日本では九という数字は「苦」に通じることから嫌われている。しかし、陰陽道では九は最高に良い数字とされているようだ。そんなことから中国ではこの九が重なる九月九日は、重陽の節句となっているという。旧暦での話だから今の季節感とは違う。此の節句はまた菊の節句とも言われるようで、この日は家族揃って小高いところに上り、菊を浮かべた酒を飲み家族の健康を祝うようだ。
漢詩にもよまれているが、その中でも私は杜甫の「高きに登る」が忘れられない。「艱難苦だ恨む繁霜の鬢/潦倒新たに停む濁酒の杯」「苦労が積み重なってすっかり頭髪も白くなってしまった。すっかり老いぼれた今、好きな酒も新たに止めなければならなくなった」というのです。きっと、もう唯一つの楽しみは、ちびりちびり飲む濁酒だったのでしょう。今それさへも止めなければならなくなった。ここを読むと身につまされるものを感じる。