太陽系の外側には冥王星などの氷天体が無数にあり、それらが密集したエッジワース・カイパーベルトという領域を作っています。
ただ、エッジワース・カイパーベルトがどこまで広がっているのかは、よく分かっていません。
これまでの予測では、太陽から約75億キロを超えた距離で天体の密度が低くなり始めること。
その場合、空間内にあるチリの量も少なくなるはずでした。
今回の研究では、NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”の観測データを分析しています。
その結果、チリが減少すると予測された距離を超えても、ほとんど低下していないことを突き止めました。
この結果が示しているのは、エッジワース・カイパーベルトが予想よりも遠くまで広がっている可能性があること。
ひょっとすると、外側にもう一つエッジワース・カイパーベルトが存在するのかもしれません。
エッジワース・カイパーベルトはどこまで広がっているのか
海王星の外側には、冥王星などの氷天体が無数に存在していることが分かっています。
火星と木星の間にある小惑星帯のように天体が密集していることや、このような天体があることを予測したケネス・エッジワースとジェラルド・カイパーに因み、これらの天体が分布する領域は“エッジワース・カイパーベルト”、天体そのものは“エッジワース・カイパーベルト天体”と呼ばれています。(※1)
このため、エッジワース・カイパーベルトが、どこまで広がっているのかは現在も分かっていません。
科学研究の空白地帯となっているエッジワース・カイパーベルトに切り込んでいる一例として、NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”があります。
世界で初めて冥王星のフライバイ(※2)を行った“ニューホライズンズ”は、その後もいくつかの延長ミッションを行っています。
その一つは、“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器(VBSDC; Venetia Burney Student Dust Counter)”を使用した、太陽系外縁部のチリの量を測定するものです。
“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器”は天王星軌道よりも遠くのチリを数える初の観測機器で、これまで誰も知らなかった情報を得ることができます。
例えば、チリは天体同士の衝突で発生するので、チリの量を測定すれば間接的に天体の量を知ることができました。
太陽系の外側には無数の天体がひしめいている?
今回の研究では、“ニューホライズンズ”に搭載された“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器”の観測データを分析。
冥王星よりもずっと遠くの距離に当たる、太陽から約68億~83億キロの間で測定されたチリの量を調べています。
これまでの研究で予測されていたのは、エッジワース・カイパーベルト天体の数の減少によって、約75億キロの距離からチリの量が減少する境目があること。
もし、予測通りなら、今回の分析でチリの減少が観測されるはずでした。
ところが、今回の分析で分かったのは、測定された領域内でのチリの減少が、ほとんど観測されていないことでした。
チリの計測値に基づくと、エッジワース・カイパーベルトの領域が約90億キロを超えていることは確実。
実際の境目は約120億キロか、それ以上の領域に広がっていることが推定されます。
あるいは、エッジワース・カイパーベルトは1つのベルト構造ではなく、内側と外側に1つずつベルトが存在する可能性もあります。
これは、あくまでも仮設で、チリの量が多い理由は他にある可能性もあります。
例えば、太陽放射やその他の何らかの理由で、チリが約75億キロよりも外側へ効率的に運ばれているのかもしれません。
現在のモデルでは予測されていない、寿命の短い氷の粒が生成されている可能性もあります。
ただ研究チームでは、チリの減少が観測されない理由として、これらの仮設が成立する可能性は低いと考えています。
むしろ、すばる望遠鏡のようないくつかの望遠鏡は、これまでのエッジワース・カイパーベルトを大幅に超えた天体をいくつも見つけています。
今回の分析結果は、太陽系の外側には実際に無数の天体がひしめいている可能性が高いことを裏付ける成果となります。
現在、“ニューホライズンズ”は2回目の延長ミッションに入っていて、2040年代に太陽から約150億キロの距離を超えて観測を行うことが予定されています。
もし、この距離でもチリの量が測定できた場合、今回の研究で推定されたエッジワース・カイパーベルトの境目が本当にあるのかどうかを知ることができるはずです。
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ただ、エッジワース・カイパーベルトがどこまで広がっているのかは、よく分かっていません。
これまでの予測では、太陽から約75億キロを超えた距離で天体の密度が低くなり始めること。
その場合、空間内にあるチリの量も少なくなるはずでした。
今回の研究では、NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”の観測データを分析しています。
その結果、チリが減少すると予測された距離を超えても、ほとんど低下していないことを突き止めました。
この結果が示しているのは、エッジワース・カイパーベルトが予想よりも遠くまで広がっている可能性があること。
