO(Breizh Reconnaissance Orbiter)”2機、宇宙からのインターネットの実現を目指した衛星“スペースBEE”23機など。
さらに、オークランド大学が開発したニュージーランド初の学生衛星“APSS-1”が搭載されていました。
この衛星の目的は、地球の上層大気を監視し、電離層の乱れが地震と関連しているかどうかを調べること。
ロケットラボ社では打ち上げを無償で提供することで、このプロジェクトを援助しています。
変わった搭載物としては、ビデオゲーム“ハーフライフ”などに登場するガーデン・ノームの“ノーム・チョンプスキー”のフィギュアがあります。
これは“ハーフ・ライフ”などを開発したValveの共同設立者であるゲイブ・ニューウェル氏の発案によるもの。
打ち上げ中継の視聴者一人につき1ドルを小児病院に寄付するというキャンペーンのために製作され打ち上げられています。
ロケットラボ社によって製作されたチタン製のフィギュアは、将来の宇宙機の部品に使用することを目指した新しい3Dプリント技術の試験という役割も果たしています。
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回収された第1段機体を再使用できれば、打ち上げコストを下げることができます。
ただ、ロケットラボ社が目指しているのは、第1段機体の回収と再使用による打ち上げ頻度の向上なんですねー
これは、衛星の打ち上げ需要に対して、ロケットの製造が追いつかないということが理由でした。
今回の試験で第1段ロケットは太平洋上に着水するのですが、最終的なゴールはヘリコプターを用いた回収。
この成功により実現に一歩近づいたようです。
なぜロケットを再使用するのか
ロケットラボ社はアメリカの宇宙企業で、小型・超小型衛星を打ち上げることを目的とした超小型ロケット“エレクトロン”を開発・運用しています。これまでに打ち上げられた“エレクトロン”は16機。
このうち15機が成功し、失敗は1号機のみで2号機以降は連続して打ち上げに成功しています。
これによりロケットラボ社は、小型・超小型の商業打ち上げ市場におけるリーダーとして確固たる地位を築いています。
でも、その一方で世界中で高まる小型・超小型衛星の打ち上げ需要に対して、ロケットの製造が追いつかないという課題を抱えることに…
さらに、アメリカを中心に複数の企業が近い性能のロケットの開発を進めていて、今後競争が激化することが予想されていました。
そこで、ロケットラボ社が2019年に発表したのは、“エレクトロン”の第1段機体を回収し再使用できるようにすることで、打ち上げ頻度を高める計画でした。
ロケットの回収と再使用というと、スペースX社のロケット“ファルコン9”がすでに実用化しています。
ただ、スペースX社の再使用は、打ち上げコストを低減するためのもの。
これに対してロケットラボ社は、あくまで打ち上げ頻度の向上が目的で、打ち上げコストの低減は副次的なものとされています。
ロケットの回収方法
ロケットの回収方法でも、スペースX社とロケットラボ社では大きく異なっています。“ファルコン9”はロケット・エンジンを噴射しながら高度を下げていき着陸するのに対して、“エレクトロン”では翼の形をしたパラシュート“パラフォイル”を使って降下し、ヘリコプターにより空中で捕まえる方法をとっています。
ブルー・オリジン社が開発している“ニューシェパード”も、ブースターはロケット・エンジンを噴射しながら着陸する。
2019年12月と2020年1月に行った“エレクトロン”の打ち上げでは、第1段機体に誘導・航法システムやテレメトリー・システム、コンピュータ、そしてスラスターなど、回収に必要なハードウェアやシステムを搭載。
実際に打ち上げ後の第1段機体を大気圏に再突入させ、実証試験を行っています。
さらに、今年の4月には、ヘリコプターから“エレクトロン”の第1段機体を模した試験機を投下。
パラフォイルを展開し降下している試験機を、別のヘリコプターで捕まえるという試験を実施しています。
そして、今回は実際の打ち上げを利用し、想定している回収方法とほぼ同じ流れの試験を実施。
ただし、ヘリコプターでの回収は除かれていました。
この試験のミッション名は“Return to Sender(差出人に返送)”。
打ち上げに用いられた“エレクトロン 16号機”の第一段機体は、差出人の元に届くのでしょうか?
“エレクトロン 16号機”によるReturn to Senderミッションの打ち上げ。(Credit: Rocket Lab) |
順調に飛行し、第1段と第2段の分離が行われたのは離昇から約2分半後、高度約80キロの地点でした。
その後、第1段機体は大気圏再突入に適した姿勢にするため、スラスターを噴射し機体を180度反転。
大気圏に再突入すると機体を安定させつつ、降下速度を落とすためのドローグ・シュートを展開しています。
人員の降下や物資の空中投下などに用いられるパラシュートとは違い、減速や姿勢制御に用いられるものをドローグ・シュートと呼ぶ。
高度1キロに差しかかると、メインのパラシュートを展開し発射場から数百キロ離れた太平洋上に着水。
船で回収された機体はロケットラボ社の施設へ運ばれ、今後検査やデータの分析などが予定されています。
ロケットラボ社では着水時の速度は秒速10メートルほどで、ロケットが海水で濡れる以外は大きなダメージが加わることはないとしています。
なので、着水した機体も海水の洗浄やメンテナンスを行い、問題が無ければ再使用するそうです。
もちろん、最終的なゴールはヘリコプターによるロケットの回収なので、洗浄などをすることなく再使用することを目指しています。
打ち上げ後に太平洋に着水した“エレクトロン 16号機”の第1段機体。(Credit: Rocket Lab/Peter Beck) |
ノーム・チョンプスキーのフィギュアが宇宙へ
一方で第2段機体は、そのまま宇宙へ向けて飛行し、搭載していた約30基の衛星を所定の軌道に投入。これにより、ロケットラボ社が打ち上げた衛星の総数は95機になったそうです。
打ち上げられた衛星に含まれていたのは、スペース・デブリを除去する技術の試験機“ドラッグレーサー”2機、海上監視システムの構築を目指した衛星“BRO(Breizh Reconnaissance Orbiter)”2機、宇宙からのインターネットの実現を目指した衛星“スペースBEE”23機など。
さらに、オークランド大学が開発したニュージーランド初の学生衛星“APSS-1”が搭載されていました。
この衛星の目的は、地球の上層大気を監視し、電離層の乱れが地震と関連しているかどうかを調べること。
ロケットラボ社では打ち上げを無償で提供することで、このプロジェクトを援助しています。
変わった搭載物としては、ビデオゲーム“ハーフライフ”などに登場するガーデン・ノームの“ノーム・チョンプスキー”のフィギュアがあります。
これは“ハーフ・ライフ”などを開発したValveの共同設立者であるゲイブ・ニューウェル氏の発案によるもの。
打ち上げ中継の視聴者一人につき1ドルを小児病院に寄付するというキャンペーンのために製作され打ち上げられています。
ロケットラボ社によって製作されたチタン製のフィギュアは、将来の宇宙機の部品に使用することを目指した新しい3Dプリント技術の試験という役割も果たしています。
衛星と共に打ち上げられた“ノーム・チョンプスキー”のフィギュア。小児病院への寄付以外に新しい3Dプリント技術の試験という役割も果たしている。(Credit: Rocket Lab) |
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