宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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ブラックホールも食事の後には「ゲップ」する?

2015年12月07日 | 宇宙 space
吸い込まれたら二度と出られないブラックホール。

でも星を飲み込んだ後には、
「げっぷ」のようなフレアを吐き出しているようです。


今回観測されたのは、
“PGC 43234”という銀河に存在するブラックホールが、
太陽ほどの大きさの星を飲み込む様子。

これまでにも、
ブラックホールが星を飲み込んだり、高速ジェットを放出する様子は、
観測されされたことはありましたが、それぞれ個別に観測されたものでした。

今回の研究では、
初めてブラックホールが星を飲み込み、その後高温のフレア放出する様子が、
まとめて観測されています。

ブラックホールの周りには、吸い寄せられてできた降着円盤という、
パンケーキのような形のガスの雲があります。

周囲の物質は、
ここを猛スピード回転しながら重力場に落ち込んで行き、
数百万度という高温になって、強烈な光を発することになります。

なので、ブラックホールが食事をすると発光することがあり、
これが、今回とらえられたフレアになります。

今回観測されたブラックホールの質量は、太陽の数百万倍ほど。
でも、いまだに周囲の星を引き付けようとしています。

しかも、このブラックホールも超大質量ブラックホールに比べれば、
軽い方になるんですねー

星がブラックホールに飲み込まれる過程は非常に複雑で、
理解するのが大変難しいことです。

この観測では、星のデブリがジェットの流れを整えたり、
高速化させることが判明しています。

これは星が飲み込まれる過程の研究において、
価値ある発見になるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 星形成を終わらせたブラックホールの「げっぷ」

恒星までの距離は太陽~冥王星の16倍! はるか彼方に飛ばされた系外惑星のなぞ

2015年12月04日 | 宇宙 space
みなみじゅうじ座の若い恒星に、
980億キロも離れた系外惑星が見つかったんですねー

なぜ、こんなに距離が離れているのか?

恒星の近くで誕生した後、
何らかの原因で遠くへ弾き飛ばされてしまったようです。


惑星はもっと内側で作られた

みなみじゅうじ座の方向約300光年彼方にある8等星“HD 106906”は、
年齢1300万歳の若い恒星です。

2014年にその周りに、
木星の11倍もの質量を持つ系外惑星が発見されました。

問題は、惑星から中心の恒星までの距離が約980億キロもあること。
太陽から冥王星までの16倍も離れているんですねー
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた“HD 106906”と系外惑星“HD 106906b”(右上)。
青白い部分は星の周りに分布する彗星帯。
灰色は観測で星の光をさえぎった部分、
その内側(右下の囲み)はジェミニ望遠鏡で撮影した中心星付近。

ジェミニ望遠鏡で中心星付近を詳しく観測すると、
星の周りにチリが環状に分布する様子がとらえられました。

環の内側75億キロ
(太陽系ではエッジワース・カイパーベルト付近)には、
何も見当たらないので、
そこにあった物質を材料として惑星が作られたと考えられます。

そしてその後、何らかの理由によって惑星系に撹乱が起こり、
惑星がはるか遠方に弾き飛ばされてしまったと考えられます。


惑星が持つ不思議な特徴

この惑星の不思議な特徴に、
周囲にある環の傾きから21度も離れていることがあります。

さらに星の周りには、
彗星帯のような小天体の集まりらしいものも見られています。

惑星に近い側は薄く細長く伸びているのに、
反対側は短いという偏った構造をしているんですねー

こうした特徴や構造も、撹乱の影響なのかもしれません。

私たちの太陽系が若かったときに、
どのような姿をしていたのか?

そして、その後どのように進化して、
現在の惑星の配列や小天体の分布につながってきたのか?

この若い恒星の周りの惑星系を調べれば、
これらの疑問を知る手がかりが得られるかもしれません。

ひょっとすると、太陽系の形成初期に存在していた惑星の中にも、
誕生した場所から遠くへ放り出されてしまった惑星があったのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 木星は太陽系の「壊し屋」だった?

予測よりも矮小銀河の数が少ないのはなぜ?

2015年12月03日 | 宇宙 space
宇宙論分野には、
「矮小銀河は銀河の数を上回るはずなのに、あまり見つかっていない」
という謎があります。

これを“ミッシング・サテライト問題”といい、長年の謎になっていました。

それが今回、多数の矮小銀河が発見されるんですねー

この発見が“ミッシング・サテライト問題”解決の糸口になるかもしれない、
と期待されているようです。


ミッシング・サテライト

多数の矮小銀河を発見したのは、
“次世代ろ座銀河団サーベイ”と名付けられた観測を、
行っている研究グループ。

観測は、南米チリにあるセロ・トロロ・汎アメリカ天文台の、
4メートルブランコ望遠鏡で行われました。

観測対象になった、ろ座銀河団は地球から6200万光年の距離にあり、
1億光年以内の領域では、おとめ座銀河団に次いで銀河数が多い銀河団になります。
月の大きさと観測された領域の比較。
“次世代ろ座銀河団サーベイ”で今回見つかった暗い矮小銀河(赤丸)、
以前から知られていた矮小銀河(白丸)。

矮小銀河は非常に暗く、拡散しています。

星の分布密度は太陽系周辺の約100分の1、
天の川銀河のバルジに比べると、わずか10億分の1しかありません。

もし、この矮小銀河の住人がいるとしたら、
見上げる夜空には星がほとんどない状態… とても退屈でしょうね。
ひょっとすると、銀河の中にいることに気付かないかもしれません。

宇宙の物質分布の進化に関するコンピュータ・シミュレーションによれば、
矮小銀河の数は、天の川銀河のように成長した銀河の数を、
大きく上回るはずだと考えられています。

でも、実際に観測してみると、
矮小銀河の数はシミュレーシンによる予測に対して、
明らかに少ないんですねー

シミュレーションが間違っているのか?
それとも単純に、まだ予測されている矮小銀河が見つかっていないだけなのか?

