宇宙から地球を見ると、植物に広く覆われた陸地が緑色に見えます。
この緑色は、植物の光合成を支えるクロロフィル(Chlorophyll、葉緑素)と呼ばれる物質と関係があります。
植物の葉などに含まれているクロロフィルは、太陽光を吸収する役割を果たしています。
でも、緑色の光は吸収されにくく、葉から漏れ出た緑色光を私たちの目がとらえることで植物は緑色に見えています。
それでは、植物のように光合成を行う生物が繫栄している太陽系外惑星(系外惑星)も緑色に見えるのかというと、そうとは限らないようです。
今回の研究では、光合成生物が存在する系外惑星の色が、地球とは異なる可能性を示した成果を発表しています。
光合成をおこなう生物
私たちの身近な光合成生物というと植物ですよね。
でも、地球上で光合成を行っている生物は植物だけではないんですねー
例えば、紅色細菌と総称される紅色硫黄細菌(Purple sulfur bacteria)や紅色非硫黄細菌(Purple non-sulfur bacteria)です。
これらは、植物のクロロフィルと同様に太陽の光エネルギーを吸収するバクテリオクロロフィル(Bacteriochlorophyll)を持っていて、光合成をおこなう光合成細菌の一種として知られています。
ただ、可視光線の青色光や赤色光を吸収しやすい植物のクロロフィルに対して、バクテリオクロロフィルが吸収しやすいのは低エネルギーの赤色光や赤外線になります。
赤色矮星を公転する系外惑星に存在する生物
これら紅色細菌が、緑色をした植物や藻類などと競合していなかったらどうなっていたのでしょうか?
系外惑星は、太陽よりも小さく表面温度も低い赤色矮星(※1)の周囲でも数多く見つかっています。
これらの赤色矮星は、可視光線よりも赤外線を強く放つという特徴があります。
今回の研究では、様々な条件と雲の量を備えた地球に似た惑星のモデルを作成して分析を実施。
その結果、特に赤色矮星を公転する系外惑星では、可視光線の赤色光や赤外線を利用する紅色細菌のような生物が優勢になる可能性があり、強い色のバイオシグネチャー(※2)を生成すると結論付けています。
でも、研究チームでは紅色細菌に含まれる様々なカロテノイドを念頭に、系外惑星の表面は赤色・茶色・オレンジ色・黄色といった、幅広い色で着色される可能性があると指摘しています。
幅広い波長のバイオシグネチャーを探し
今回の結果は、単に系外惑星の見た目を予測するだけに留まりません。
地球の植物には、波長700ミリ前後の光をよく反射する性質があります。
この波長はレッドエッジ(Red edge)と呼ばれていて、地球観測衛星を使って農地や森林の状態を知る上で利用されています。
系外惑星の探査でも、植物の存在を示すバイオシグネチャーとして、レッドエッジを利用できる可能性が指摘されてきました。
一方、今回の研究で示されたのは、レッドエッジ以外の波長でもバイオシグネチャーを検出できる可能性があることです。
1990年にNASAの惑星探査機“ボイジャー1号(Voyager 1)”が撮影した点のような地球の姿は、“Pale Blue Dot(ペイル・ブルー・ドット:淡く青い点)”として知られています。
でも、今回の研究でシミュレートされた惑星について、コーネル大学は“Pale Purple Dot(ペイル・パープル・ドット)”と表現しています。
今後の系外惑星探査ではレッドエッジに限らず、より幅広い波長のバイオシグネチャーを探し求める観測が行われるようになるかもしれません。
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この緑色は、植物の光合成を支えるクロロフィル(Chlorophyll、葉緑素)と呼ばれる物質と関係があります。
植物の葉などに含まれているクロロフィルは、太陽光を吸収する役割を果たしています。
でも、緑色の光は吸収されにくく、葉から漏れ出た緑色光を私たちの目がとらえることで植物は緑色に見えています。
図1.NASAの宇宙天気観測衛星“DSCOVR(ディスカバー)”の光学観測装置“EPIC”で2024年5月5日に撮影された地球。(Credit: NASA EPIC Team) |
今回の研究では、光合成生物が存在する系外惑星の色が、地球とは異なる可能性を示した成果を発表しています。
