矮小銀河“NGC 4395”の中心に存在するブラックホールの質量が、わずか約1万太陽質量しかないことが分かってきました。
この発見は、中心ブラックホールと母銀河の関係を理解する上で、新たな情報をもたらしてくれるのかもしれません。
矮小銀河の中心部にも必ず中心ブラックホールは存在する?
りょうけん座の方向約1400万光年の距離に位置する矮小銀河“NGC 4395”。
この銀河の中心に位置するブラックホールの質量は、これまでの予想よりもずっと小さいようです。
今回、韓国・ソウル大学の研究チームが、このブラックホールの質量が約1万太陽質量しかないことを突き止めたんですねー
現在の天文学では、天の川銀河と同規模以上の全ての銀河の中心には、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ“超大質量ブラックホール”が存在すると考えられています。
さらに知られているのが、質量が大きな銀河ほど中心ブラックホールの質量も重いという比例関係があること。
でも、“NGC 4395”のような矮小銀河の中心部にも、必ず中心ブラックホールがあるのかどうかについてはまだ分かっていませんでした。
矮小銀河は数十億個以下の恒星からなる小さな銀河。
天の川銀河には2000億から4000億個の星が含まれている。
矮小銀河にも中心ブラックホールが存在するのでしょうか?
もし、存在するなら“超大質量ブラックホール”の場合と同じように、ブラックホール質量と銀河質量に相関関係があるのでしょうか?
この答えが得られれば、“超大質量ブラックホール”が初期宇宙でどうやって作られたかというメカニズムそのものを理解することに役立つかもしれないんですねー
降着円盤から放射される光を利用してブラックホールの質量を測定する
今回研究チームが“NGC 4395”のブラックホールの質量を求めるために用いたのは“反響マッピング”という手法。
この手法では、ブラックホールの周りにある“降着円盤”と呼ばれる構造から出る光を観測することで、ブラックホールの質量を決めることができます。
“降着円盤”とは、ブラックホールの重力で引き寄せられた物質が高速で回転している円盤で、極めて強い光を放射し、また光の強さが大きく変わるという性質があります。
降着円盤から放射された光が、円盤からずっと離れた場所にある希薄なガス雲“広輝線領域”を通り抜けるとき、ガス雲の原子が電離され特有の波長の輝線スペクトルを持つ光が放射されることになります。
降着円盤からの光の強さが変わると、“広輝線領域”から出る輝線の強さも少し遅れて同じように変動するので、この現象は光のエコーのようなものなんですねー
この遅れを想定して見積もることが出来るのが、ブラックホールから“広輝線領域”までの距離。
さらに、“広輝線領域”から出る輝線スペクトルの幅を測定すると、この領域のガス雲がブラックホールの重力場の下で公転する速度も知ることが出来ます。
こうして、“広輝線領域”までの距離と“広輝線領域”の公転速度が分かれば、あとはニュートンの万有引力の法則から、中心ブラックホールの質量を求めることが出来るというわけです。
軽い中心ブラックホールでも母銀河に影響を与えるのか
今回研究チームでは、アメリカ・MDM天文台などで観測したデータから、降着円盤の光が“広輝線領域”に達するまでの時間を83±14分と計算。
また、アメリカ・ハワイのジェミニ北望遠鏡に搭載されたGMOS分光計で高精度のスペクトル観測を実施して、“広輝線領域”の公転速度を秒速400キロと見積もります。
これらの結果から導かれたのが、“NGC 4395”の中心ブラックホールの質量が約1万太陽質量だということ。
この値は過去の推定値の約40分の1という軽いもので、反響マッピングで求められたブラックホールの質量としては、過去最少の値でもあるんですねー
今回の研究結果は、私たちが詳しく知っているブラックホールのグループに、新たなメンバーを加えるものになるのかもしれません。
ブラックホール・フィードバックと呼ばれる研究分野では、銀河の中心ブラックホールが、その重力の影響圏を超えて母銀河全体の性質にも影響を与えるという現象について研究が行われています。
今回の成果が、どの大きさのブラックホールから母銀河に影響を与えるのかを理解する上で役立つ可能性もあります。
銀河中心よりずっと遠い場所に位置する星々にとっては、自分が属している銀河に中心ブラックホールが存在することすら知ることはできません。
でも、実際にはどういうわけか、中心ブラックホールは非常に大きなスケールにわたって母銀河に影響を与えています。
小さなブラックホールを持つ矮小銀河にも、この作用が当てはまるのかどうかは分かっていません。
今回の観測結果によって、この関係に新たな情報がもたらされることになるといいですね。
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星の材料は超大質量ブラックホールによって銀河内を循環している
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さらに知られているのが、質量が大きな銀河ほど中心ブラックホールの質量も重いという比例関係があること。
でも、“NGC 4395”のような矮小銀河の中心部にも、必ず中心ブラックホールがあるのかどうかについてはまだ分かっていませんでした。
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天の川銀河には2000億から4000億個の星が含まれている。
矮小銀河にも中心ブラックホールが存在するのでしょうか?
