俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

反面教師

2014-04-26 10:21:06 | Weblog
 セウォル号の事故で韓国政府は実に下手な対応をしたと思う。これは反面教師として歴史に残されるべきだろう。
 船内に閉じ込められたと思われる200人以上の消息不明者は結局一人も救出できなかった。要するに成果ゼロだ。韓国政府がやったことは被害者救助ではなく遺体の回収作業だけだった。乗客が船内で溺れ死ぬのを遠巻きにして見守るだけだった。なぜこんな酷い対応しかできなかったのだろうか。
 致命的なのは初期対応の拙さだ。勝負どころは初日の日没までだっただろう。ここで有効な手を打てていれば多くの人命が救われていただろう。一刻を争う非常時には事態の先取りをせねばならない。ところが政府のやったことは常に後手でありしかも悉く失敗して沈没させてしまった。船から脱出できた人でさえ多数が亡くなった。もし在韓米軍の支援を拒絶せずに受け入れていれば何人か多く救助できていただろう。
 二日目にすべきことはあらゆる手を尽くすことだった。ここで米中日の3ヶ国の支援を受けて最大限の努力をすべきだった。支援を受けてもどれだけ救助できたかは分からない。それでも何もできずに被害を拡大させるよりはマシだ。同じ成果ゼロであっても、全力を尽くした上での失敗と手を拱いての無成果とでは全然意味が違う。国際支援を受けた上での成果ゼロなら遺族も国民もある程度納得できる。韓国政府の対応は論外であり支援拒絶が招くリスクを全く理解していない。
 支援拒絶が容認され得るのは犠牲者ゼロの場合だけだ。一人でも犠牲になれば救助体制に不備があったことになる。今回の場合、全員が犠牲になったのだから完全に失敗だ。殺人にも等しい愚策だ。亡くなった人の多くは指を骨折していたそうだ。多分、拷問にも等しい責め苦にもがき苦しんだ末での溺死だろう。人扱いをされている船長らだけが悪い訳ではなくベストを尽くさなかった政府関係者の責任も重大だ。
 実は日本も阪神大震災の時に恥ずかしい失敗をした。フランスとスイスの救助犬を、検疫を理由に入国禁止にした。当然散々非難され、東日本大震災の時にはこんな愚行を犯さなかった。
 人間は愚かだから失敗するが、失敗から学ぶ知恵なら持ち合わせている。船舶関係者に罪を押し付けるばかりではなく制度や危機対応策などを根本的に見直すべきだろう。この失敗が反面教師として生かされなければ犠牲者は浮かばれない。タイタニックにはドラマがあったがセウォル号にドラマ性は全く無い。災害時での世界最低級の愚かな対応としてのみ歴史的価値を持つ。

農業と農家

2014-04-26 09:37:30 | Weblog
 私は農業を大切な産業と考える。しかし農業を守ることと農家を守ることは全然意味が違う。必要なのは農業を守ることであって農家を守ることではない。これは商業を守ることと商店を守ることが別の話であるのと同じことだ。
 政府は商店を守ることに終始して商業を守ろうとはしなかった。そもそも商業を守るとはどういうことだろうか。商人が大儲けできるようにすることではない。国民が高品質な商品を低価格で自由に購入できるようにすることだ。つまり国民にとって好ましい商業環境を作ることだ。それを邪魔したのが百貨店法であり大規模小売店舗法だろう。
 それと同様に農業を守るとは国民のためになる農業を育てることだろう。補助金漬けにして自立できない農家を増やすことは、長い目で見れば農業を守る政策ではなく農業を滅ぼす政策だろう。国民を犠牲にしなければ成り立たない農業ではなく自立できる強い農業経営者の育成こそ望ましい。今回のTPP交渉を機に麦と豚肉の関税見直しが急務だろう。麦については何度も書いているとおり自給率10%の作物を関税によって保護する必要など全く無い。豚肉については不合理極まりない差額関税制度の撤廃が必要だ。これは国民にとっても畜産農家にとっても有害な制度だ。
 豚肉は基準価格である1㎏当り546.53円以下の物にはその差額分が課税され、更に4.3%の関税が掛けられる。つまり安い豚肉は総て570円/㎏で輸入される。この馬鹿げた制度が多くの不正を招いている。海外のペーパーカンパニーを経由したりバックマージンにしたりして、無数の脱税策が講じられている。あるいはこれは違法ではないが、低質品と高質品をセットにして基準価格に近付けて輸入して、高質品を叩き売っては国内畜産農家を困らせている。こんな世界に類を見ない変な制度はTPPを機に廃止すべきだろう。こんな時でなければ農林水産省による愚策を改めるチャンスは無い。