ひょっとすると、外側にもう一つエッジワース・カイパーベルトが存在するのかもしれません。
この研究は、コロラド大学ボルダー校のAlex Donerさんたちの研究チームが進めています。
図1.天体同士の衝突でチリが発生している様子。実際の太陽系外縁部は、これほど埃だらけではないが、それでも測定可能な量のチリが存在している。(Credit: Dan Durda, FIAAA) |
エッジワース・カイパーベルトはどこまで広がっているのか
海王星の外側には、冥王星などの氷天体が無数に存在していることが分かっています。
火星と木星の間にある小惑星帯のように天体が密集していることや、このような天体があることを予測したケネス・エッジワースとジェラルド・カイパーに因み、これらの天体が分布する領域は“エッジワース・カイパーベルト”、天体そのものは“エッジワース・カイパーベルト天体”と呼ばれています。(※1)
※1.ただし、エッジワースとカイパーが予測した天体の存在や分布は、現在知られているものとは大きく異なっていて、この名称には異論もある。最近では、正確にはイコール関係ではないものの、ほぼ同義語かつ中立的な語として“太陽系外縁天体”という呼称が使われる傾向にある。ここでは、天体が複数集合して構造を作っていることが分かりやすい表現であることや、原著論文でこの語が使用されていることに基づき、エッジワース・カイパーベルトと表記している。
太陽から遠く離れた場所にあるエッジワース・カイパーベルトを観測することは困難で、本格的に観測できるようになってからまだ30年程度しか経っていません。このため、エッジワース・カイパーベルトが、どこまで広がっているのかは現在も分かっていません。
図2.チリを観測する“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器”の設置前の写真。(Credit: NASA's New Horizons space mission) |
世界で初めて冥王星のフライバイ(※2)を行った“ニューホライズンズ”は、その後もいくつかの延長ミッションを行っています。
その一つは、“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器(VBSDC; Venetia Burney Student Dust Counter)”を使用した、太陽系外縁部のチリの量を測定するものです。
“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器”は天王星軌道よりも遠くのチリを数える初の観測機器で、これまで誰も知らなかった情報を得ることができます。
例えば、チリは天体同士の衝突で発生するので、チリの量を測定すれば間接的に天体の量を知ることができました。
※2.探査機が、惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、速度や方向を変える飛行方式。燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行える。積極的に軌道や速度を変更する場合をスイングバイ、観測に重点が置かれる場合をフライバイと言い、使い分けている。
太陽系の外側には無数の天体がひしめいている?
今回の研究では、“ニューホライズンズ”に搭載された“ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器”の観測データを分析。
冥王星よりもずっと遠くの距離に当たる、太陽から約68億~83億キロの間で測定されたチリの量を調べています。
これまでの研究で予測されていたのは、エッジワース・カイパーベルト天体の数の減少によって、約75億キロの距離からチリの量が減少する境目があること。
もし、予測通りなら、今回の分析でチリの減少が観測されるはずでした。
ところが、今回の分析で分かったのは、測定された領域内でのチリの減少が、ほとんど観測されていないことでした。
チリの計測値に基づくと、エッジワース・カイパーベルトの領域が約90億キロを超えていることは確実。
実際の境目は約120億キロか、それ以上の領域に広がっていることが推定されます。
あるいは、エッジワース・カイパーベルトは1つのベルト構造ではなく、内側と外側に1つずつベルトが存在する可能性もあります。
これは、あくまでも仮設で、チリの量が多い理由は他にある可能性もあります。
例えば、太陽放射やその他の何らかの理由で、チリが約75億キロよりも外側へ効率的に運ばれているのかもしれません。
現在のモデルでは予測されていない、寿命の短い氷の粒が生成されている可能性もあります。
ただ研究チームでは、チリの減少が観測されない理由として、これらの仮設が成立する可能性は低いと考えています。
むしろ、すばる望遠鏡のようないくつかの望遠鏡は、これまでのエッジワース・カイパーベルトを大幅に超えた天体をいくつも見つけています。
今回の分析結果は、太陽系の外側には実際に無数の天体がひしめいている可能性が高いことを裏付ける成果となります。
現在、“ニューホライズンズ”は2回目の延長ミッションに入っていて、2040年代に太陽から約150億キロの距離を超えて観測を行うことが予定されています。
もし、この距離でもチリの量が測定できた場合、今回の研究で推定されたエッジワース・カイパーベルトの境目が本当にあるのかどうかを知ることができるはずです。
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