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運用前の“ひとみ”のひと働きで分かった、意外と静かな銀河団中心の高温ガス

2016年07月11日 | 宇宙 space
銀河やブラックホールなどの解明に大きな期待を寄せられていた、
日本のX線天文衛星“ひとみ”。

残念ながら本格運用には至らなかったのですが、
観測装置立ち上げ段階で行われた観測が、意外な発見につながったんですねー

観測データからは、
ペルセウス座銀河団の中心部の高温ガスは意外に静穏であることが、
明らかになったようです。


宇宙ジェットの影響

私たちから約2.5億光年遠方にあるペルセウス座銀河団は、
X線で最も明るい銀河団(銀河の大集団)です。

これまでに数々の観測が行われ、多くのX線データが取得されているので、
いわば“標準天体”とも呼べる銀河団なんですねー

ペルセウス座銀河団の中心には、
巨大なブラックホールを持つ電波銀河“NGC 1275”があり、
そこから宇宙ジェット(光速に近い高エネルギー粒子の絞られた流れ)が、
放出されています。

この宇宙ジェットが、
周囲に広がる5000万度以上の高温ガスにどのような影響を及ぼしているのか?

これを明らかにすることはX線天文学の重要な研究テーマの1つであり、
その解明のためにはガスの運動を調べることが必要になります。


ガスは意外と静かだった

今回の研究は、
X線天文衛星“ひとみ”プロジェクトの研究者からなる、
国際研究チームが行っています。

今年2月17日の“ひとみ”打ち上げの約1週間後から、
軟X線分光検出器“SXS(Soft X-ray Spectrometer)”によって、
60時間以上にわたりペルセウス座銀河団を観測。

得られたデータから、
“SXS”は打ち上げ前に見積もっていた以上の分解能を、
達成していたことが分かります。

これまでの20倍以上の精度で、
高温ガスの運動を測定できることを軌道上で実証したことになります。
先代のX線天文衛星“すざく”の装置“XIS”(赤)と
“ひとみ”の装置“SXS”(黒)の取得したスペクトル比較。
“ひとみ”は非常に高精度でデータを取得できていた。

また、“SXS”は銀河団中心部の高温ガスの運動を初めて測定することに成功。

ガスの乱れた運動が意外に小さいことを明らかにしています。

銀河団の中心から10万~20万光年の範囲では、
高温ガスの乱れた運動の速さは秒速164±10キロ(視線方向の成分)と、
見積もられます。

でも、この運動が発生する圧力は、高温ガスの熱的な圧力の4%に過ぎず…
予想を下回る低い値でした。
銀河団中の高温ガスの運動速度を表した図。
背景はNASAの衛星“チャンドラ”の観測データによるペルセウス座銀河団で、
右の四角い部分(一辺約20万光年)が“ひとみ”の“SXS”観測領域。
青は私たちに近づく方向の運動、赤は遠ざかる方向の運動を表している。

銀河団中心部では、巨大ブラックホールから吹き出すジェットの影響があります。

なので「ガスはかき混ぜられて乱れた状態なのではないか」
という予測されていました。

でも本格運用前の“ひとみ”のひと働きにより、
ガスは意外に静かだったということが分かったんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ 新タイプのブラックホール発見などなど… JAXAが天文衛星“すざく”の科学的成果をとりまとめ



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