アマゾンオーディブルというものを試してみました。
本を“聴く”……つまり、本を朗読した音声データを聴くことができるというサービスですね。
知人に紹介され、そんなものが世の中にあるのかということで、試しに聴いてみました。今回は、日記系記事として、その感想を書いてみたいと思います。
まず、このサービスのいいところは、本を読めないような場面でも本を“聴ける”というところですね。
たとえば、歩いて移動中とか車の運転中、あるいは明かりが十分にないようなところでも“読書”することができます。電車通勤なら電車内で読書もできますが、そうじゃない手段で通勤している場合は、そこでも“読書”が可能になるわけです。
難点は、時間がかかるということでしょうか。
なにせ朗読ですから、たいていの場合、活字を読むよりも時間がかかるでしょう。標準的な長さの作品で、だいたい10時間ぐらいかかるみたいです。速度を変更することもできますが、あまり速くすると、聴きとってついていくのが困難になるかもしれません。
もう一つは……これは日本語特有の問題かもしれませんが……漢字がわからないということですね。登場人物の名前が漢字でわからない。それだけならいいですが、「宿敵」と書いて「ライバル」と読むみたいなルビも朗読では表現できません。
またこれは、ぱっと聴いただけではわからない言葉が出てきたときにどうするかという問題にもなります。
私が今回聴いたのは横山秀夫さんの『震度0』という作品ですが、たとえばそのなかに「キソウ」という言葉が出てきます。
私も、曲がりなりにもミステリーを書く人間なので、それが「機捜」すなわち機動捜査隊のことだというのは、わかります。で、それぐらいはわかるさ……と余裕の表情をしてられるわけなんですが、長いこと聴いているとときどきこういうのが出てきますね。なんせ横山さんの作品ですから、警察内部の略語や隠語のようなものも頻繁に出てきて、なかには、よくわからない言葉もありました。
「機捜」というような言葉は、たとえ知らなくても、漢字で書いてあればなんとなく字面から意味を想像できたりすると思うんですけど、音声で聞いているだけだと難易度があがります。ここもデメリットかなと思いました。
そのことと絡みますが、“ちょっと前に戻って読み返す”みたいなことがうまくできないというのも欠点でしょう。「この人なんの人だったっけ?」というようなときに、パラパラッとページをめくって前の部分を確認することができない……巻き戻しやら何やらでやってみたとしても、該当する箇所を見つけるのは至難のわざでしょう。登場人物の多い複雑な話を読むときには、これはネックになると思われます。
朗読が一人の人間によるということも、ある種の違和感をもたらすかもしれません。
ここは好みの問題で、短所といえるかどうかは微妙ですが……
やはり小説なので、老若男女いろんな登場人物がいます。彼らのせりふを、すべて一人の人が朗読するわけです。私が聴いた『震度0』は男声の朗読で、刑事部長のせりふなんかははまっていると思ったんですが、“若い女性の甘ったるい声”なんかも同じ人がやるわけで、そういうところには、やや違和感をもつ部分もありました。まあ、これは仕方ないことでしょうが……
さて……なんだか短所ばかり書いてしまいましたが、総合的にみて、感想は決して悪くないです。
聴いていて、本を読んでいるのと同じように、その世界に入っていくことができたと思います。“オーディブルで読むジャンル”みたいなものを自分のなかで決めておいて、紙の本と使い分けるのが賢い利用方法かなと思いました。