宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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十分な紫外線がないと惑星に生命は生まれない?

2018年08月11日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
地球のような岩石惑星で生命が生まれるには?
分かってきたのは、主星から放射される紫外線が十分に強いことが条件になるということでした。

地球型の惑星は、私たちが観測できる範囲の宇宙に1兆個の7億倍も存在するようなので、どこかに紫外線の条件を満たした惑星があるとしたら…

そして、その中には生命が生まれている惑星があるのかもしれません。


紫外線による化学反応で生命の材料が作られる

今回、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ天体物理学グループが発表したのは、十分に強い紫外線を出す恒星を回る惑星では、太古の地球と同じようなプロセスで生命が生まれる可能性があるということ。

こうした惑星では、生命の材料物質を生み出す化学反応が紫外線によって引き起こされるそうです。
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系外惑星“ケプラー452b”(イメージ図)
今回の研究は有機化学と系外惑星探索を組み合わせたもので、生命の化学的な起源を研究しているMRC分子生物学研究所の先行研究に基づいています。

MRC分子生物学研究所は2015年に、生物にとって猛毒でもあるシアン化物が、実は地球のすべての生命の源である“原始のスープ”の鍵となる成分だと提唱。

この仮説によれば、太古の地球では、隕石の衝突でもたらされた炭素が大気中の窒素と化合してシアン化水素が作られます。

シアン化水素は雨となって地表に降り注ぎ、そこで太陽からの紫外線によって多くの元素と様々な相互作用を起こすことになります。

この時に作られた化学物質からリボ核酸(RNA)の前身になる分子が生まれたそうです。
  RNAは生物の遺伝子を形作るデオキシリボ核酸(DNA)に近い物質で、
  多くの生物学者は生命の中で最初に情報を運んだ分子はRNAだと考えている。



必要なのは太陽と同程度の光

MRC分子生物学研究所の実験では、実験室の紫外線ランプの下でこれらの化学反応を再現。
そして作り出されたのが生物の細胞に不可欠な成分である脂質やアミノ酸、ヌクレオチドなどの元となる物質でした。
  実験で使われた光源の種類や、光源から出る光子の数を測定して、
  他の恒星の光との比較も行っている。


そして、キャベンディッシュ天体物理学グループとの共同実験では、紫外線にさらされた環境で水中のシアン化水素と硫化水素イオンから、生命の材料物質がどのくらい速く形成されるかを測定。実験は紫外光のない暗闇の環境でも行われました。

その結果、暗闇の条件では生命の材料とならない不活性な化合物しかできず、紫外光の下では生命に必要な材料物質が作られることを確認します。

続いて研究チームでは、様々な恒星が出す紫外線に対して、光の下での化学反応と暗闇での化学反応を比較。

そして、主星の周りの惑星が受ける紫外線の量をプロットし、どのような惑星で生命誕生につながる化学反応が起こるかを求めます。

すると、太陽とほぼ同じ温度の主星であれば、惑星の表面で生命の材料物質を作るのに十分な光が与えられること、一方で低温の恒星では、生命の材料物質を作れるほどの光は放射しないことが分かったんですねー
  低温の主星でも、強力なフレア現象が頻繁に起これば、
  その紫外線によって少しずつ化学反応が促進される可能性もある。

  太陽よりも小さく低温な恒星を回る惑星にも生命は存在する?
    


探査に有望なのはハビタブルゾーンとアビオジェネシスゾーンが重なる領域

研究チームでは、主星の表面温度と惑星の公転周期を図に表し、この図の中で生命誕生につながる化学反応を起こせるほど十分な光を得られる領域を、惑星系の中で水が液体の状態で存在できる領域である“ハビタブルゾーン”になぞらえて“アビオジェネシスゾーン”と呼びます。
  アビオジェネシスとは、生物が親からでなく無機物から自然発生するという仮説。

つまり、ハビタブルゾーンとアビオジェネシスゾーンが重なる領域にある系外惑星は、生命を探す対象として有望というわけです。
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アビオジェネシスゾーンを表したグラフ。
横軸が惑星の公転周期(日)、縦軸が主星の表面温度。
黄色の範囲がアビオジェネシスゾーン、青色の範囲はハビタブルゾーン、
赤色の帯はアビオジェネシスゾーンの境界の誤差範囲を示している。
地球とケプラー452bは黄色と青色が重なる範囲内にある。
これまでに知られている系外惑星のうち両方の領域が重なる範囲にあるのが、地球のいとことも呼ばれたケプラー452b。
ただ、この惑星は距離が遠すぎて、現在の技術では生命の有無を調べることができないんですねー
  太陽に似た恒星を回る、地球に似た惑星“ケプラー452b”を発見!
    

