J友様からいただいた、ロックジェットvol.56号に載った佐藤睦さんの「悪名」の舞台評です。
長い文章の書き起こし、大変読み応えがありました。有難うございました
【悪名The Badboys Return】
沢田研二ことジュリーが企画・主催する音楽劇シリーズが、今年も各地で開催されている。原作は今東光。勝新太郎と田宮次郎の主演で映画化され、大ヒットした『悪名』をマキノノゾミが作・演出で挑んだ。その名も『悪名・The Badboys Return 』
今回の音楽はかなりのロックバージョンで、任侠ものとロックの融合!
ジュリーの活動を長年見守ってきた人には自明の事だが1970年代には、すでに【ロックオペラハムレット】【ロックミュージカル・天草四郎】を行い、1990年代にはACTシリーズで通をうならせ、そして現在も続く音楽劇シリーズでは、ジュリーしか作り出せない舞台を続けている。
ジュリーにとって、演劇はコンサートと共に、活動の要となっているのだ。
今年の芝居でジュリーが演じているのは、大阪・河内の暴れん坊で、任侠の義理よりも 女性や弱者を愛する人情を重んじる、八尾の朝吉だからだ。
まっすぐで、正義感に溢れて、だけど女好きのやんちゃな青年がそのまま歳を取ったような朝吉。戦争から無事に帰国するも、再会した妻・お絹は、朝吉が死んだと思って別の男と再婚していた。そのお絹が新しい夫と共に苦境にある事を知った朝吉は、陰ながら二人を助けようと奮闘する。
登場する人間は、ヤクザや赤線で働く女性などだが、今時のラヴ・ストーリーよりもずっとモラルや節度が守られている。朝吉という人は、とにかく魅力的。すぐに暴力で解決しようとするところが、悪名たる所以だが、困った人いたら助けたくなってしまう、根っからの人の良さと正義感を持っている。
そして、絶対に負けない。英雄物語の典型的な人物のひとりといっていいだろう。
そんな朝吉の魅力と、ジュリーの魅力が重なると思うのは、私だけだろうか。
前作の『チェイサー』でもそうだった。主人公の探偵は、弱きを助け、強きを挫き、誰も不幸にはしないと努力する男だった。朝吉もまた同じような心根を持つ。ヤクザ者と疎まれている存在ではあるが、社会的な善悪ではない、法律的なでもない、人間としての善悪を求めて心のままに行きようとする男だ。さらに、人間の弱さを受け止め、弱さを許し、優しい力で問題を解決していく。ジュリーがこうした男を演じ続けるのは、この社会にはびこる問題の解決を、彼が演じるヒーローたちのように、軽々と行うことが出来たら、という思いがあるからかも知れない。
舞台は、まず、丸刈りで着流し姿のジュリーに驚くことになる。見た目は、勝新太郎か若山富三郎か、といった着流しの無頼な人なのだが、センターポジションでダンスし、歌い出すまで、その人がジュリーだとは全然気づかなかった。ジュリーはどこ?ん?でもこの声は?この歌声!そうか、ジュリーだ!それほどまでに八尾の朝吉になりきっていたのは衝撃だった。
演奏は舞台のセットの奥で行われており、場面によっては、演奏風景が観客に強調される。ギタリストの柴山和彦さん。パーカッションの熊谷太輔さんも、多少演じる風に登場する。柴山さんのギュンギュンするギターの音が楽曲だけでなく効果音としても使われていて、その演出には自然と気持ちが高まった。熊谷太輔さんが叩く和太鼓の音は、要所要所で力強く響き、観客がその音に導かれて物語の世界に入って行けるようになっていた。和太鼓のある国に生まれて幸せだなぁ、と私は思った。
テーマソングは、そのままシングルカット出来そうなくらい、王道のロック歌謡。南流石さんの振り付けもノリノリで、ジュリーが踊るのはとても楽しかった。チンピラたちの歌や踊りもロックテイストに溢れていて、耳に残った。
だが、今回最も素晴らしかったのは、朝吉が、新たに旅立つお絹の門出に歌う<河内音頭>だ。ジュリーが歌う河内音頭は、もっともロック感溢れるものだと思った。
再結成したザ・タイガースのライヴや、ソロのライヴでも感じたことだが、ジュリーには天性のヴォーカリストとしての魔法力がある。それは、思いを歌声にどこまでも込めることが出来るという力だ。もちろん、ヒット曲でも、近年のプロテストソングでも、それは感じることが出来るのだが、今回の舞台での、朝吉としての<河内音頭>は格別だった気がする。朝吉の<河内音頭>には沢田研二の魂が宿っていた。正義を求めるひたむきな優しさが溢れ出ていた。
お返事が大変遅くなりました(´▽`)手形は最近展示されたようですよ。
福山さんのファンですか?素敵ですものねー 沢山お客さんが入るのでしょうね(^O^)
一徳さん、私もジュリーのコンサートの時にお見かけしました。タイガース時代から知っていますが、年齢を重ねて 益々人間的な魅力が深まったような気がします。