ロック探偵のMY GENERATION

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十月事件と長勇

2020-12-08 18:53:39 | 日記


今日は12月8日。

太平洋戦争開戦の日です。

このブログではと時々近現代史に関する記事を書いていますが、この日付にあわせて、今回はひさびさに近現代史記事でいきましょう。
このカテゴリーでは、以前、満州事変について書きましたが……その満州事変と呼応した、日本国内のクーデター未遂事件、いわゆる“十月事件”に関与していた、長勇という人物について書いてみようと思います。

長勇は、橋本欣五郎とともに桜会を結成したメンバーの一人です。
桜会とは、軍の内部で国家改造を目指す人たちが作った結社。三月事件、十月事件では中心的な役割を果たし、長勇もその両方に関与していました。
十月事件においては、長は閣僚を皆殺しにする役割を担っていたといいます。
実際には、十月事件は未遂に終わったわけですが、三月事件のときと同様、その関係者に厳しい処分はくだされず……長もまた、その後順調に階級を上げています。

この人は、沖縄戦の記録にもよく名前が出てきます。

沖縄防衛を担った第32軍の参謀長として、沖縄戦に参加しているのです。

沖縄戦においては、持久戦方針に反対し、夜襲を立案したことで知られています。
すなわち、夜の闇に乗じて、米軍に奇襲をかけるわけです。
この夜襲作戦は、当初こそそれなりに成果をあげたようですが、繰り返しているうちに、当然ながら相手も対策をとるようになります。結果、次第にあまり効果がなくなっていく。やがては、逆に米軍側が夜襲部隊を待ち伏せして返り討ちにするようにもなったといいます。こうして、夜襲作戦は兵力を消耗させていくことになったのです。それは結果として、司令官の立てた持久戦方針(その是非は別として)の遂行を困難にしました。

上層部の決めたことに従わずに勝手に行動する。半ば願望まじりの甘い見通しに立った作戦を立てて、いたずらに戦力を消耗する……

これはまさに、大日本帝国の軍隊が抱えていた病弊を象徴しているように私には思えます。

戦前の日本軍というと、上のいうことには絶対服従の組織と思われるかもしれませんが、それは最末端の兵士についていえることであって、中堅以上の将校についてはまったくあてはまりません。それゆえに、上層部が立てた方針を貫徹することができず、それはさらに、政府が軍をコントロールできないということにつながっていくのです。

満州事変でも、その後の盧溝橋事件でも、軍の最上層部は基本的に不拡大方針をとっていました。ところが、現地の部隊がその方針に従わず勝手に戦線を拡大させてしまう。軍の上層部も、それに引きずられてしまう。この状況では、政府の側も、有効な手を打てません。これまで何度も書いてきたことですが、戦前の日本はそもそも組織統治に致命的な問題があったのです。

愛国心を声高に叫ぶ者たちが、実際には国を滅亡に引きずり込んでいった――という側面が、そこにあります。

そうした主張をもつ勢力には、絶対に権力をもたせてはいけないのです。







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