アビオジェネシスゾーンにある惑星をもっとたくさん見つけて、それぞれの特徴を調べるには、NASAの惑星探査衛星“TESS”やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの次世代望遠鏡の登場を待つことになります。


まずは地球によく似た惑星探しから

生命が偶然発生する確率がどのくらいあるのかは分かっていません。

でも、今のところ生命が発生した惑星として地球という1つの実例しかないので、まずは地球に最もよく似た惑星を探すというのは理にかなった方法になります。

そして、大事なのが生命誕生の必要条件と十分条件を区別すること。
生命の材料物質は必要なものですが、それさえあれば十分というわけではないからです。

こうした物質を数十億年間混ぜ合わせても何も生まれないという可能性だってあります。

ただ、必要なものが存在している環境には興味がありますよね。

最近の見積もりによれば、人類が観測できる範囲の宇宙には7垓個(1兆個の7億倍)もの地球型惑星が存在するそうです。

これらの惑星のうち、どのくらいの割合で生命が生まれている、またはこれから生まれるのかを考えるとワクワクしますね。


こちらの記事もどうぞ
  地球に似た惑星は、やはり太陽に似た恒星を回っている?
    

地球外生命の排泄物かも!? 衛星エンケラドスに有機高分子を初めて検出

2018年08月06日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
厚い氷の層に覆われた海を持つ土星の小さな衛星“エンケラドス”。

エンケラドスには間欠泉があり、地表にある割れ目から宇宙空間に向けて海水を噴き上げています。

興味深いことに海水に含まれているのは、水、塩、シリカ(二酸化ケイ素)、炭素を含む単純な化合物。そう、これらは生命の素材になり得る物質なんですねー

今回の研究では、すでに運用を終えた土星探査機のデータを解析し、数百個の原子が環状や鎖状にならんだ有機高分子を発見。

これまで、太陽系で地球外生命が見つかる可能性が最も高い天体は木星の衛星エウロパだと考えられてきました。

でも、エンケラドスの海に今でも微生物が生きているとすれば、思っていたより太陽系内は生命に満ちているのかもしれませんね。
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NASAの土星探査機“カッシーニ”が撮影したエンケラドスの間欠泉。
間欠泉からは氷状の物質が噴出している。


地球外生命探しに有力な素材

2005年末、あるニュースが科学者たちを驚かせます。
NASAの土星探査機“カッシーニ”の観測から、エンケラドスの南極領域から氷のジェットが噴出しているのが分かったんですねー

ジェットはエンケラドスの表面を覆う氷の殻の割れ目から噴出していて、氷の下に広がる海の水を含んでいました。

今回の研究では、海水の塩分濃度や酸性度を計算することで、ジェットに含まれる海水にメタンなどの簡単な有機化合物も含まれていることを明らかにしています。
  さらに、海底の熱水噴出孔が熱とエネルギーを供給していることを突き止めている。

ただ、検出された複雑な分子がどのようにしてできたのかという疑問が残ることに…

生物と無関係な化学反応でできたのか、それとも地球外生命の排泄物なのでしょうか?

残念ながら現時点では分かってはいません。


探査機“カッシーニ”が残した宝

2017年9月に土星に突入してミッションを終えた“カッシーニ”ですが、膨大な観測データを残してくれました。その中には多くの宝物があり、掘り出されるのを待っているんですねー

宝物の1つは“カッシーニ”が土星のE環の付近を飛行したときに収集したデータです。

透けて見えるほど薄いE環は、エンケラドスから噴き出したチリや氷からできています。

“カッシーニ”はこのE環の端をかすめて飛行する際に、そうした粒子を専用の分析装置に衝突させ成分データを収集。
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“カッシーニ”が撮影したエンケラドスの南極領域の写真。
氷の殻の表面を蛇行する割れ目がとらえられている。
その中で研究グループが調査したのは、太陽系内の他の場所に由来するチリが最も少なくなる2004~2008年のデータでした。
  “カッシーニ”はこの期間に15回にわたって約1万個のチリ粒子を収集し成分を調べている。