この衛星銀河が見つからない“ミッシング・サテライト問題”は、
宇宙論分野の謎の1つになっていました。

ただ今回の発見は、これまで見つかっていなかった矮小銀河が、
じょじょに見つかることを意味しているのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 謎が深まった、球状星団の起源。

重力波の検出に向けて! 技術実証機“LISAパスファインダー”はもうすぐ打ち上げ

2015年12月02日 | 宇宙 space
重力波検出にむけた技術実証機

フランスのアリアンスペース社は、
“ヴェガ”ロケットの組立を終え、12月2日の13時15分(日本時間)に、
南米にあるギアナ宇宙センターから打ち上げを行うそうです。
搭載されているのは、“LISAパスファインダー”という技術実証機で、
ヨーロッパ宇宙機関とNASAによって共同で開発された宇宙重力波望遠鏡です。

主な目的は、
これまで直接観測されたことのない重力波を検出するために必要な、
新しい技術や装置の実証試験をすること。

これらの実証試験の成果により、
重力波を検出する宇宙望遠鏡“LISA”が完成することになります。

“LISA”には多くの先進的な技術が使われることになります。

なので“LISAパスファインダー”の成果が、
“LISA”の実現にとって必要不可欠になるんですねー

そして“LISA”は2030年に完成し、打ち上げがられる予定です。

打ち上げ後はラグランジュ第1点へ

“LISAパスファインダー”は、
衛星本体と推進モジュールの2つの部分から構成されていて、
製造はエアバス・ディフェンス&スペース社が担当しています。

“ヴェガ”ロケットで打ち上げられると、
まず地球低軌道に入り、その後推進モジュールを使い、
地球から約150万キロ離れた、太陽・地球間のラグランジュ第1点に移動し、
運用期間は1年が予定されています。


観測には大きな重力波が必要

重力波は、時空が振動し光の速度で伝播する現象のことで、
別名“時空のさざ波”とも呼ばれています。

質量をもった物体が加速度運動することで、重力波は放射されます。

でも、観測できるほどの大きな重力波を出すには、
大きな質量をもつ物体である必要があるんですねー

観測できるほど大きな重力波の発生源としては、
中性子星やブラックホール、白色矮星などの公転。

そして、それら同士の衝突、
あるいは超新星爆発といった現象が挙げられます。


重力波天文学へ

重力波の存在は、1916年にアインシュタインが発表した、
一般相対性理論の中で予言されていました。

これまでに中性子星連星の軌道の変化を観測することによって、
間接的にその証明がされています。
でも、直接観測に成功した例は無いんですねー

なので、もし重力波の直接観測に成功すれば、
一般相対性理論の正しさが再び証明されると同時に、
重力波によって宇宙を観測する“重力波天文学”という分野が生まれ、
これまでとは違った目で、宇宙を観測できると期待されています。

重力波の検出を目指して、
これまで地上にレーザー干渉計という装置を置いた観測が、
日本を含む世界各地で行われています。

でも地上に置いた装置では、
低い周波数の重力波を検出することは難しいので、
装置を宇宙空間に置くことが考案されていました。

それがヨーロッパ宇宙機関とNASAとの共同で開発を進めている、
宇宙重力波望遠鏡“LISA”であり、
“LISAパスファインダー”による実証試験というわけです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 21年後にはブラックホール同士の衝突があって、重力波が観測できる?

打ち上げは来年3月! 輸送が始まった火星探査機“エクソマーズ2016”

2015年12月01日 | 火星の探査
打ち上げは1度延期されていた

2016年3月に打ち上げが予定されている、
火星探査機“エクソマーズ2016”の輸送準備が始まったそうです。

輸送先は、打ち上げが行われるカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地。
実は、搭載機器に問題が見つかり、打ち上げは1月から3月に延期されていたりします。

ただ、地球と火星との軌道の関係から、
火星探査機の打ち上げに適した時期は、2年2か月ごとにしかめぐってきません。

なので今回を逃すと、
次に打ち上げが可能になるのは2018年になってしまうんですねー

打ち上げは3月の14日から25日の間に予定されていて、
打ち上げにはロシアのプロトンMロケットが使われることになります。

ヨーロッパとロシアの共同ミッション

“エクソマーズ2016”は、
ヨーロッパ宇宙機関とロシア宇宙庁が共同で開発した探査機です。

もともとヨーロッパ宇宙機関とNASAとの共同ミッションとして立案されたのですが、
予算不足を理由にNASAが脱退…

その後、ヨーロッパ宇宙機関が選んだのはロシアとパートナーになることでした。

探査機の開発はヨーロッパ宇宙機関側が行い、
それを打ち上げるためのプロトンMロケットや観測機器などは、
ロシア側が提供しています。

“エクソマーズ2018”に向けた技術実証

“エクソマーズ2016”は、2機の探査機からなる計画です。

火星の周回軌道上から大気を調べる“トレイス・ガス・オービター”と、
火星地表への着陸技術を実証する“スキアパレッリ”の2機が、
合体した状態で打ち上げられます。

火星到着の3日前に分離され、質量600キロの“スキアパレッリ”は大気圏に突入。

そして、着陸地点となるメリディアニ平原にパラシュートを開いて降下し、
地表から2メートルのところでロケットを噴射、 軟着陸をすることになります。

主な目的は火星への着陸技術の実証で、
得られたデータは、次のミッション“エクソマーズ2018”で打ち上げられる、
大型の探査車の着陸装置の開発に活かされることになるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 火星探査機“エクソマーズ” センサー異常で打ち上げ延期へ