俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

適量

2013-10-05 10:15:55 | Weblog
 何であろうと過剰に摂取すれば有害だ。水を一度に10ℓ以上飲めば危険だし、酸素でさえ吸い過ぎれば過呼吸症候群という病気になる。人体に必須の水と酸素でさえ有害物になり得るのだから他のものは何であろうとも有害になるのは当り前のことだ。食べ過ぎも働き過ぎも有害だ。
 医療ではなぜか過剰ばかりを警戒する。血圧も血糖値もコレステロールもBMIも基準値よりも高い人が治療対象にされるが、実は低い人のほうが危険な状態だ。薬では改善できないと分かっているから放置されているのだろうか。
 肉が健康に悪いと信じている人が少なくないがこれは迷信だ。勿論、肉ばかり食べていれば良くないが、納豆であれ梅干であれそれを過剰摂取すれば有害になる。酒も適量を飲めば百薬の長であり飲み過ぎるから有害になる。
 例外は米と麦だ。多くの地域でこれらが主食になっているのは保存性が高いからだけではなく有害性が少ないからだろう。
 気候は過剰も過少も有害だ。暑過ぎても寒過ぎても生存を脅かす。降水量が足りなければ水不足になるし、一時に降れば水害を招く。100℃の熱湯に触れれば火傷をするが40℃の湯なら風呂にもシャワーにも使える。
 インドールという物質は少量ならジャスミン香になり香料や香水にも使われている。しかし濃度が高いと大便臭になる。つまり大便の臭さの元のインドールは少量であれば芳香になる。
 それが良いか悪いかだけではなく、適量かどうかが問われねばならない。

動かぬ体

2013-10-05 09:51:33 | Weblog
 アスリートに必要なことは体を鍛えることだ。「体で覚えろ」と言われるように、知識を幾ら頭に詰め込んでも体が自由に動かなければどうしようもない。
 戦後の日本が奇跡の復興を成し遂げ高度経済成長を続けたのは現場の従業員が優秀だったからだと言われている。トヨタでは現場からのボトムアップが多くの「カイゼン」に繋がった。
 顧客サービスで有名なノードストロームという百貨店がアメリカにある。この会社の組織表は極めてユニークだ。売場が一番上で経営者が一番下の逆ピラミッド型になっている。顧客に直接接する売場が最重要だという理念に基く。これは日本でよく見受けられるタテマエだけの顧客第一主義とは違って実質を伴うものであり、経営者並みの所得を得る販売員もいるそうだ。これが本物のカリスマ店員だろう。
 日本の経営も昔は現場重視だった。現場の声を大切にしたし、現場の力を高めるためのQC活動にも本気で取り組んでいた。現場軽視になったのはバブル経済以降だろう。より正確には、現場を軽視した一部の経営者がマネーゲームに現(うつつ)を抜かしたためにバブルを生んだと思える。
 東京電力やJR北海道による事故や不祥事が相次いでいる。その度に経営陣が謝罪会見をするが、経営者の責任を問い詰めても問題解決には繋がらない。現場が疲弊または腐敗していることが最大の原因だからだ。経営陣を総入れ替えしても無駄であり、必要なのは現場に対する梃子入れだ。
 とは言え、現場の梃子入れは難しい。一朝一夕にできることではない。時間を掛けて企業風土を改善するしか無かろう。特に旧国鉄の悪弊をそのまま引き摺っているJR北海道の建て直しは至難の業と思える。
 私は東電やJR北海道の経営陣の弁護をしたい訳ではない。根はもっと深いと言いたいだけだ。吊るし上げて溜飲を下げてもそれはスケープゴートでありいじめのようなものだ。指揮官を挿げ替えただけで弱いチームが強くならないことを野球やサッカーのファンなら誰でも知っている。経営者の吊るし上げで憂さ晴らしをせずに、経営体質改善に向けた取り組みを暖かく見守って欲しいと思う。