銀河の中には、その中心で激しい活動を起こしているものがあり、このような天体を“活動銀河核”と呼びます。
その中心には、太陽質量の数百万~数十億倍もの超大質量ブラックホールが存在し、その周りではいろいろな現象が起きているんですねー
この活動銀河核の中心ブラックホール周辺で群を抜いているのがX線放射なので、この場所の物理環境を解き明かすにはX線の観測が不可欠になります。
そこで、今回の研究で用いているのは、“NGC 5548”という活動銀河核について、3つのX線天文衛星で得られた広帯域X線スペクトルでした。
先行研究では、複雑なモデルで説明していた“NGC 5548”のX線スペクトル変動ですが、物理的に相関し得ないパラメータ同士に相関が出るなどの問題がありました。
この相関は、必要以上のパラメータを含んだモデル設定による“パラメータ縮退”と考えた研究チームは、よりシンプルなモデル構築を試みています。
結果として、二重構造を持った塊状の物体が視線上を横切っているというシンプルなモデルで、一見複雑なX線スペクトル変動を説明することに成功したそうです。
その中心にある超大質量ブラックホールに物質が落ち込むことで生み出される莫大なエネルギーがX線に変換され、銀河全体よりも明るく輝いています。
これは天文学会で最も標準的な解析手法の一つですが、最適化に用いる物理モデルを決定するのは各研究者の自由になります。
なので、異なった物理モデルで同じ観測スペクトルを説明できてしまうことが多々あったりするんですねー
活動銀河核の中心ブラックホール周辺には降着円盤、コロナ、複数の吸収体が存在することが分かっています。
どのモデルも観測スペクトルの説明は可能なので、モデルの良し悪しを判断するには観測スペクトルとの適合以外の切り口が必要になります。
今回の研究で用いているのは、“NGC 5548”という活動銀河核について、3つのX線天文衛星で取得したアーカイブデータでした。
そこで、研究チームが考えたのは、この相関は必要以上のパラメータを含んだモデル設定による“パラメータ縮退”であること。
なので、よりシンプルなスペクトルモデルの構築を試みることになります。
(上図は研究チームが提案したモデルの概略図)
結果として、二重構造を持った塊状の物体(図1のW1とW2)が視線上を部分的に遮り、X線源を覆う割合が変化しているというシンプルなモデルで、不自然なパラメータ相関無しに、16年間のX線スペクトル変動を説明することに成功しています。
今回の研究では、スペクトル解析で閉じることなく得られた物理パラメータの正当性を吟味することで、超大質量ブラックホール近傍環境のより現実的な物理モデルを構築することに成功しました。
今後、予定されているのはXRISM衛星により超精密分光データが得られること。
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その中心には、太陽質量の数百万~数十億倍もの超大質量ブラックホールが存在し、その周りではいろいろな現象が起きているんですねー
この活動銀河核の中心ブラックホール周辺で群を抜いているのがX線放射なので、この場所の物理環境を解き明かすにはX線の観測が不可欠になります。
そこで、今回の研究で用いているのは、“NGC 5548”という活動銀河核について、3つのX線天文衛星で得られた広帯域X線スペクトルでした。
先行研究では、複雑なモデルで説明していた“NGC 5548”のX線スペクトル変動ですが、物理的に相関し得ないパラメータ同士に相関が出るなどの問題がありました。
この相関は、必要以上のパラメータを含んだモデル設定による“パラメータ縮退”と考えた研究チームは、よりシンプルなモデル構築を試みています。
結果として、二重構造を持った塊状の物体が視線上を横切っているというシンプルなモデルで、一見複雑なX線スペクトル変動を説明することに成功したそうです。
ブラックホール近傍の環境
銀河の中心で明るく光る領域を活動銀河核と呼びます。その中心にある超大質量ブラックホールに物質が落ち込むことで生み出される莫大なエネルギーがX線に変換され、銀河全体よりも明るく輝いています。
超大質量ブラックホールは、太陽の10万倍から10億倍もの質量を持つブラックホール。ほぼ全ての銀河の中心には、このような大きなブラックホールが存在すると考えられている。
ブラックホールの周りの環境を仮定しシミュレーションすることで、どのようなX線スペクトルが得られるかを理論的に予想できます。X線スペクトルとは、エネルギーごとのX線強度分布のこと。
