このニュースを知ったとき、(今帰省している)同居人とキャベツは、
「代理ミュンヒハウゼン症候群!!?」
と叫びましたっけ(正確には、キャベツは途中で発音が間違っていましたが)。様々なニュースが飛び交う2008年。来年は、少しは嬉しい知らせも多く欲しいところです。
1歳女児の点滴に「腐った水」混入、母親を逮捕(読売新聞)
入院中の五女(1歳10か月)が受けていた点滴に、腐敗した水を混ぜ、殺害しようとしたとして、京都府警は24日、母親で岐阜県関市の主婦(35)を殺人未遂容疑で逮捕した。
母親は混入を認めたが、「死なせるためではなく、子どもが病気になれば、付き添って看病できると思った」と殺意は否認している。府警は、母親が以前から、同様の行為を繰り返していたとみている。
母親と五女は、夫と長女との4人家族。母親は五女に付き添い、京都市内に滞在していた。次女、三女、四女はいずれも、4歳までの乳幼児期に病院で病死したといい、府警は、それぞれの死亡の経緯についても慎重に調べる。
発表では、母親は22日~23日夕、京都大病院(京都市左京区)小児科の集中治療室(ICU)で、敗血症の疑いで入院中の五女の点滴回路に2回、注射器で腐った水を注入し、殺害しようとした疑い。五女は一時、発熱などの症状があったが、現在は回復に向かい、命に別条はないという。
府警や京大病院によると、五女は、原因不明の重症感染症にかかっているとして、12月2日、岐阜県内の病院から京大病院に転院。
敗血症の症状があり、血液検査をしたところ、 唾液 ( だえき ) に含まれるカンジダ・アルビカンス菌などが異常に高い数値で血中から検出された。7日には五女の容体が悪化し、ICUに収容した。
同病院は11日に府警に相談。府警が、ICUのモニターカメラで内部を録画して監視したところ、23日夕、母親が、カメラから隠すように五女を抱きかかえ、ポケットから何かを取り出すしぐさをみせたため、任意同行を求め、事情聴取。その際、かばんなどに注射器数本を所持しており、
24日朝になって「水道水にスポーツドリンクを入れ、1週間~10日ほど放置して腐らせたものを、面会時間中に点滴に入れた。殺すつもりはなかった」などと供述。「以前にも同じようなことをした」とも話したという。
母親が説明する犯行動機について、子どもに意図的に危害を加えて、周囲の関心を引こうとする精神疾患の可能性があると、京大病院が分析しているという。(2008年12月24日(水))
これを受けて、「代理ミュンヒハウゼン症候群」を、二人は連想したのだった。
ちなみに、こうも書かれている。
「…周囲の関心をひくために、わざと自分の体を傷つけたり、病気をでっちあげたりする虚偽性障害を、
ミュンヒハウゼン症候群という。深刻な場合、ハサミや針を飲み込んだり、薬剤を自分で注射したりして入退院を繰り返すケースもある。
さらには、ミュンヒハウゼン症候群の患者だった人が、自分の代わりに我が子など身近な人を傷つけるようになる場合もある。ほかの人が病気やケガをするように仕向け、大変な父親、母親を演じることによって同情をかおうとするのだ。
これは自分の代わりに他人を傷つけることから、
代理ミュンヒハウゼン症候群という。・・・(略)・・・
代理ミュンヒハウゼン症候群になるのは、ミュンヒハウゼン症候群の患者だけではない。子どものときに親が冷淡、無関心で愛情に飢えていた人に多いといわれている。
欧米ではすでに数多くの症例が見つかり広く認知され、問題視されている。特にアメリカでは、絶え間ない入院と手術により内臓摘出まで受けた女児のケース、
乳幼児突然死症候群の学説の根拠とされた症例の母親が、実は代理ミュンヒハウゼン症候群だったというケースまであり、社会に大きな衝撃を与えた。
残念なことに、日本でも深刻な事件は起きている。病気でもないのに強い薬や大量の水を飲まされ、中毒を起こした幼児のケースなどがある。
少々わかりにくいが、代理ミュンヒハウゼン症候群では、子どもを傷つけるのが目的ではない。病気やケガをでっちあげるのは、あくまで手段にすぎないのだ。
自分の手で傷つけて、「かわいい我が子が大変なことに!」と病院に担ぎ込んで同情をひき、健気(けなげ)に看病をして愛情深い親を演じているのである。それが真に迫っているだけに、発覚しにくいという難しさがある。」(鈴木晶監修「知識ゼロからの精神分析入門」,2007年,幻冬舎)