これまでの銀河形成シミュレーションでは、超新星爆発を組み込むと計算コストが極端に増大してしまい、“富岳”のような最新のスーパーコンピュータを用いても、銀河内での超新星爆発の影響を直接的に計算することは困難でした。
そこで今回の研究では、これまでのシミュレーションに替り深層学習を用いて、超新星爆発の広がりを予測する手法を新たに開発。
新たに開発された新技術によって、計算の効率やエネルギー消費の面で大きな改善を実現しています。
この成果は東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻 平島敬也大学院生、同・藤井通子准教授、同・理学系研究科 物理学専攻 森脇可奈助教、東北大学大学院 理学研究科 天文学専攻 平居悠 日本学術振興会特別研究員‐CPD(国際競争力強化研究員)、神戸大学大学院 理学研究科 惑星学専攻 斎藤貴之準教授、同・牧野淳一郎教授、モルフォらの共同研究チームによるもの。
詳細は英国王立天文学会が刊行する天文学術誌“Monthly Notices of the Royal Astronomical Society”に掲載されました。
銀河の形成や進化過程の解明
超新星爆発が分子雲中で発生すると、大量のエネルギーでガスを押しのけてしまいます。
これにより、新しい星の形成が阻まれるのと同時に、一部のガスを加速させ乱流を駆動することで新しい星の形成を促進すると考えられています。
そのため、超新星爆発の影響を正確に理解することが、銀河の形成・進化過程を解明する上で不可欠になっています。
銀河は多数の星、ガス、ダスト(チリ)、およびダークマターなどで構成されています。
その結果、超新星爆発以外にも、重力や流体の動き、冷却など、様々なプロセスによって銀河の進化が駆動されます。
これらの相互作用を単純な方程式だけを使って説明することは困難なので、これまで数値シミュレーションを使って研究が進められてきました。
そうしたシミュレーションでは、銀河全体の約10万光年という巨大なスケールから、数光年単位の細かなスケールまでを対象に計算が行われています。
ただ、天の川銀河のような大型銀河の全体をシミュレーションする際に、超新星爆発の詳細な影響を再現することは、スーパーコンピュータ“富岳”を用いても、計算量や効率性の観点から非常に難しい課題になっていました。
深層学習を用いた3次元数値シミュレーション
今回の研究では、深層学習を用いた動画生成技術を活用。
これにより、3次元数値シミュレーションの結果を、高速に再現する新型モデルを開発しています。
特に高速に再現できたのは、分子雲内で起こった超新星爆発に伴うシェル構造が膨張し密度が変化する様子でした。
また、“3D‐MIM”を使用すると、超新星爆発の影響を直接受ける可能性のある領域の大きさを、事前に予測することが可能になります。
その結果、計算上の遅延を引き起こす可能性のある特定のエリアを事前に特定し、そこに特化し最適化されたアルゴリズムで計算を行うことで、計算効率を大幅に向上させることが期待できます。
“3D‐MIM”は、大規模な分子雲内で超新星爆発を発生させたシミュレーションを教示データとして大量に学習済みです。
この教示データの作成に用いられたのは、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ“アテルイII”。
モデルの学習には東大スーパーコンピュータ“Wisteria/BDEC-01 Aquarius”が用いられたほか、モデルの推論の最適化は“富岳”で実施され、“富岳”の推論高速化にはモルフォ製の深層学習推論エンジン“Soft Neuro”が用いられています。
今回の研究で開発された新しい深層学習モデルは、今後銀河形成シミュレーション・コード“ASURA-FDPS”に組み込まれる予定です。
また、“富岳”上では深層学習モデルの最適化作業も進められています。
なお、今回の新たなアプローチにより計算が効率化されると、円盤の直径がおよそ10万光年にも及ぶ天の川銀河のような大型銀河に属する1つ1つの星の動きまでもを、詳細に再現するシミュレーションが可能になるそうです。
今回の研究では、深層学習の推論速度の向上が実現されました。
さらに、“富岳”を用いた実験では、今回開発された新技術によって、計算の効率やエネルギー消費の面で大きな改善が実現されています。
今後、スーパーコンピュータ“富岳”や深層学習などの先進技術を天文学研究に応用していく中で、学術・産業の連携の強化と技術の発展が期待されます。
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そこで今回の研究では、これまでのシミュレーションに替り深層学習を用いて、超新星爆発の広がりを予測する手法を新たに開発。
