今回の研究では、急激に成長している巨大ブラックホールの近傍から放たれる電波を、VERA望遠鏡を用いた観測で詳細にとらえ、電波が周辺のガスから受ける影響を明らかにすることに成功しています。
このことは、巨大ブラックホールの成長・進化の仕組みを理解する上で、大きなヒントを与える成果になるようです。
また、そもそも、どのように作られるのでしょうか?
天文学者は長年この謎に取り組んできましたが、まだよく理解されていないんですねー
でも、狭輝線セイファート1型銀河が放射する電波は、クエーサーや電波銀河のような、より巨大なブラックホールが存在する銀河に比べて弱いので、中心部のガスの分布といった詳しい様子は、これまで観測されていませんでした。
巨大ブラックホール近傍のガスが放つ電波は、一般的に偏波(可視光線でいう偏光)と呼ばれる、特定の方向に偏った振動をする特徴があります。
この偏波がブラックホール周辺にある磁場を伴うガスを通過するとき、偏波面が回転する“ファラデー回転”という現象が起こるんですねー
この回転量は、ガスの密度や磁場の強さによって変化するので、巨大ブラックホール周辺のガスや磁場の分布を探るための重要な手掛かりになります。
ファラデー回転について、十分に成長した巨大ブラックホールが存在する銀河では、よく調べられていました。
でも、狭輝線セイファート1型銀河では、ほとんど観測例がないので、ブラックホール急成長の謎を解くための残されたカギになっていました。
それぞれの巨大ブラックホール近傍の詳しい様子を、国立天文台が運用するVLBI観測網のVERA望遠鏡を用いて観測しています。
さらに、狭輝線セイファート1型銀河からの偏波のファラデー回転を導き出すことに初めて成功しています。
また、狭輝線セイファート1型銀河中心のブラックホールの近傍にガスが豊富に存在することを、これまでで最も高い解像度による観測で裏付けています。
狭輝線セイファート1型銀河の質量は、十分に成長した超大質量ブラックホールに比べると、10分の1ないし100分の1程度しかありません。
でも、いずれはより大きなブラックホールに成長し、クエーサーのような極めて明るく輝く天体になる可能性を示唆していました。
国立天文台では口径20メートルの電波望遠鏡を水沢局(岩手県)、入来局(鹿児島県)、小笠原局(東京都小笠原)、石垣島局(沖縄県)の4か所に設置。
この4か所の電波望遠鏡を用いた高い解像度の観測によって、天体までの距離や運動を精密に計測する“位置天文観測”を行っています。
そして、これら位置天文観測データを用いて進めているのが、天の川銀河の3次元立体構造のほか、星の形成や進化、銀河中心の超大質量ブラックホールや超高速ジェットなどの研究です。
このように遠い場所にある複数の電波望遠鏡が協力して観測を行うことを“VLBI(Very Long Baseline Interferometry : 超長基線干渉計)”といいます。
具体的には、各望遠鏡で1秒間に2ギガバイトのデータを記録していて、これは128ギガバイトの容量を持つスマートフォンが、わずか1分余りで一杯になるほどの記録速度です。
今回の研究では、VERA4局を用いて38時間の観測を行い、合計で約1ペタバイトのデータを取得したそうです。
巨大ブラックホールにも、私たち人間と同じように成長の歴史があります。
特に、今回観測したブラックホールは、ご飯をモリモリ食べて元気に成長する育ち盛り真っただ中にあることが分かりました。
大幅にパワーアップしたVERAの観測性能により、これまで謎に包まれていた“若い”ブラックホールの姿が明らかになりつつあるんですねー
今後、さらに色々なブラックホールをVERAで観測することで、ブラックホールの成長や多様性の謎に迫れるはずです。
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このことは、巨大ブラックホールの成長・進化の仕組みを理解する上で、大きなヒントを与える成果になるようです。
図1.この研究の概念図。銀河の中心にある急成長中の超大質量ブラックホールからは、ジェットや円盤風が噴出している。ブラックホール近傍から放たれた電波は、周辺にある磁場を伴ったガスを通過する際に、偏波面が回転して観測される。(Credit: 国立天文台) |
銀河の中心に存在する巨大ブラックホール
ほとんどの銀河の中心には、太陽の100万倍から100億倍の質量を持つ巨大ブラックホールが存在すると考えられています。私たちの天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ巨大ブラックホール“いて座A*(エースター)”が存在しています。
このような巨大ブラックホールは、どのようにして速く成長してきたのでしょうか?また、そもそも、どのように作られるのでしょうか?
