日本とオランダが共同開発した電波受信器“DESHIMA”が南米チリにあるアステ望遠鏡に搭載されました。
この装置は、非常に広い周波数帯域の電波を一度に受信しながら分光を行うことを可能にするもの。
銀河の距離測定など多様な電波観測を実現することが期待されています。
赤方偏移による距離の測定
銀河の距離を元に作られる宇宙の3次元地図は、宇宙の成り立ちや銀河の進化を探る重要な手掛かりになります。
その際、電磁波の波長の伸びである“赤方偏移”を調べることが、銀河までの距離を測定する方法の一つになるんですねー
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまいます。
この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになります。
元の周波数とのズレは遠くの天体ほど大きくなるので、ズレた量が分かれば距離が計算できるというわけです。
ただ、1つの分子・原子からの特定の電磁波を観測しただけでは、元の周波数が何であったかが分からないので、ズレの量を決めることはできません。
なので、“赤方偏移”の測定には複数の分子や原子からの電磁波をとらえる必要があります。
さらに重要なのが、幅広い周波数帯域の電波を観測すること。
でも、これまでの受信機は一度に観測できる周波数帯域が狭いので、少しずつ周波数を変えながら観測を繰り返す必要があり、完了までに長い時間が必要でした。
宇宙の3次元地図作成に向けて
今回、最先端の超電導技術を駆使して開発されたのは受信機“DESHIMA(Deep Spectroscopic Hight-redshift Mapper)”。
開発は、東京大学や国立天文台など日本の研究チーム、オランダのデルフト工科大学とオランダ宇宙研究所の共同で進められ、南米チリのアタカマ高地ある国立天文台アステ望遠鏡に搭載されました。
“DESHIMA”は、電波を波長ごとに分ける“フィルターバンク”と、電波を超高感度で受信する“MKID(Microwave Kinetic Inductance Detectors)”という2つの技術を組み合わせた世界初の観測装置。一度に幅広い周波数帯の電波を分光観測することが出来ます。
2017年10月から行われた“DASHIMA”の試験観測では、地球から約2.9億光年彼方に位置するくじら座の相互作用銀河“VV 114”がターゲットにされ、周波数339GHzに一酸化炭素分子が放つ電波が検出されます。
この銀河は過去の観測で“赤方偏移”が測定されていました。
今回、同じ周波数に電波が検出されたことで、“DASHIMA”の技術が実際に天体までの距離測定に使えることが実証されることになります。
さらに、オリオン座大星雲の観測も行われ、一酸化炭素(CO)、ホルミルイオン(HCO+)、シアン化水素(HCN)からの電波を一度に検出することに成功。
空域をスキャンすることで、大きく広がっている星雲内の分子分布も同時に描き出すことができ、“DASHIMA”の広帯域分光能力が実証されます。
今後、開発チームが検討しているのは、感度の向上や周波数帯の拡大に加え、現在の1画素から16画素の電波分光撮像カメラに拡張すること。
これが実現すれば、宇宙の3次元地図をより効率的に作成できるんだとか。
宇宙初期の銀河で星がどのように作られていたのか? 銀河がどのように成長してきたのか? っといった謎を解明する上で大きな情報をもたらしてくれそうですよ。
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宇宙の3次元地図を作ってみると、一般相対性理論の正しさが検証できた
この装置は、非常に広い周波数帯域の電波を一度に受信しながら分光を行うことを可能にするもの。
銀河の距離測定など多様な電波観測を実現することが期待されています。
赤方偏移による距離の測定
銀河の距離を元に作られる宇宙の3次元地図は、宇宙の成り立ちや銀河の進化を探る重要な手掛かりになります。
その際、電磁波の波長の伸びである“赤方偏移”を調べることが、銀河までの距離を測定する方法の一つになるんですねー
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまいます。
この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになります。
元の周波数とのズレは遠くの天体ほど大きくなるので、ズレた量が分かれば距離が計算できるというわけです。
ただ、1つの分子・原子からの特定の電磁波を観測しただけでは、元の周波数が何であったかが分からないので、ズレの量を決めることはできません。
なので、“赤方偏移”の測定には複数の分子や原子からの電磁波をとらえる必要があります。
さらに重要なのが、幅広い周波数帯域の電波を観測すること。
でも、これまでの受信機は一度に観測できる周波数帯域が狭いので、少しずつ周波数を変えながら観測を繰り返す必要があり、完了までに長い時間が必要でした。
宇宙の3次元地図作成に向けて
今回、最先端の超電導技術を駆使して開発されたのは受信機“DESHIMA(Deep Spectroscopic Hight-redshift Mapper)”。
開発は、東京大学や国立天文台など日本の研究チーム、オランダのデルフト工科大学とオランダ宇宙研究所の共同で進められ、南米チリのアタカマ高地ある国立天文台アステ望遠鏡に搭載されました。
アステ望遠鏡(アタカマサブミリ波望遠鏡実験)。 南米チリ北部、アタカマ砂漠の標高4860メートルの高地パンパ・ラ・ボラに設置された直径10メートルのサブミリ波望遠鏡。 |
アステ望遠鏡に搭載された“DASHIMA”が入った円筒形の真空冷凍容器と開発チーム。 名称は江戸時代にオランダと日本の交流の窓口であった長崎県の出島にもちなんでいる。 |
この銀河は過去の観測で“赤方偏移”が測定されていました。
今回、同じ周波数に電波が検出されたことで、“DASHIMA”の技術が実際に天体までの距離測定に使えることが実証されることになります。
活動銀河“VV 114”のスペクトル。一酸化炭素が出す電波は元々345GHz。 でも宇宙膨張による赤方偏移により観測される周波数は339GHzにズレているので、 そのズレから銀河までの距離を求めることが出来る。 |
空域をスキャンすることで、大きく広がっている星雲内の分子分布も同時に描き出すことができ、“DASHIMA”の広帯域分光能力が実証されます。
オリオン座大星雲周辺の一酸化炭素(CO)、シアン化水素(HCN)、ホルミルイオン(HCO+)の分布。 可視光線で見えるオリオン座大星雲は中央下部にある。3つの分子がいずれも強く電波を放出。 特に一酸化炭素が星雲から南北に大きく広がっていることが分かる。 |
これが実現すれば、宇宙の3次元地図をより効率的に作成できるんだとか。
宇宙初期の銀河で星がどのように作られていたのか? 銀河がどのように成長してきたのか? っといった謎を解明する上で大きな情報をもたらしてくれそうですよ。
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