調査の結果、約1%の粒子に複雑な有機化合物の痕跡を確認。
炭素を含むこれらの大きな分子は、エンケラドスから噴き出す氷に付着した状態で宇宙に飛び出し、たまたまそこを通りかかった“カッシーニ”に衝突して採取されたものでした。

これらの分子は、さらに大きい数千u(uは統一原子質量単位)の親分子の破片である可能性が高いそうです。
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2015年10月、土星探査機“カッシーニ”が、
エンケラドスの南極近くに見られるガスや氷の噴出(プルーム)の中を飛行して成分を調査。
この噴出は2005年に“カッシーニ”が初めて見つけたもの。


海面に浮かぶ有機物の膜

これだけ大きな有機分子がエンケラドスで確認されたのは初めてのこと。

それまで“カッシーニ”が検出していたのは、メタンやエタンのような1~2個の炭素原子と数個の水素から成る15u前後の気体分子でした。

でも新たに検出された分子は、7~15個の炭素原子と数個の水素のほかに窒素や酸素まで含んでいて、大きさは約200uもあります。

大きな分子は、低温で乾燥した火星などの場所では見つかっているのですが、液体の海から来たものが検出されたのは今回初めてなんですねー

ただ、多くの大型有機物分子は液体の中で長期間安定して存在できないので、これらの有機物分子はどこから来たのでしょうか?

考えられるのは、エンケラドスの海中で新たに生成された大きな有機物分子が海面に浮き上がってきて、南極領域の氷の割れ目の近くで層になっていているということ。

有機物分子はそこで氷の粒に付着して、海底から浮き上がってきた気体の泡が海面で弾けるときに、その勢いで宇宙に飛び出したのかもしれません。

地球の表面にも生物やその副産物からなる油膜のような有機物分子の薄い膜が浮いています。
同じものがエンケラドスにもあるということは、生物が存在するということになるのかもしれません。
  生命存在の可能性が高くなった? 衛星エンケラドスで水素分子を検出!
    


行ってみないと分からない

炭素を豊富に含むスープが存在することは非常に興味深いことですが、生命の存在を確実にするものではありません。

それは、地球外生命の代謝反応以外にも、このような分子を作れる化学反応はいろいろあるからです。

こうした反応が生命活動とは完全に無関係で、化学と地質学のみで説明できるのでしょうか? それとも、いつの日か生命を生み出す可能性があるのでしょうか?

あるいは、エンケラドスの海に生息する地球外生命の排泄物なのでしょうか?

現時点でその答えは分かっていません。

ただ、“カッシーニ”がミッションを終えた今、その答えを見つけるにはエンケラドスに有機物を調べに行く必要があるんですねー

エンケラドス・ライフ・ファインダーというミッションなら、そう遠くない未来に出発が可能なんですが、NASAはこのプロジェクトへの資金提供を拒否。
代わりに、同じく氷の海がある木星の衛星エウロパへ行く探査機の打ち上げが予定されています。
  衛星エウロパの表面から水柱! 地球外生命探しが一歩前進
    

エウロパの塩分を含んだ海でどのような化学反応が起きているのでしょうか?
エンケラドスと同じように生命に必要な成分が豊富に存在しているのでしょうか?

エンケラドスへ行くミッションが無くなったのは残念ですが、2020年代に打ち上げられる探査機“エウロパ・クリッパー”の観測開始を楽しみに待ちましょう。


こちらの記事もどうぞ
  生命に必要な3要素の探査へ! NASAのエウロパ探査計画“エウロパ・クリッパー”
    

天の川との衝突を控えるアンドロメダ、20憶年前にも巨大銀河を飲み込んでいた

2018年08月04日 | 宇宙 space
アンドロメダ座大銀河って知ってます?

私たちのいる天の川銀河から250万光年離れたところに位置するお隣の銀河で、地球上から肉眼で見える最も遠い天体でもあります。

40億年後には天の川銀河と衝突して、1つの巨大な楕円銀河になると見られているアンドロメダ座大銀河ですが、実は約20億年ほど前にも巨大銀河を飲み込んでいたそうです。

私たちの近傍の宇宙がどうやって現在の姿になったのか、銀河がどうやって成長していくのか、今回の研究により少しずつ分かってきたようです。
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衝突による銀河の成長

今回、ミシガン大学の研究チームが発表したのは、アンドロメダ座大銀河が約20億年ほど前に存在した巨大銀河を飲み込んでいたこと。

銀河が銀河を飲み込むという現象は珍しいことではなく、たとえばおとめ座のM87銀河などは周辺の小さな銀河を飲み込みつつ、大きく成長してきた痕跡が確認されています。
  巨大楕円銀河M87は、数十億年かけて渦巻銀河を飲み込んでいた?
    

