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モバライダー mobarider

ディープラーニングを用いた銀河の形態分類“すばる銀河動物園プロジェクト”

2020年08月13日 | 銀河・銀河団
すばる望遠鏡を用いて得られた観測データには、56万個という膨大な数の銀河の姿が含まれています。
“すばる銀河動物園プロジェクト”では、これら銀河の形を判別するためディープラーニング技術が用いられました。
その結果、特に渦巻き銀河の形を97.5%という非常に高い精度で自動分類することに成功。
今後は市民天文学プロジェクトの成果を組み合わせることで、衝突銀河などのより多様な銀河の形態分類も進めるようです。
宇宙に存在する多様な形態の銀河が人工知能によって分類される(イメージ図)。動物画像の分類など、様々な場面で応用されているディープラーニング技術を銀河の形態分類に用いることで、“渦巻銀河”だけでなく“棒渦巻銀河”や“衝突銀河”など様々な形に分類できるようになると期待されている。(Credit: 国立天文台/HSC-SSP)
宇宙に存在する多様な形態の銀河が人工知能によって分類される(イメージ図)。動物画像の分類など、様々な場面で応用されているディープラーニング技術を銀河の形態分類に用いることで、“渦巻銀河”だけでなく“棒渦巻銀河”や“衝突銀河”など様々な形に分類できるようになると期待されている。(Credit: 国立天文台/HSC-SSP)


宇宙には多様な形の銀河が存在している

銀河には、渦を巻いた形のものから滑らかな楕円の形のものまで、様々な形が存在することをアメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが発見しました。

現在、知られている多様な形の銀河は、どうやって生まれてどのように進化してきたのか?
それは、銀河天文学において今もなお最大の謎の一つになっています。

今回、国立天文台を中心とする研究チームが立ち上げたのは、“すばる銀河動物園”というプロジェクトでした。
これは、すばる望遠鏡“HSC”を使って得られた膨大な観測データに、人工知能の一つであるディープラーニング技術を適用するというものです。
“HSC(Hyper Suprime-Cam:ハイパー・シュプリーム・カム)”は、すばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ。満月9個分の広さの天域を一度に撮影でき、独自に開発した116個のCCD素子により計8億7000万画素を持つ。まさに巨大な超広視野デジタルカメラ。
観測データは、“HSC”を用いた300枚にも及ぶ大規模探査“すばる戦略枠プログラム”によって得られたもの。

今回は銀河の形態を、“S字型の渦巻銀河”とその回転方向が反対の“Z字型の渦巻銀河”、そしてそれ以外の“渦巻模様のない銀河”の3種類に分類。
この自動分類では、S字型とZ字型の分布を調べれば、宇宙における渦巻銀河の分布が分かることになります。
すばる望遠鏡“HSC”が撮影した約56万個の銀河画像から、自動分類された25億年以上彼方にある“S字型の渦巻銀河”と“Z字型の渦巻銀河”。(Credit: 国立天文台/HSC-SSP)
すばる望遠鏡“HSC”が撮影した約56万個の銀河画像から、自動分類された25億年以上彼方にある“S字型の渦巻銀河”と“Z字型の渦巻銀河”。(Credit: 国立天文台/HSC-SSP)
“すばる銀河動物園プロジェクト”の最初の成果として、97.5%という非常に高い精度で、銀河の形を自動的に分類することに成功。
渦を巻いた形に識別された銀河はおよそ8万個に上り、その多くは25億光年以上離れた宇宙に存在していることが分かっています。


ディープラーニングによる銀河の分類

まず“HSC”の高精細画像が今回のポイントになっています。

これまで、遠方にある銀河の渦巻き模様を調査する画像データとしては、“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”がありました。

ただ、口径2.5メートルの望遠鏡で撮影された画像の解像度は低く、判別が難しい状況…
それに対して“HSC”の解像度は2倍、感度に至っては36倍もあったので、遠方の銀河であっても判別することが可能になりました。

ただ、“HSC”による高感度の観測データからは、56万個もの銀河が検出されます。
そう、これら一つ一つを人の目で見分けながら、すべての銀河の形を判別するのは大変な労力を必要とするんですねー
この問題を解決したのがディープラーニング技術というわけです。

人の目で形を見分けた銀河から、ある程度の数の訓練データを用意すれば、銀河をもっと様々な形に分類することも可能。
さらに、国立天文台の市民天文学プロジェクト“GALAXY CRUISE”で市民天文学者が銀河を分類した成果を、ディープラーニング技術と組み合わせることで、より形が複雑な衝突銀河を大量に見分けられる可能性もあるそうです。

現在、計画されているのは、すばる望遠鏡の新しい観測装置“超広視野多天体分光装置(PFS)”を用いた、銀河までの距離を測定する大規模探査。

2022年に稼働予定の“超広視野多天体分光装置”により、銀河までの距離が分かれば、その銀河が何億年前の宇宙に存在するのかが分かります。

今後はそれらと合わせて、銀河の形態が時間とともにどのように変化してきたのかを調べるそうです。
人工知能で銀河を分類する。(Credit: 国立天文台/HSC-SSP)


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