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モバライダー mobarider

最も遠くにある超新星の残骸

2012年08月05日 | 宇宙 space
国内の研究チームが“すばる望遠鏡”を使って、最も遠くにある超新星の残骸を発見しました。
この超新星の残骸は120億光年のかなたにあり、観測史上最も遠方となるんですねー

今回の観測で研究チームは、手前の天体の重力を「レンズ」として利用する方法をもちています。
これにより、「銀河が活発に作られていた、100億年以上前の宇宙の歴史を明らかにできる」 っと期待されています。

研究チームはハワイの“スバル望遠鏡”を使って、119億光年先にあるクエーサーを観測。
赤外スペクトルを分離して取得することに世界で初めて成功しました。
(クエーサーと遠方銀河の中心にあり、非常に明るく輝く活動銀河核の一種です。)

このクエーサー“B1422+231”は、地球から37億光年先の銀河付近を通して見えます。
このとき銀河の重力によりクエーサーの光が曲げられ(重力レンズ効果)、4つの像に分裂して見えるんですねー

この4つの像のうち、今回とらえた像AとBのスペクトルを調べたところ、
クエーサーより0.5億光年手前に位置するガス雲に、
マグネシウムや鉄といった重元素が含まれている痕跡が、吸収線(スペクトル中の暗い線)として現れました。

また、同クエーサーは過去にアメリカの研究チームが、像AとCの可視光スペクトルを取得しています。
これを併せることで、ガス雲の大きさや運動も明らかになったんですねー

これら重元素の存在や運動のようすから、ガス雲は超新星爆発の残骸だと考えられます。
特に鉄が多く含まれているので、超新星爆発のなかでも鉄を多く放出するIa型超新星爆発の残骸のようです。

恒星の重力崩壊でなく、白色矮性が起こす暴走的核融合で発生するのがIa型超新星爆発です。
これまでに発見されていた最遠記録は約93億光年先なので、
今回の約120億光年という距離は、記録を大幅に更新したことになります。

今回の発見は、重力レンズ効果によって約400倍に拡大された超新星残骸を、
吸収線といういわば「影」によって見るという斬新な方法によって初めて可能になったんですねー

Ia型超新星爆発は宇宙における元素合成や、物質循環の基礎となる重要な現象です。
これが約120億年前という宇宙が誕生して間もない時代に、すでに起こっていることを世界で初めて観測により明らかにしました。

今回の研究は、私達の周りに存在する多くの元素の起源を探るうえで重要な成果になります。

研究チームでは今後、多くの重力レンズ効果を受けたクエーサーの分光観測を進める予定です。
100億光年以上先の遠方宇宙における、ガス雲の状態や銀河の歴史が解明されることを期待しましょう。


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