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衝突中の銀河の中心で見つかったのは、合体する直前のブラックホールのペアだった

2018年12月01日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
銀河同士が衝突、合体すると中心に存在する超大質量ブラックホールも合体して、さらに大きいブラックホールへ成長します。

今回、X線と近赤外線による観測から見つかったのは、衝突中の銀河の中心にある非常に接近した超大質量ブラックホールのペア。
合体する直前の状態がとらえられていて、数千万年以内に衝突、合体するそうですよ。


銀河が合体すると中心にあるブラックホールも合体する

銀河の中心には、太陽の数百万倍から数億倍以上もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。

そして、銀河同士が衝突、合体する時には、それぞれのブラックホールも合体して、さらに大きいブラックホールへと成長していきます。

銀河の合体は10億年以上もかけてゆっくりと続くプロセスなので、観測を続けてブラックホール同士の合体を確認することは現実的な話ではありません。

でも、コンピュータシミュレーションを使ってみると、その最後の1000万~2000万年ほどの間にブラックホール同士の合体が急速に進むことが分かります。

ただ、こうしたブラックホールの衝突、合体の様子を可視光線で観測するのは難しいんですねー

それは、銀河の衝突に伴って銀河内の大量のガスやチリが巻き上げられ、ガスやチリが合体中の銀河の中心部周辺に厚いカーテンを作るため。
その奥にあるブラックホールが見えなってしまうからです。

その様子を調べるには、ガスやチリの雲を見通すことができる赤外線波長での観測が必要になります。

  ブラックホール連星から分かる、銀河の合体と進化
    


X線観測で成長中のブラックホールを探し出す

今回、エウレカ・サイエンティフィック社の研究チームが調べたのは、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック天文台を使った、近赤外線サーベイで得られた衝突銀河の中に見られるブラックホールのペアでした。

ガスがブラックホールへ落ち込むと高温になりX線を放射します。
そのX線の明るさから、ブラックホールがどれほど速く成長しているのかが分かります。

このことから研究チームは、NASAのX線天文衛星“スウィフト”によるX線観測データから、成長中のブラックホールが存在すると思われる銀河を探し出すことになります。

続いて研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブでX線データで見つかった銀河を確認。
ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブで見つからなかったものについては、ケック天文台での近赤外線観測で確認を行います。

こうして500個ほどの銀河を分析した結果、チリが豊富な衝突銀河の中心付近がX線で明るく見えるものは、そこに接近したブラックホールのペアが存在することが確かめられていきます。
○○○
衝突銀河と、その中心に位置する2つの銀河中心核の拡大画像。
オレンジ色はケック天文台撮影の近赤外線画像、
上左(へびつかい座の銀河“NGC 6240”はハッブル宇宙望遠鏡、
下のカラー画像はパンスターズ望遠鏡で撮影。
わずか3000光年まで接近しているブラックホールもあり、これは宇宙のスケールでは至近距離といえるもの。

これまでの衝突銀河の観測では、これほど合体の最終段階に近い例はなく、今回明らかになったブラックホール同士の距離の約10倍も離れている様子しかとらえられていませんでした。

現在、天の川銀河とお隣のアンドロメダ座大銀河は接近しつつあり、数十億年後には合体すると予測されています。

その際には、両銀河の中心にある超大質量ブラックホールも衝突、合体するはずです。

ブラックホール同士の衝突現象では重力波も生じるはずなので、数十億年後に私たちの子孫が重力波を観測しているかもしれませんね。


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