大学入試で、携帯電話を用いてネットの質問サイトにアクセスして
解答を求めるという、新手のカンニングが発覚し、仙台市の予備校生
が逮捕された。
私は、ずいぶん器用なことをやるもんだと感心したが、どうして試験
監督官が気づかなかったのか、疑問に感じた。
また、この予備校生の方も、見つかれば答案は零点で不合格になるし、
通信履歴から本人が割り出される結末も大なのに、あえて不正をやっ
たのは、どうしてだろうかとも思った。
ただの目立ちたがり屋の愉快犯か、リスクの査定が出来ない頭の悪い
奴なのかといぶかしんだが、本人は優等生タイプで性格も良さそうに
も見える。何かが、彼を追い詰めていたのだろうという印象を持った。
予備校生は高校三年のときに父親を亡くし、受験浪人していたらしい。
経済的な先行きなり、本人は切羽詰った気持ちだったのだろう。
彼は、正常な精神状態では、なかったのではなかろうか?
どこか自失したような、自滅さえ孕みつつ、我もなく不正行為に着手
してしまったのではないのだろうか。
追い詰められた個人の失錯愚行を、カンニング程度のことを大げさに
刑事事件にして解決を委ねるという大学側の姿勢には、私の皮膚感覚
では馴染めないものを感じている。
当局者は、大学受験という厳正な制度を踏みにじられた事態への怒り
と処罰感情だけで、問題の解決方向を考えてはいないだろうか?
これは大学や試験制度への威信や体面の問題だけではなく、日頃から
勉強も出来真面目な素行の者でも、追い詰められるとこんなことも
やってしまうという事例である。
昔だったら「金属バット」が持ち出されるような家庭環境の不遇に対
して、彼は暴力沙汰を起こさず、知能犯に移行したのであり、
未熟な若者の精神風土に、非暴力的な非行への変容が問われてもよい
ようなケースでもある。
80年代頃までは、典型的な不良少年が存在したが、外見から暴力の
匂いを振り撒くような不良タイプは確実に減っている。だが、
その一方で、誰もが悪や不正への距離を縮めてしまって生きている
ような時代なのかとも思う。
大卒者の就職内定率が低下する一方の、今の社会の若者たちは、
追い詰められれば、その出口を暴力に求めるよりも、知的に狡猾に
立ち回ることで打開しようとする傾向があるのかもしれない。
世間では大相撲が八百長をやっていたり、相変わらず振り込め詐欺も
横行している。暴力はわりに合わないが、人を欺くのなら生きていくに
は許されるとでもいうグレーな保身感覚、モラルの堕落、良好な士気や
覇気の低下が、社会の各層に蔓延しているのかもしれない。
このネット・カンニングという事態の関係当局者には、一人の予備校生
を刑事罰に付して見せしめにすることよりも、彼のような未熟な若者に
対して、その生活や将来を見据えた、人道的な関心と教育的な配慮を
備えた対応を執って貰いたいと思う。特に注意すべきは、社会的制裁と
いう機運が生じないような心遣いだけは示して欲しいと思う。
解答を求めるという、新手のカンニングが発覚し、仙台市の予備校生
が逮捕された。
私は、ずいぶん器用なことをやるもんだと感心したが、どうして試験
監督官が気づかなかったのか、疑問に感じた。
また、この予備校生の方も、見つかれば答案は零点で不合格になるし、
通信履歴から本人が割り出される結末も大なのに、あえて不正をやっ
たのは、どうしてだろうかとも思った。
ただの目立ちたがり屋の愉快犯か、リスクの査定が出来ない頭の悪い
奴なのかといぶかしんだが、本人は優等生タイプで性格も良さそうに
も見える。何かが、彼を追い詰めていたのだろうという印象を持った。
予備校生は高校三年のときに父親を亡くし、受験浪人していたらしい。
経済的な先行きなり、本人は切羽詰った気持ちだったのだろう。
彼は、正常な精神状態では、なかったのではなかろうか?
どこか自失したような、自滅さえ孕みつつ、我もなく不正行為に着手
してしまったのではないのだろうか。
追い詰められた個人の失錯愚行を、カンニング程度のことを大げさに
刑事事件にして解決を委ねるという大学側の姿勢には、私の皮膚感覚
では馴染めないものを感じている。
当局者は、大学受験という厳正な制度を踏みにじられた事態への怒り
と処罰感情だけで、問題の解決方向を考えてはいないだろうか?
これは大学や試験制度への威信や体面の問題だけではなく、日頃から
勉強も出来真面目な素行の者でも、追い詰められるとこんなことも
やってしまうという事例である。
昔だったら「金属バット」が持ち出されるような家庭環境の不遇に対
して、彼は暴力沙汰を起こさず、知能犯に移行したのであり、
未熟な若者の精神風土に、非暴力的な非行への変容が問われてもよい
ようなケースでもある。
80年代頃までは、典型的な不良少年が存在したが、外見から暴力の
匂いを振り撒くような不良タイプは確実に減っている。だが、
その一方で、誰もが悪や不正への距離を縮めてしまって生きている
ような時代なのかとも思う。
大卒者の就職内定率が低下する一方の、今の社会の若者たちは、
追い詰められれば、その出口を暴力に求めるよりも、知的に狡猾に
立ち回ることで打開しようとする傾向があるのかもしれない。
世間では大相撲が八百長をやっていたり、相変わらず振り込め詐欺も
横行している。暴力はわりに合わないが、人を欺くのなら生きていくに
は許されるとでもいうグレーな保身感覚、モラルの堕落、良好な士気や
覇気の低下が、社会の各層に蔓延しているのかもしれない。
このネット・カンニングという事態の関係当局者には、一人の予備校生
を刑事罰に付して見せしめにすることよりも、彼のような未熟な若者に
対して、その生活や将来を見据えた、人道的な関心と教育的な配慮を
備えた対応を執って貰いたいと思う。特に注意すべきは、社会的制裁と
いう機運が生じないような心遣いだけは示して欲しいと思う。