この研究は、コーネル大学の博士研究員Ligia Fonseca Coelhoさんを筆頭とする研究チームが進めています。
本研究の成果は、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)に掲載されました。
本研究の成果は、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)に掲載されました。
光合成をおこなう生物
私たちの身近な光合成生物というと植物ですよね。
でも、地球上で光合成を行っている生物は植物だけではないんですねー
例えば、紅色細菌と総称される紅色硫黄細菌(Purple sulfur bacteria)や紅色非硫黄細菌(Purple non-sulfur bacteria)です。
これらは、植物のクロロフィルと同様に太陽の光エネルギーを吸収するバクテリオクロロフィル(Bacteriochlorophyll)を持っていて、光合成をおこなう光合成細菌の一種として知られています。
ただ、可視光線の青色光や赤色光を吸収しやすい植物のクロロフィルに対して、バクテリオクロロフィルが吸収しやすいのは低エネルギーの赤色光や赤外線になります。
赤色矮星を公転する系外惑星に存在する生物
これら紅色細菌が、緑色をした植物や藻類などと競合していなかったらどうなっていたのでしょうか?
系外惑星は、太陽よりも小さく表面温度も低い赤色矮星(※1)の周囲でも数多く見つかっています。
これらの赤色矮星は、可視光線よりも赤外線を強く放つという特徴があります。
※1.表面温度がおよそ摂氏3500度以下の恒星を赤色矮星(M型矮星)と呼ぶ。実は宇宙に存在する恒星の8割近くは赤色矮星で、太陽系の近傍にある恒星の多くも赤色矮星。太陽よりも小さく、表面温度も低いことから、太陽系の場合よりも恒星に近い位置にハビタブルゾーンがある。
地球の植物は太陽光の下で進化してきましたが、赤色矮星が空に輝く系外惑星の環境は、赤外線を利用する生物にとって有利に働くかもしれません。図2.培養した細菌のサンプルを手にするLigia Fonseca Coelhoさん。(Credit: Ryan Young/Cornell University) |
その結果、特に赤色矮星を公転する系外惑星では、可視光線の赤色光や赤外線を利用する紅色細菌のような生物が優勢になる可能性があり、強い色のバイオシグネチャー(※2)を生成すると結論付けています。
※2.惑星を外部から観測したときに、生命が存在することの証拠と考えられる指標となるデータを示す。惑星大気中に酸素、オゾン、メタンなどの存在を示す証拠が一般的である。
もちろん、地球の紅色細菌と全く同じ生物が系外惑星にも存在するとは限りません。でも、研究チームでは紅色細菌に含まれる様々なカロテノイドを念頭に、系外惑星の表面は赤色・茶色・オレンジ色・黄色といった、幅広い色で着色される可能性があると指摘しています。
幅広い波長のバイオシグネチャーを探し
今回の結果は、単に系外惑星の見た目を予測するだけに留まりません。
地球の植物には、波長700ミリ前後の光をよく反射する性質があります。
この波長はレッドエッジ(Red edge)と呼ばれていて、地球観測衛星を使って農地や森林の状態を知る上で利用されています。
系外惑星の探査でも、植物の存在を示すバイオシグネチャーとして、レッドエッジを利用できる可能性が指摘されてきました。
一方、今回の研究で示されたのは、レッドエッジ以外の波長でもバイオシグネチャーを検出できる可能性があることです。
1990年にNASAの惑星探査機“ボイジャー1号(Voyager 1)”が撮影した点のような地球の姿は、“Pale Blue Dot(ペイル・ブルー・ドット:淡く青い点)”として知られています。
でも、今回の研究でシミュレートされた惑星について、コーネル大学は“Pale Purple Dot(ペイル・パープル・ドット)”と表現しています。
今後の系外惑星探査ではレッドエッジに限らず、より幅広い波長のバイオシグネチャーを探し求める観測が行われるようになるかもしれません。
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