ロック探偵のMY GENERATION

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『怪獣総進撃』

2019-07-12 18:14:09 | 映画
 

今回は映画記事です。

このカテゴリーでは、ゴジラシリーズの作品について書いてきましたが、その流れで、シリーズの9作目『怪獣総進撃』について書きます。

公開は、1968年。
総勢11体の怪獣が登場しますが、これはシリーズ中でも屈指の数です。まあ、そのぶん一体ごとの出番はそれほど多くなく、バランやクモンガといったマイナー怪獣はほんの数カットしか出てこなかったりもするんですが……

この作品では、「怪獣ランド」なるものが登場します。

ゴジラをはじめとする怪獣たちを島に隔離して管理しようというもので、小笠原諸島に位置するこの島で怪獣たちは人間に害を与えないように生活しているのです。

ゴジラが核の恐怖を象徴するものだとするなら、この設定は実に興味深く思われます。
恐怖の対象であったはずの核を、人間の手で制御しようという発想……

日本初の商業用原発である東海原発が営業運転を開始したのは、1966年。
ここでもゴジラは、歴史的背景を映し出しているのではないでしょうか。
そしてそうだとしたら、安全に管理されているはずのゴジラが制御不能となって人類を襲うというストーリーは、未来を予言しているようでもあります。

この暴走の背後で糸を引いているのは、キラアク星人という宇宙人です。

キラアク星は、火星と木星のあいだの小惑星帯にある星という設定。
超高温環境でしか生きられないこの宇宙人たちが、地球侵略のために怪獣たちを操っているのでした。

しかし人類は、キラアク星人が怪獣たちのコントロールに利用している装置をつきとめ、反撃を開始。逆に地球怪獣たちをコントロールして、キラアク星人の拠点を攻撃します。
するとキラアク星人は、最終兵器としてキングギドラを投入……地球怪獣たちとキングギドラが富士の裾野で決戦を繰り広げる、というのが本作のハイライトです。
しかしこの戦いが、なんともえげつない。
なにしろ、10対1。
「地球怪獣は歯が立ちません」とキラアク星人はいいますが、過去にはゴジラ、ラドンの2体で撃退したことがあるわけで……さすがのキングギドラも多勢に無勢です。地球怪獣たちがキングギドラをタコ殴りにするさまは、なんだか集団リンチのようにみえてギドラに憐れみさえおぼえます。

キラアク星人は、さらにファイヤードラゴンという兵器も投入しますが、こちらは人間側の戦いで撃退に成功。こうして、キラアク星人の野望は潰え、地球は守られたのでした。怪獣たちは、ふたたび怪獣ランドで管理された生活に戻り、めでたしめでたし……

しかしながら、この“ハッピーエンド”にはどこか違和感を覚えます。

時代の違いはたしかにあるでしょう。
映画公開から半世紀を経たいまの視点からみると、怪獣たちが島で管理されて暮らしている状態は果たしてよいことなのか、と考えずにいられません。
そのあたりの考え方は、たしかに半世紀のどこかの時点で大きなシフトがあったように思えます。

人間が科学技術によって自然をコントロールする……そのことが是とされる時代がかつてあり、『怪獣総進撃』は、その時代の価値観を色濃く反映している作品なのではないでしょうか。

しかしまあ、余計なことを考えずにみれば、怪獣がたくさん出てくる怪獣映画ということで楽しめるでしょう。
この頃にもなるとゴジラシリーズはかなりジリ貧状態にありましたが、本作で多少持ち直したようで、打ち止めが予定されていた怪獣映画シリーズ継続の契機となったといいます。

そういう意味では、消えてしまいかねなかったゴジラの火をなんとか後の世代につないだ作品という見方もできるかもしれません。


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