俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

産休3年

2013-07-01 11:13:55 | Weblog
 安倍首相は経済界に3年の産休を奨励しているが、これは女性にとって朗報だろうか。私はそうは思わない。3年のブランクは大き過ぎる。実は私自身が丁度3年間のブランクを経験して、そのためにその後の昇進で不利になったと思っているからだ。
 私は社命により3年間だけ公務員になった。3年後の復帰時には浦島太郎になったようなものだった。そのためにそれまで従事していた本流から外れて傍流を歩むことを余儀無くされた。3年遅れどころか中途再入社のような扱いを受けた。
 注意すべきことは、直近の3年間が欠落するということだ。周囲が直近の情報を持っているのに自分だけが3年前までの情報しか持っていない。3年遅く入社した人に欠けているのは最も古い3年間だが、私の場合は直近の3年間が欠けているから3年後輩よりも低く位置付けられるということになる。
 社命によるブランクであろうとも企業は大目に見てくれない。これが自己都合によるブランクであれば情け容赦しない。それまでトップクラスの評価であった人がいきなりお荷物扱いされかねない。
 日本人はなぜ有給休暇の取得率が低いのだろうか。様々な要因があるが、最新の情報から置き去りにされたくないということは決して小さいことではない。たった1日の間に社内外の情勢ががらりと変わることさえあり得る。これが3年ともなればハンディが大き過ぎる。
 3年間の産休の場合、復職するつもりでいればその期待は裏切られる。別の会社に再就職するというぐらいの覚悟が必要だ。それまでの評価が高かった人ほど落差の大きさに驚かされて惨めな気分になることだろう。

四谷怪談

2013-07-01 10:43:47 | Weblog
 夫の伊右衛門に毒を盛られたお岩は、顔の半分が醜く腫れ上がって髪が抜け落ちて悶え苦しんで死んだ。伊右衛門もお岩の幽霊に祟られて死んだ。
 これが四谷怪談の粗筋だ。この話は実話に基くと言われているが、幽霊ではなく病気によってこの事件は説明できる。どちらが感染源かは分からないが二人は梅毒だ。お岩は皮膚が冒され、伊右衛門は脳を冒された。お岩の幽霊は実在せず総て伊右衛門の幻覚に過ぎない。だから幽霊は伊右衛門にしか見えなかった。
 このように心霊現象と思われたものが科学的に解明できることは少なくない。雨乞いの習慣が世界中にあるのもそれが有効だからではない。雨乞いをしても降らなかった集落は滅び、たまたま降った集落だけが生き残ったからだ。彼らは雨乞いが有効だったという迷信を語り継ぐ。
 ナマズが暴れたら地震が起こるという俗説がある。どの程度正確なのかは知らないが幾らかは相関性があるようだから、デタラメな予測ばかりをバラ撒く地震学者よりも的中率が高いのではないだろうか。ナマズが地震を予知できるのは微振動か地磁気あるいは未だ科学が解明していない未知のエネルギーを知覚しているからと考えられる。とは言え「ナマズが地震を起こす」と考えるのは明白に誤りだ。あり得るのは微妙な変動を知覚する能力だけであって地震を起こす能力などあり得ない。
 戦時中に「空襲警報をやめろ」と要求した人がいたそうだ。その理由は「空襲警報が鳴るから爆撃される」とのことだった。ここまで因果性がひっくり返るとジョークにしかならない。