己(おの)が火を 木々に蛍や 花の宿 (芭蕉)
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先週、10年ぶりに、蛍(ほたる)を見た。
今回が二度目。
都内で見れるとは知らなんだ。
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ほたるは、水が良いところでないと棲めない、と聞く。
「前の日は、20~25匹出たそうです」
と、庭の入口にいた背の高いおじいさまが教えてくれた。
おそらく、蛍より、蛍を見に来た人々のほうが多かったろう。
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夜が更けゆくとともに、
ほたるの淡い、優しい、黄色い光が、
どこからともなく、ぽうっと現れる。
「あ! 蛍がいる!!」
子どもらが騒ぐ。
着物姿の女性らも、一斉に同じ方向を向いた。
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うっすらとした暗がりの中で、
音もなく、
ほたるは、ほたるに、合い図を送る。
―― 私は、ここにいますよ。