天文学者は長年この謎に取り組んできましたが、まだよく理解されていないんですねー
急成長中の巨大ブラックホールが存在する銀河
“狭輝線セイファート1型銀河”は、活動銀河核を持ち可視光線で特異なスペクトルが観測される銀河です。銀河の中には、その中心で激しい活動を起こしているものがあり、このような天体を“活動銀河核”と呼ぶ。
この狭輝線セイファート1型銀河には、まだ比較的質量が小さく、周辺のガスを勢いよく取り込みつつある、いわば急成長中の巨大ブラックホールが存在すると考えられています。でも、狭輝線セイファート1型銀河が放射する電波は、クエーサーや電波銀河のような、より巨大なブラックホールが存在する銀河に比べて弱いので、中心部のガスの分布といった詳しい様子は、これまで観測されていませんでした。
巨大ブラックホール近傍のガスが放つ電波は、一般的に偏波(可視光線でいう偏光)と呼ばれる、特定の方向に偏った振動をする特徴があります。
この偏波がブラックホール周辺にある磁場を伴うガスを通過するとき、偏波面が回転する“ファラデー回転”という現象が起こるんですねー
この回転量は、ガスの密度や磁場の強さによって変化するので、巨大ブラックホール周辺のガスや磁場の分布を探るための重要な手掛かりになります。
ファラデー回転について、十分に成長した巨大ブラックホールが存在する銀河では、よく調べられていました。
でも、狭輝線セイファート1型銀河では、ほとんど観測例がないので、ブラックホール急成長の謎を解くための残されたカギになっていました。
観測が困難だった狭輝線セイファート1型銀河
そこで、今回の研究で着目したのは、地球から比較的近い距離にある6つの狭輝線セイファート1型銀河でした。それぞれの巨大ブラックホール近傍の詳しい様子を、国立天文台が運用するVLBI観測網のVERA望遠鏡を用いて観測しています。
この研究は、国立天文台で研究を進める東京大学大学院 理学系研究科 博士課程の高村美恵子(たかむら えみこ)さんを中心とする国際研究チームが進めています。
VERA望遠鏡が持つ高い分解能に加え、新たに開発された“広帯域・偏波受信システム”によって、これまで観測が困難だった狭輝線セイファート1型銀河の中心からの微弱な偏波を検出。さらに、狭輝線セイファート1型銀河からの偏波のファラデー回転を導き出すことに初めて成功しています。
また、狭輝線セイファート1型銀河中心のブラックホールの近傍にガスが豊富に存在することを、これまでで最も高い解像度による観測で裏付けています。
狭輝線セイファート1型銀河の質量は、十分に成長した超大質量ブラックホールに比べると、10分の1ないし100分の1程度しかありません。
でも、いずれはより大きなブラックホールに成長し、クエーサーのような極めて明るく輝く天体になる可能性を示唆していました。
国立天文台の電波望遠鏡ネットワーク“VERA”
遠く離れた複数の電波望遠鏡で同時に観測すると、口径の大きい電波望遠鏡を使うのと同様の性能を得ることができます。国立天文台では口径20メートルの電波望遠鏡を水沢局(岩手県)、入来局(鹿児島県)、小笠原局(東京都小笠原)、石垣島局(沖縄県)の4か所に設置。
この4か所の電波望遠鏡を用いた高い解像度の観測によって、天体までの距離や運動を精密に計測する“位置天文観測”を行っています。
そして、これら位置天文観測データを用いて進めているのが、天の川銀河の3次元立体構造のほか、星の形成や進化、銀河中心の超大質量ブラックホールや超高速ジェットなどの研究です。
図3.国立天文台が運用するVERA望遠鏡の配置。岩手県奥州市水沢、鹿児島県薩摩川内市入来、沖縄県石垣市、東京都小笠原村父島の4か所に口径20メートルの電波望遠鏡を設置し、それらを連携しVLBI(Very Long Exploration Interferometer)技術を用いた観測をすることで口径2300キロに及ぶ巨大望遠鏡と同じ分解能を引き出す。(Credit: 国立天文台) |
これら4つの電波望遠鏡の特徴は、同時に2つの天体を観測できる2ビーム電波望遠鏡であること。ひとつの受信機の視野を観測天体に、もうひとつの受信機の視野を観測天体の近くにある参照天体に向けて、同時に観測することによって大気揺らぎを補正し、天体の位置決定精度を向上させている。この観測手法は相対“VLBI”と呼ばれている。
今回アップグレードしたVERA広帯域受信システムでは、これまでの観測の約4倍広い帯域幅(データの記録スピードに換算すると約16倍)で、電波をまとめて受信することで雑音を低減し、信号検出感度を大幅に向上させています。具体的には、各望遠鏡で1秒間に2ギガバイトのデータを記録していて、これは128ギガバイトの容量を持つスマートフォンが、わずか1分余りで一杯になるほどの記録速度です。
今回の研究では、VERA4局を用いて38時間の観測を行い、合計で約1ペタバイトのデータを取得したそうです。
巨大ブラックホールにも、私たち人間と同じように成長の歴史があります。
特に、今回観測したブラックホールは、ご飯をモリモリ食べて元気に成長する育ち盛り真っただ中にあることが分かりました。
大幅にパワーアップしたVERAの観測性能により、これまで謎に包まれていた“若い”ブラックホールの姿が明らかになりつつあるんですねー
今後、さらに色々なブラックホールをVERAで観測することで、ブラックホールの成長や多様性の謎に迫れるはずです。
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