新たに開発された新技術によって、計算の効率やエネルギー消費の面で大きな改善を実現しています。
この成果は東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻 平島敬也大学院生、同・藤井通子准教授、同・理学系研究科 物理学専攻 森脇可奈助教、東北大学大学院 理学研究科 天文学専攻 平居悠 日本学術振興会特別研究員‐CPD(国際競争力強化研究員)、神戸大学大学院 理学研究科 惑星学専攻 斎藤貴之準教授、同・牧野淳一郎教授、モルフォらの共同研究チームによるもの。
詳細は英国王立天文学会が刊行する天文学術誌“Monthly Notices of the Royal Astronomical Society”に掲載されました。
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図1.AIが超新星爆発を生成するイメージ。(Credit: Butusova Elena, Gorodenkoff/Shutterstock.com、平島敬也(出所:東大Webサイト)) |
銀河の形成や進化過程の解明
超新星爆発が分子雲中で発生すると、大量のエネルギーでガスを押しのけてしまいます。
これにより、新しい星の形成が阻まれるのと同時に、一部のガスを加速させ乱流を駆動することで新しい星の形成を促進すると考えられています。
そのため、超新星爆発の影響を正確に理解することが、銀河の形成・進化過程を解明する上で不可欠になっています。
銀河は多数の星、ガス、ダスト(チリ)、およびダークマターなどで構成されています。
その結果、超新星爆発以外にも、重力や流体の動き、冷却など、様々なプロセスによって銀河の進化が駆動されます。
これらの相互作用を単純な方程式だけを使って説明することは困難なので、これまで数値シミュレーションを使って研究が進められてきました。
そうしたシミュレーションでは、銀河全体の約10万光年という巨大なスケールから、数光年単位の細かなスケールまでを対象に計算が行われています。
ただ、天の川銀河のような大型銀河の全体をシミュレーションする際に、超新星爆発の詳細な影響を再現することは、スーパーコンピュータ“富岳”を用いても、計算量や効率性の観点から非常に難しい課題になっていました。
深層学習を用いた3次元数値シミュレーション
今回の研究では、深層学習を用いた動画生成技術を活用。
これにより、3次元数値シミュレーションの結果を、高速に再現する新型モデルを開発しています。
特に高速に再現できたのは、分子雲内で起こった超新星爆発に伴うシェル構造が膨張し密度が変化する様子でした。
また、“3D‐MIM”を使用すると、超新星爆発の影響を直接受ける可能性のある領域の大きさを、事前に予測することが可能になります。
その結果、計算上の遅延を引き起こす可能性のある特定のエリアを事前に特定し、そこに特化し最適化されたアルゴリズムで計算を行うことで、計算効率を大幅に向上させることが期待できます。
“3D‐MIM”は、大規模な分子雲内で超新星爆発を発生させたシミュレーションを教示データとして大量に学習済みです。
この教示データの作成に用いられたのは、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ“アテルイII”。
モデルの学習には東大スーパーコンピュータ“Wisteria/BDEC-01 Aquarius”が用いられたほか、モデルの推論の最適化は“富岳”で実施され、“富岳”の推論高速化にはモルフォ製の深層学習推論エンジン“Soft Neuro”が用いられています。
今回の研究で開発された新しい深層学習モデルは、今後銀河形成シミュレーション・コード“ASURA-FDPS”に組み込まれる予定です。
また、“富岳”上では深層学習モデルの最適化作業も進められています。
なお、今回の新たなアプローチにより計算が効率化されると、円盤の直径がおよそ10万光年にも及ぶ天の川銀河のような大型銀河に属する1つ1つの星の動きまでもを、詳細に再現するシミュレーションが可能になるそうです。
今回の研究では、深層学習の推論速度の向上が実現されました。
さらに、“富岳”を用いた実験では、今回開発された新技術によって、計算の効率やエネルギー消費の面で大きな改善が実現されています。
今後、スーパーコンピュータ“富岳”や深層学習などの先進技術を天文学研究に応用していく中で、学術・産業の連携の強化と技術の発展が期待されます。
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