白色矮星が引き起こす超新星爆発“Ia型超新星”から放射される電波が初めて観測されました。
さらに、明らかになったのは、この白色矮星の伴星がヘリウムに富む恒星だったこと。
このことは、白色矮星が爆発に至るまでの全体像を理解するうえで、大変重要な知見になるそうです。
赤色巨星に進化した恒星は、周囲の宇宙空間に外層からガスを放出して質量を失っていき、その後に残るコア(中心核)が白色矮星になると考えられています。
一般的な白色矮星は直径こそ地球と同程度ですが、質量は太陽の4分の3程度もあるとされる高密度な天体です。
誕生当初の白色矮星の表面温度は10万℃を上回ることもありますが、内部で核融合反応は起こらず余熱で輝くのみなので、太陽のように単独の恒星から進化した白色矮星は長い時間をかけて冷えていくことになります。
この白色矮星が大爆発を起こして星全体が吹き飛ぶ現象が“Ia型超新星”です。
白色矮星は、電子の縮退圧という力で自己重力を支えています。
でも、何らかの原因で星の質量が増えて太陽質量の約1.4倍(チャンドラセカール限界)を超えてしまうと、自己重力を支えられなくなって収縮し、暴走的な核融合反応が起こって爆発してしまうんですねー
Ia型超新星は爆発直前の質量がどれも同じで、爆発後のピーク光度もほぼ同じと考えられています。
なので、観測された見かけの明るさと比較することで、地球からの距離を測ることが可能になるわけです。
このような天体や現象は標準光源と呼ばれています。
超新星は明るい現象であり、発生した銀河が遠くても距離を測ることができるので、Ia型超新星は重要な標準光源の一つになっていて、宇宙の加速膨張が発見されるきっかけにもなったりしています。
ただ、Ia型超新星は、このような重要な役割を担う天体でありながら、その爆発に至るメカニズムは解明されていませんでした。
このことについては、今も議論があり決着していません。
ただ、単独で存在する白色矮星が爆発することはないんですねー
一方で連星をなす恒星の片方が寿命を迎えて白色矮星になると、白色矮星と恒星からなる連星が誕生します。
白色矮星と連星をなすもう一方の星(伴星)の外層部から流れ出した物質が、主星である白色矮星へと降り積もる“降着”という現象。
これが、爆発のきっかけとなる白色矮星の質量増加の原因として注目されています。
普通の星の多くは水素の外層を持っているので、降着する物質も多くの場合は水素が主成分になります。
でも、伴星がすでに水素の外層を失った“ヘリウム星”の場合には、降着する物質もヘリウムが主成分になるはずなんですねー
ただ、今のところ、ヘリウム星が引き起こしたIa型超新星の観測例はありません。
伴星から流れ出した物質は、すべてが白色矮星に降り積もるものではなく、両方の星を包む“星周物質”になると考えられています。
その星周物質の中で白色矮星が超新星爆発を起こすと、星周物質の内部を衝撃波が伝わり、強い電波が放射されると予想されています。
でも、これまでの観測では星周物質に包まれたIa型超新星の例はたくさん見つかっているものの、爆発で生じた電波放射が検出されたことはありませんでした。
“SN 2020eyj”は、爆発直後のスペクトルから一旦はIa型超新星に分類されています。
でも、その後の光度変化が普通のIa型とは異なっていたんですねー
このことから、研究チームでは爆発から131日後にも分光観測を実施。
その結果、明らかになったのは、この超新星がヘリウムを主成分とする星周物質に包まれていることでした。
さらに、研究チームは英・ジョドレルバンク天文台の電波望遠鏡アレイ“e-MERLIN”を用いて“SN 2020eyj”を観測し、この超新星からの電波検出に成功。
これが、Ia型超新星で電波が検出された初めて事例になっています。
今回検出された電波は、超新星爆発の衝撃波が星周物質と相互作用した証拠になります。
この電波の強さと、国立天文台科学研究部の守屋尭助教の計算した理論モデルを比較してみると、爆発前の白色矮星には1年あたり太陽質量の0.1%に相当する大量の物質が伴星から降り積もっていたことも判明しました。
これらの観測結果から研究チームは、“SN 2020eyj”をヘリウム星からの質量降着で引き起こされたIa型超新星だと結論付けています。
今回の成果は、謎に包まれているIa型超新星のメカニズムを解明するうえで、大きな手掛かりになる発見となるものです。
研究チームでは、今後も電波を放つIa型超新星を捜索し、白色矮星が爆発に至る道筋を解明することを目指していくそうです。
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さらに、明らかになったのは、この白色矮星の伴星がヘリウムに富む恒星だったこと。
このことは、白色矮星が爆発に至るまでの全体像を理解するうえで、大変重要な知見になるそうです。
白色矮星が引き起こす超新星爆発“Ia型超新星”
白色矮星は、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が、赤色巨星の段階を経て進化した姿だとされている天体です。赤色巨星に進化した恒星は、周囲の宇宙空間に外層からガスを放出して質量を失っていき、その後に残るコア(中心核)が白色矮星になると考えられています。