このようにして得られたモデルスペクトルと観測で得られたスペクトルを比較し、両者が適合するようなモデルパラメータを最適化することで、X線を放射しているブラックホール近傍の環境を制限することが可能になります。これは天文学会で最も標準的な解析手法の一つですが、最適化に用いる物理モデルを決定するのは各研究者の自由になります。
なので、異なった物理モデルで同じ観測スペクトルを説明できてしまうことが多々あったりするんですねー
活動銀河核の中心ブラックホール周辺には降着円盤、コロナ、複数の吸収体が存在することが分かっています。
活動銀河核とは、銀河の中心部の非常に狭い領域から、銀河全体の明るさに匹敵するかそれを超えるほど莫大な電磁波を放射している天体現象。銀河中心に存在する超大質量ブラックホールに物質が落下することによって解放される重力エネルギーが、巨大な放射のエネルギー源とされている。超大質量ブラックホール近傍の高温ガスからはX線が、その周囲に形成されるガス円盤(降着円盤)からは紫外線や可視光線が、さらにそれらを取り巻くように分布する“ダストトーラス”からは赤外線が放射される。
ブラックホールに落下する物質は角運動量を持つため、降着円盤と呼ばれるへんぺいな円盤をブラックホールの周囲に作る。降着円盤内のガスの摩擦熱によって落下するガスは電離してプラズマ状態へ、この電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットが噴射し降着円盤の半径に応じて、可視光線、紫外線、X線と幅広い電磁波が観測される。
コロナは中心ブラックホール近傍に存在するX線放射源のこと。正体は高温プラズマであり、低エネルギーの紫外線・X線と相互作用することで高エネルギーのX線を放射すると考えられている。
一方で数多く提唱されているモデルは、コロナと吸収体の幾何構造や力学状態についてです。どのモデルも観測スペクトルの説明は可能なので、モデルの良し悪しを判断するには観測スペクトルとの適合以外の切り口が必要になります。
今回の研究で用いているのは、“NGC 5548”という活動銀河核について、3つのX線天文衛星で取得したアーカイブデータでした。
衛星の過去観測データはアーカイブ化され、世界中の研究者が自由に使用できるようになっている。自由に使用できるようになるタイミングは衛星ごとにそれぞれで、観測後数か月から数年程度は観測提案者が占有してデータを使用できることが多い。
ある先行研究が報告しているのは、2年間にわたるX線スペクトル変化に対し、二層の独立な部分吸収体を仮定したモデルを適用し、コロナから放射されたベキ型スペクトルの光子指数と片方の部分吸収体による部分吸収率との間に相関があるとことです。部分吸収体とは、X線を部分的に遮蔽する粒粒上の吸収体。吸収体がX線を遮蔽する割合を部分吸収率という。
光子指数とは、ベキ型のX線スペクトルの形を特徴づける定数。
でも、X線放射機構自体に由来する光子指数とコロナから遠く離れた吸収体が、放射源を隠す割合が相関するのは物理的に不自然なんですねー光子指数とは、ベキ型のX線スペクトルの形を特徴づける定数。
そこで、研究チームが考えたのは、この相関は必要以上のパラメータを含んだモデル設定による“パラメータ縮退”であること。
なので、よりシンプルなスペクトルモデルの構築を試みることになります。
(上図は研究チームが提案したモデルの概略図)
結果として、二重構造を持った塊状の物体(図1のW1とW2)が視線上を部分的に遮り、X線源を覆う割合が変化しているというシンプルなモデルで、不自然なパラメータ相関無しに、16年間のX線スペクトル変動を説明することに成功しています。
今回の研究では、スペクトル解析で閉じることなく得られた物理パラメータの正当性を吟味することで、超大質量ブラックホール近傍環境のより現実的な物理モデルを構築することに成功しました。
今後、予定されているのはXRISM衛星により超精密分光データが得られること。
XRISM衛星は、NASAやヨーロッパ宇宙機関の協力のもと開始されたJAXA宇宙科学研究所の7番目のX線天文衛星計画。
XRISM衛星で得られたデータに対して、今回の研究で提案したモデルを適用することで、現在私たちが抱いている物理描像の整合性を確認し、より現実に即した物理環境の理解につながると期待されています。こちらの記事もどうぞ
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