そして、アンドロメダ座大銀河もまた、現在の大きさになるまでにいくつかの銀河を取り込んできたと考えられています。

ただ、具体的にどれくらいの銀河を取り込んで成長してきたかといったことは、これまで分かっていませんでした。

今回の研究ではコンピュータモデルによる計算を活用してアンドロメダ座大銀河を分析。

すると、ハローと呼ばれる銀河を取り囲む球状領域の大部分が、かつては別に存在していた銀河の残骸で構成されていることが分かります。
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アンドロメダ座大銀河と天の川銀河に加え、さんかく座の渦巻銀河M33や数十個の矮小銀河で“局部銀河群”と呼ばれる銀河の集団が構成されています。

この銀河群で最大の銀河がアンドロメダ座大銀河で、2番目が天の川銀河になり、アンドロメダ座大銀河には小さな伴銀河M32が付随しています。

M32は非常に小さな古い楕円銀河で、アンドロメダ座大銀河などと同様にある程度古い星々で構成されています。でも、その一方で若い星もたくさん存在するという珍しい特徴を持っていて、かねてから不思議な存在とされてきました。

この謎は、今回行われたコンピュータ・シミュレーションにより解かれることになるんですねー

シミュレーションから得られた結果から推測されたのは、M32がかつてアンドロメダ座大銀河と天の川銀河に次ぐかなり巨大な銀河だったということでした。

M32pと呼ばれるこの巨大銀河は局部銀河群で3番目の大きさがあったものの、宇宙では比較的最近といえる約20億年ほど昔に、アンドロメダ座大銀河に飲み込まれていったようです。

その結果、M31を取り囲むハローは、そのほとんどがM32pに存在していた星々が構成することになり、かろうじて残ったM32pの中心部が現在のM32になります。

M32pのような大型銀河が衝突しても、M31銀河の円盤は美しく渦巻いています。

このことが意味しているのは、「大規模衝突によって銀河がバラバラになり、楕円銀河が形成される」という、これまでの考えに再考の余地が出てきたことです。

M32pという大型銀河の発見と研究は、天の川銀河のような円盤銀河がどのように進化し、大規模な合体でも生き残ったのかを理解する手がかりになりそうですね。
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M31とM32pの衝突合体の過程。
破壊された大型銀河M32pは、現在見られるM32と、M31を取り囲む星々のハローになった。


40億年後には天の川銀河も

アンドロメダ座大銀河は、その色が通常より青く見える青方偏移を伴っています。
  青方偏移とは、近づいている天体からの光のスペクトルが、
  波長の短い方(色で言えば青い方)にずれる現象。
  ドップラー効果によって起こる。


これはアンドロメダ座大銀河が私たちのいる方向に向って接近していることを示していて、いまから約40億年後には天の川銀河と衝突し、融合すると考えられています。
  アンドロメダと天の川、銀河同士の衝突は始まっている?
    

ここで気になるのが、アンドロメダ座大銀河と天の川銀河が衝突すると、私たちの太陽系がどうなるのかです。

2007年に発表されたのは、今から20億年後ぐらいになれば、接近するアンドロメダ座大銀河の重力の影響により約12%の確立で太陽系が天の川銀河からはじき出され、さらに3%未満の確率でアンドロメダ座大銀河に仲間入りするという、まさかの銀河移籍説でした。

そして、その頃には地球からアンドロメダ座大星雲と天の川銀河の衝突の様子が見ることができるんだとか。

もし、その説が正しいとすれば、地球に住む未来人は宇宙の大スペクタルショーをかぶりつきの特等席で見れるんですねー

ただ、天の川銀河を離れた太陽系は、今よりもはるかに強い宇宙線にさらされ地球の生物は滅亡へ…
銀河が衝突する頃には、太陽は赤色巨星になっていて一生の終りを迎えるそうです。

ただ、この後も銀河同士の衝突は続き、今度の衝突相手は同じ“局部銀河群”にあるM33(さんかく座銀河)。

このとき人類はどんな星に移り住んでいるのか、まさか滅亡とかしていないでしょうね。


こちらの記事もどうぞ
  衝突時期も変わってくる? アンドロメダ座大銀河の質量が下方修正されるかも