もし、存在するなら“超大質量ブラックホール”の場合と同じように、ブラックホール質量と銀河質量に相関関係があるのでしょうか?
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降着円盤から放射される光を利用してブラックホールの質量を測定する
今回研究チームが“NGC 4395”のブラックホールの質量を求めるために用いたのは“反響マッピング”という手法。
この手法では、ブラックホールの周りにある“降着円盤”と呼ばれる構造から出る光を観測することで、ブラックホールの質量を決めることができます。
“降着円盤”とは、ブラックホールの重力で引き寄せられた物質が高速で回転している円盤で、極めて強い光を放射し、また光の強さが大きく変わるという性質があります。
降着円盤から放射された光が、円盤からずっと離れた場所にある希薄なガス雲“広輝線領域”を通り抜けるとき、ガス雲の原子が電離され特有の波長の輝線スペクトルを持つ光が放射されることになります。
降着円盤からの光の強さが変わると、“広輝線領域”から出る輝線の強さも少し遅れて同じように変動するので、この現象は光のエコーのようなものなんですねー
この遅れを想定して見積もることが出来るのが、ブラックホールから“広輝線領域”までの距離。
さらに、“広輝線領域”から出る輝線スペクトルの幅を測定すると、この領域のガス雲がブラックホールの重力場の下で公転する速度も知ることが出来ます。
こうして、“広輝線領域”までの距離と“広輝線領域”の公転速度が分かれば、あとはニュートンの万有引力の法則から、中心ブラックホールの質量を求めることが出来るというわけです。
“NGC 4395”の中心ブラックホールの質量を求めた観測のイメージ図。 降着円盤から地球に届く光の時間変動(青色のグラフ)と、“広輝線領域”のガス雲から放出される水素の輝線の時間変動(赤色のグラフ)の時間差を観測することで、ブラックホールから“広輝線領域”までの距離が分かる。 これと、輝線の線幅から得られた“広輝線領域”の公転速度を組み合わせて、ブラックホールの質量が決まる。 |
軽い中心ブラックホールでも母銀河に影響を与えるのか
今回研究チームでは、アメリカ・MDM天文台などで観測したデータから、降着円盤の光が“広輝線領域”に達するまでの時間を83±14分と計算。
また、アメリカ・ハワイのジェミニ北望遠鏡に搭載されたGMOS分光計で高精度のスペクトル観測を実施して、“広輝線領域”の公転速度を秒速400キロと見積もります。
これらの結果から導かれたのが、“NGC 4395”の中心ブラックホールの質量が約1万太陽質量だということ。
この値は過去の推定値の約40分の1という軽いもので、反響マッピングで求められたブラックホールの質量としては、過去最少の値でもあるんですねー
今回の研究結果は、私たちが詳しく知っているブラックホールのグループに、新たなメンバーを加えるものになるのかもしれません。
ブラックホール・フィードバックと呼ばれる研究分野では、銀河の中心ブラックホールが、その重力の影響圏を超えて母銀河全体の性質にも影響を与えるという現象について研究が行われています。
今回の成果が、どの大きさのブラックホールから母銀河に影響を与えるのかを理解する上で役立つ可能性もあります。
銀河中心よりずっと遠い場所に位置する星々にとっては、自分が属している銀河に中心ブラックホールが存在することすら知ることはできません。
でも、実際にはどういうわけか、中心ブラックホールは非常に大きなスケールにわたって母銀河に影響を与えています。
小さなブラックホールを持つ矮小銀河にも、この作用が当てはまるのかどうかは分かっていません。
今回の観測結果によって、この関係に新たな情報がもたらされることになるといいですね。
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