ロック探偵のMY GENERATION

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アニメ『あしたのジョー』

2021-07-04 22:59:57 | アニメ



今回は、かなりひさびさにアニメ記事です。

一昨日の記事で紹介したように、『あしたのジョー』について書こうと思います。

とりあえず、動画を。
やはりTMSの公式チャンネルから、今回は『あしたのジョー2』のほうです。

【公式】あしたのジョー2 第1話「そして、帰ってきた…」"Tomorrow’s Joe 2" EP01(1980)

漫画のほうは、原作・高森朝雄、作画・ちばてつや。

一応注釈をつけておくと、原作者である高森朝雄というのは梶原一騎の別名義。
『あしたのジョー』は、伝説的な劇画原作者である梶原一騎にとっての代表作でもあります。

前にも書いたと思いますが、子供のころの我が家には名作漫画がたくさんあって、『あしたのジョー』も全巻そろっていました。スポーツ漫画といえば、『ドカベン』と『あしたのジョー』が私にとって今でも二大マスターピースです。

そんなこともあって、前回はなんの注釈もつけずに力石徹の名を出してしまいましたが……ここでも一応説明しておくと、力石は、主人公である矢吹丈のライバルです。鑑別所時代からの腐れ縁で、互いにプロボクサーになってからリング上で文字どおりの死闘を演じ、その戦いの直後に力石は死亡。そこで、寺山修司による葬儀ということになりました。


その力石徹をはじめ、『あしたのジョー』には個性的なボクサーが幾人も登場し、ジョーと勝負を繰り広げます。

ウルフ金串、カーロス・リベラ、ハリマオ、ホセ・メンドーサ……



それらの名勝負の中でも、私にとって『あしたのジョー』でベストファイトといったら、やはり金竜飛戦でしょうか。
力石の死後、なかなかそのショックから脱しきれずにいたジョーが、立ち直るきっかけとなった戦いです。友情に殉じた力石に捧げる勝利――しびれました。


その金竜飛戦もそうですが、矢吹丈といえば、何度倒れても戦い続ける姿が印象的です。

いつか、サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」という歌を紹介しましたが、やはり、ボクシングというものには、そういうイメージがあるわけでしょう。
何度うちのめされても、また立ち上がって戦い続ける――それは、ボクシングというところを超えて、人の生き様にも擬せられます。
たとえば、アフガンの緑化活動に貢献していた中村哲さんが亡くなった時に、U2のボノが「ボクサー」の歌詞を引用して彼を追悼したことは、以前このブログで紹介しました。

ただ……そこにある種の危うさが潜んでいることも意識しておかなければならないでしょう。

よど号をハイジャックした連合赤軍は「我々は‟あしたのジョー”である」という言葉を残しました。
ただの捨て台詞といってしまえばそれまでですが……日本の近現代史なんかをちょっとかじっていると、そのあたりを割り切ってしまえない感もあります。『あしたのジョー』にみられる、ある種の精神主義や‟敗北の美学”には、方向性を誤ると危険な部分もあるんじゃないか――そんな見方も私は持つようになりました。

しかしそれは、あくまでも「方向性を誤ると」という話です。

基本的には、やはりサイモン&ガーファンクルが歌う「ボクサー」のように、戦い続ける意志は尊いものであり、問題はそれをどこにむけるかということなんでしょう。

何度打ちのめされようとも立ち上がる。あしたのために。
そして、ともに戦ったライバルのために、決してリングを去りはしない……そんな姿が多くの人の心をひきつけ、だからこそ、寺山修司も『あしたのジョー』に思い入れがあったんじゃないでしょうか。





尾藤イサオ「あしたのジョー」

2021-07-02 16:22:20 | 音楽批評


今回は音楽記事です。

このカテゴリーの寺山修司シリーズの流れを受けて……さらに、前回のビートルズ記念日ともからめて、今回は尾藤イサオさんです。


55年前のビートルズの来日武道館公演――そこでは幾組かの日本人アーティストが前座をつとめました。ドリフターズや内田裕也が有名ですが、尾藤イサオさんもそのなかの一人で、前座をつとめたあとに内田裕也さんとともにアリーナで本公演を鑑賞したといいます。


尾藤さんは、このブログで何度か触れてきた日劇ウェスタンカーニバルの常連であり、アニマルズの「悲しき願い」(Don't Let Me Be Misunderstood)をカバーするなど、ロックな人です。
デビュー曲はブレヒトの『三文オペラ』に出てくるメッキー・メッサーのカバー「匕首マッキー」。この曲は、Mack the Nife という英語版でスティングやブライアン・セッツァーなどもカバーしています。いいところをついてきているわけです。



その尾藤イサオさんが、アニメ『あしたのジョー』の主題歌を歌っています。

これがなぜ寺山修司ゆかりなのかというと……その詞を書いているのが寺山修司なのです。

寺山修司が力石徹の葬式をやったというのは有名な話ですが、アニメ主題歌の作詞もしていました。
そして、その力石徹の葬儀でも、尾藤イサオさんが「あしたのジョー」を歌ったそうです。

その主題歌を聴けるアニメの第一話が、TMSアニメの公式YouTubeチャンネルで公開されています。

【公式】あしたのジョー 第1話「あれが野獣の眼だ!」"Tomorrow’s Joe 1" EP01(1970)

寺山修司という人は、『あしたのジョー』のほかにも、アニメ主題歌の作詞をいくつかやっているようです。
根がカウンターカルチャーの側だということだと思われますが……そのなかにあっても『あしたのジョー』は特別な作品だったのではないかと思われます。だからこそ、力石徹の葬儀という、いかにも寺山流なイベントをやったわけでしょう。

なにしろ、日本漫画史上、アニメ史上に残る屈指の名作……ということなので、次回にでも、この『あしたのジョー』という作品について書こうと思います。