ロック探偵のMY GENERATION

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Megadeth - Dystopia

2020-04-27 19:57:21 | 音楽批評



今回は、音楽記事です。

最近このカテゴリーではスラッシュメタルバンドを扱っていて、アンスラックス、スレイヤーときました。この流れで、今回はスラッシュメタル四天王の一角である Megadeth について書きましょう。

メガデスといえば、かのマーティー・フリードマン先生が在籍していたバンドとしても知られます。
また、前回の記事でも出てきたスレイヤーのケリー・キングも、一時在籍していたことがあります。

中心人物は、デイヴ・ムステイン。

この人は、もともとはメタリカでギターを弾いていました。それが素行不良でクビになり、みずからのバンドとして作ったのがメガデス。

もとメタリカにいたぐらいなので、ムステインは超絶ギタリストです。そのムステインにもう一人ギタリストがいて、そこに織りなされるギター・アンサンブルがメガデスの持ち味です。
そのもう一人のギタリストは頻繁に入れ替わってるんですが、そこはやはり、ムステインのこだわりゆえでしょうか。
ものの本によると、ムステインは人差し指と親指にくわえて中指も使うという自分のピックの持ち方を歴代ギタリストに伝授(押しつけ?)していたのだとか。そういうところも、ギタリストが固定しない一因なのかと思えます。マーティ・フリードマンさんはそれを拒否したそうですが……そのフリードマンがもっとも長く在籍していて、おそらくはその時期がメガデスの黄金時代だったというのは、いろいろ考えさせられるところがあります。

そしてもう一つ、メガデスというバンドを特徴づけるのは、その歌詞や世界観でしょう。
“インテレクチュアル・スラッシュメタル”などともいわれる、知的でシニカルな歌詞です。
たとえば、初期のアルバムに Peace Sells ... But Who's Buying? というのがありました。「平和は売りに出されている。だが、誰がそれを買うんだ?」ということです。このタイトルだけで、インテレクチュアルでシニカルというのは伝わってくるでしょう。こういう感じがあるので、スラッシュメタル四天王のなかで私はメガデスを一番気に入っています。

その持ち味は、最新作である Dystopia にも表れているでしょう。

 

「ディストピア」という言葉が出てきただけでも「知的でシニカル」という雰囲気が漂ってきます。

メガデスの公式YouTubeチャンネルでは、そのビデオが公開されているんですが、このビデオも、いかにもな感じに仕上がっています。

Megadeth - Dystopia

  退廃し 飼いならされた民衆は
  戦いをもっともはやく終わらせる方法は敗北することだと考える
  独裁政治の終焉は暴君殺しからはじまる
  癌はその根を絶たなければならない


全盛期のメガデスに比べると、シニシズムという方向性はちょっと後退しているような気もするんですが……それは、さすがのムステインもちょっと丸くなったということなのか、あるいは、シニカルな態度もとっていられないほどに現実世界がディストピア化してしまっているということなんでしょうか……

ただ、この歌詞は――政治的な文脈とは別の意味で――予言的なのかもしれません。

というのも、デイヴ・ムステインはこのアルバム発表後に、癌を患っているのです。

ムステインさんは波乱万丈の生涯を送ってきた人ですが、昨年には咽頭ガンを宣告されて闘病生活を送っていました。
闘病中には、さまざまなアーティストから応援のメッセージが寄せられたといいます。
そのなかには、オジー・オズボーンや、KISSのポール・スタンレー、さらにはメタリカのジェイムズ・ヘッドフィールドも。実に豪華な顔ぶれです。メタリカとは因縁もあるわけですが、近年はBIG4でツアーを行うなど、関係は決して悪くないようです。

幸いなことに、ムステインさんはもうガンから回復し、メガデスでのツアーも再開しているということです。

ただ、やはりここでもコロナの壁が立ちはだかっていて……メガデスのベーシストでムステインの右腕ともいうべき存在であるデヴィッド・エレフソンが、同じくメガデスのクリス・ポーランドとともに5月に来日することになっていたんですが、これが延期となってしまいました。多くのアーティストで同じことが起きているわけですが、延期というのも、果たしてその延期先がいつになるものかまったく見通せない状態です。
しかしそこは、癌からも復活したデイヴ・ムステインです。
またいつか、メガデスとしての雄姿をみせてくれることでしょう。いまはその日を待ちたいと思います。




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