一般的な白色矮星は直径こそ地球と同程度ですが、質量は太陽の4分の3程度もあるとされる高密度な天体です。
誕生当初の白色矮星の表面温度は10万℃を上回ることもありますが、内部で核融合反応は起こらず余熱で輝くのみなので、太陽のように単独の恒星から進化した白色矮星は長い時間をかけて冷えていくことになります。
この白色矮星が大爆発を起こして星全体が吹き飛ぶ現象が“Ia型超新星”です。
白色矮星は、電子の縮退圧という力で自己重力を支えています。
でも、何らかの原因で星の質量が増えて太陽質量の約1.4倍(チャンドラセカール限界)を超えてしまうと、自己重力を支えられなくなって収縮し、暴走的な核融合反応が起こって爆発してしまうんですねー
Ia型超新星は爆発直前の質量がどれも同じで、爆発後のピーク光度もほぼ同じと考えられています。
なので、観測された見かけの明るさと比較することで、地球からの距離を測ることが可能になるわけです。
このような天体や現象は標準光源と呼ばれています。
超新星は明るい現象であり、発生した銀河が遠くても距離を測ることができるので、Ia型超新星は重要な標準光源の一つになっていて、宇宙の加速膨張が発見されるきっかけにもなったりしています。
ただ、Ia型超新星は、このような重要な役割を担う天体でありながら、その爆発に至るメカニズムは解明されていませんでした。
伴星からの物質が白色矮星に降り積もる“降着”という現象
でも、そもそも、なぜ白色矮星の質量が増えるのでしょうか?このことについては、今も議論があり決着していません。
ただ、単独で存在する白色矮星が爆発することはないんですねー
一方で連星をなす恒星の片方が寿命を迎えて白色矮星になると、白色矮星と恒星からなる連星が誕生します。
白色矮星と連星をなすもう一方の星(伴星)の外層部から流れ出した物質が、主星である白色矮星へと降り積もる“降着”という現象。
これが、爆発のきっかけとなる白色矮星の質量増加の原因として注目されています。
普通の星の多くは水素の外層を持っているので、降着する物質も多くの場合は水素が主成分になります。
でも、伴星がすでに水素の外層を失った“ヘリウム星”の場合には、降着する物質もヘリウムが主成分になるはずなんですねー
ただ、今のところ、ヘリウム星が引き起こしたIa型超新星の観測例はありません。
伴星から流れ出した物質は、すべてが白色矮星に降り積もるものではなく、両方の星を包む“星周物質”になると考えられています。
その星周物質の中で白色矮星が超新星爆発を起こすと、星周物質の内部を衝撃波が伝わり、強い電波が放射されると予想されています。
でも、これまでの観測では星周物質に包まれたIa型超新星の例はたくさん見つかっているものの、爆発で生じた電波放射が検出されたことはありませんでした。
ヘリウム星を伴星に持つ白色矮星のイメージ図。主にヘリウムからなる物質が伴星から流れ出し、白色矮星に降着する。(Credit: Adam Makarenko/W. M. Keck Observatory) |
ヘリウム星からの質量降着で引き起こされたIa型超新星
スウェーデン・ストックホルム大学のErik Koolさんたちの国際研究チームは、2020年3月23日に“おおぐま座”の方向で発見された超新星“SN 2020eyi”を様々な望遠鏡で追観測し、そのデータを分析しています。“SN 2020eyj”は、爆発直後のスペクトルから一旦はIa型超新星に分類されています。
でも、その後の光度変化が普通のIa型とは異なっていたんですねー
このことから、研究チームでは爆発から131日後にも分光観測を実施。
その結果、明らかになったのは、この超新星がヘリウムを主成分とする星周物質に包まれていることでした。
さらに、研究チームは英・ジョドレルバンク天文台の電波望遠鏡アレイ“e-MERLIN”を用いて“SN 2020eyj”を観測し、この超新星からの電波検出に成功。
これが、Ia型超新星で電波が検出された初めて事例になっています。
今回検出された電波は、超新星爆発の衝撃波が星周物質と相互作用した証拠になります。
この電波の強さと、国立天文台科学研究部の守屋尭助教の計算した理論モデルを比較してみると、爆発前の白色矮星には1年あたり太陽質量の0.1%に相当する大量の物質が伴星から降り積もっていたことも判明しました。
これらの観測結果から研究チームは、“SN 2020eyj”をヘリウム星からの質量降着で引き起こされたIa型超新星だと結論付けています。
今回の成果は、謎に包まれているIa型超新星のメカニズムを解明するうえで、大きな手掛かりになる発見となるものです。
研究チームでは、今後も電波を放つIa型超新星を捜索し、白色矮星が爆発に至る道筋を解明することを目指していくそうです。
Ia型超新星“SN 2020eyj”のアニメーション動画。ヘリウムを多く含む伴星から白色矮星に物質が降り積もり、質量が限界に達した白色矮星が超新星爆発を引き起こした。今回、その衝撃波と伴星から放出された星周物質との相互作用によって発生した電波が検出されたほか、顕著なヘリウムの輝線がスペクトルに見られた。(Credit: Adam Makarenko/W. M. Keck Observatory) |
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