私はステーキが大好きだ。現役時代はしょっちゅうステーキハウスに立ち寄っていたし、海外旅行先で一番よく食べたのもステーキだ。ペナン島に行った時はホテルの傍にあった屋台のステーキ店に毎日通った。
フィリピンでは失敗したことがある。ビーフステーキを注文したら牛肉の煮込み料理が出されて仰天して文句を言った。しかしこれは私が悪い。フィリピンではこれがビーフステーキと呼ばれていることをあとで知った。「アメリカンステーキ」と注文すべきだった。
現役を退くと少し気兼ねをするようになった。年金生活者が100g1,000円のステーキを食べることに疚しさを感じる。こんな状況で有難いのがサイコロステーキだ。近所のスーパーのちらしの日替わり目玉品で100g148円のサイコロステーキを見つけた時は本当に嬉しかった。
サイコロステーキは決して質の悪い牛肉ではない。整形したステーキ肉からはみ出した欠片だ。1片ずつが違う部位なので、時々特に旨い肉にも出会うというギャンブル的な楽しみもある。安くて旨い物が好きな元大阪人の好みにピッタリだ。
ある日、日替わり目玉品のサイコロステーキを買った。献立は同居する母に任せて買い物は私が引き受けているので、毎日「今日こそステーキ」と楽しみにしていた。ところが数日後に思い掛けない形で、変わり果てた姿に対面することになった。鍋料理の具として使われてしまった。その時の私のショックは恋人の生首を見せ付けられた男のようなものだった。怒りを抑えて食べたが、哀れ我が愛しのステーキ肉はすっかり「出汁の素」として使命を終えた抜け殻となっていた。母と同居を始めてから半年になるが初めて「美味しくない」と愚痴をこぼした。
母にとっては、私がよく買う100g128円のクズ肉と同じ位置付けだった。たった20円しか違わない。しかし私のショックは大きく胃痛と吐き気が1週間ほど続いた。怒れば健康を損なうということを改めて痛感した。
フィリピンでは失敗したことがある。ビーフステーキを注文したら牛肉の煮込み料理が出されて仰天して文句を言った。しかしこれは私が悪い。フィリピンではこれがビーフステーキと呼ばれていることをあとで知った。「アメリカンステーキ」と注文すべきだった。
現役を退くと少し気兼ねをするようになった。年金生活者が100g1,000円のステーキを食べることに疚しさを感じる。こんな状況で有難いのがサイコロステーキだ。近所のスーパーのちらしの日替わり目玉品で100g148円のサイコロステーキを見つけた時は本当に嬉しかった。
サイコロステーキは決して質の悪い牛肉ではない。整形したステーキ肉からはみ出した欠片だ。1片ずつが違う部位なので、時々特に旨い肉にも出会うというギャンブル的な楽しみもある。安くて旨い物が好きな元大阪人の好みにピッタリだ。
ある日、日替わり目玉品のサイコロステーキを買った。献立は同居する母に任せて買い物は私が引き受けているので、毎日「今日こそステーキ」と楽しみにしていた。ところが数日後に思い掛けない形で、変わり果てた姿に対面することになった。鍋料理の具として使われてしまった。その時の私のショックは恋人の生首を見せ付けられた男のようなものだった。怒りを抑えて食べたが、哀れ我が愛しのステーキ肉はすっかり「出汁の素」として使命を終えた抜け殻となっていた。母と同居を始めてから半年になるが初めて「美味しくない」と愚痴をこぼした。
母にとっては、私がよく買う100g128円のクズ肉と同じ位置付けだった。たった20円しか違わない。しかし私のショックは大きく胃痛と吐き気が1週間ほど続いた。怒れば健康を損なうということを改めて痛感した。