宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島連山の新燃岳(標高1421㍍)が11日午前5時34分に噴火した。噴煙は一時、火口から2300メートルほどの高さまで上がり、北東方向の宮崎県側に流れた。噴火は2011年9月以来、6年ぶり。噴火警戒レベルは2から3に引き上げられ、火口から3キロ以内は立ち入り禁止となった。韓国岳の登山口えびの高原では、周辺のホテルや売店が火山ガスを心配し営業を中止していると報道された。
わたしにとって新燃岳は思い出深い山でもある。30年近く前のことだが、現役時代に3年近く人吉で過ごした時期がある。休みの日には球磨三山の一つである市房山や、登山口まで車で約1時間ほどの霧島連山の韓国岳や高千穂峰に夫婦でよく登ったものだ。とりわけ、えびの高原から韓国岳、獅子戸岳、新燃岳、中岳、高千穂河原、高千穂の峰と趣の異なる霧島連山を縦走するときは大変楽しかった。
山ではたくさんの人に出会った。千日行の行者、慈光さんと最初にお会いしたのは韓国岳の頂上だった。慈光さまは高千穂峰の頂上に寝泊まりされ、高千穂峰と韓国岳の間を縦走する千日回行をなさっておられる。何回かお逢いするうちに随分と親しくしていただいた。千日回行の一部である韓国岳から獅子戸岳、新燃岳までの縦走路を同行させていただいたことがある。
行者さんは私たちに歩調をあわせ、ゆっくりゆっくりと歩かれた。韓国岳から獅子戸岳までの下りでは、どうやら行者さんについて歩けたものの、獅子戸岳から新燃岳の上りでは息が切れてしまった。やっと着いた新燃岳の火口渕で、缶ビールとおにぎりの昼食をご一緒させていただいた。その時に見た山の景色は今も忘れられない。噴火口から昇る白い蒸気と火口底の青い池の風景が印象的だった。中岳までの縦走路は真っ赤なボケの花、はるかかなたに高千穂峰がそそり立っている。鹿児島桜島が大きな噴煙を空高く舞いあげている。行者さんと別れたあと高千穂河原からタクシーを呼び、車を置いたえびの高原まで引き返した。