俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

勇み足

2014-04-28 10:13:57 | Weblog
 朝日新聞の要職を務めて昨年退社した若宮啓文氏が「新聞記者」という本を書いた。当然あの従軍慰安婦問題に触れない訳には行かない。どう書くのかと興味津々で読んだが「確認のとれぬまま記事にするような勇み足もあった」と一応非を認めた上で「国としての思い切った打開策が必要ではないかと思っている。」と結んだ。唖然とした。なぜこんな第三者的なスタンスで他人事のように書けるのだろうか。従軍慰安婦が国際問題になったのはその「確認のとれぬまま記事に」したことが原因だ。もっとはっきり言えば、後に捏造と証明された記事を掲載しその後も詭弁を弄して頑として訂正に応じなかったからこじれてしまっている。個人の著書で非を認めるのではなく朝日新聞として非を認めないことには一歩も前進できない。今でも強制連行はあったと信じている日本人は少なくない。橋下市長のように「強制連行は無かった」と言おうものなら徹底的に個人攻撃をして実質的に言論弾圧を行っているのが朝日新聞ではないだろうか。強制連行があったという間違った前提に立たない限り「国としての思い切った打開策」など不可能にしてしまったのが外でもない朝日新聞だ。真の打開策は1つだけだ、事実を両国が共有する以外に無い。それを「嘘を共有して日韓友好を優先すべし」と主張しているのが朝日新聞だ。
 確かに歴史は難しい。様々な解釈が成り立ち得る。しかし「あった・無かった」は解釈が介入する問題ではない。単に事実の有無が問われているだけだ。そして証明責任を負うのは「あった」と主張する側であって「無かった」と主張する側ではない。例えば「白いカラスはいない」と主張する側に証明責任は無く「白いカラスがいる」と主張する側に証明責任がある。これを「白いカラスは未だ見つかっていないが存在の可能性は否定できない」などといつまでも詭弁に縋り付いているべきではない。そんな証拠は戦後70年掛けても見つかっていない。
 韓国を訪れたオバマ大統領が慰安婦問題について25日に「酷い人権侵害だ」と発言したことを朝日新聞は大喜びしているようだ。しかし英文を見ると案の定sex slaveryと表現されていた。sex slaveは韓国が反日プロパガンダ用に作った術語だ。この言葉を使う限り人権侵害と見なされるのは当然のことだ。誰も奴隷制度を容認できないからだ。こんなプロパガンダを放置した外務省の責任は重大だ。オバマ大統領のこの日の発言をそのまま借りるが「過去は誠実かつ公正に評価されねばならない」。

客観

2014-04-28 09:35:21 | Weblog
 酒に酔うと判断力が低下する。だから周囲の人には酔っ払いだと分かる。ところが本人は判断力が低下していることに気付かない。判断力が低下していることを判断できないからだ。酔っているほうが上手に運転できると思っている迷惑な人がいる。これも判断力が低下しているからだ。反射神経も運動能力も低下しているのにそのことを判断できないからだ。
 抗鬱剤の効果もよく似たものではないだろうか。本人は服用前よりも抑鬱的ではなく気分が良くなったように感じていても、周囲の人には一層悪化しているようにしか見えないことが少なくないそうだ。こんな時、薬は有効なのか有害なのか、何とも判別し難い。薬とは大半が対症療法に過ぎないが、脳に作用する薬はとりあえず有効なのか有害なのかさえ分からない。癌の末期患者に投与されるモルヒネのように苦痛を誤魔化しているだけなのかも知れない。
 昔から狂人は自分ではなく周囲が狂っていると考えるものだと言われている。芥川龍之介の「河童」の作中作の「あほうのことば」はこんな文章で始まる。「あほうはいつもかれ以外のものをあほうであると信じている。」
 仮に脳の働きだけを早める薬があれば自分の体が思うように動かないと感じて苛立つだろう。逆に脳の働きを遅くする薬があれば体が早く動くようになったと感じるだろうか?多分、感じないだろう。周囲が自分の体以上の早さで動くからだ。しばらくすれば周囲の動きが早くなったのではなく自分の脳の働きが遅くなったということに気付くだろう。
 客観世界があれば主観世界の異常に気付ける。しかし脳内で起こることは本人にしか分からない。酒や抗鬱剤で脳の機能が低下しても本人が低下ではなく向上していると錯覚しても全く不思議なことではない。脳に直接作用する薬は全く恐ろしいものだと思う。
 周囲が見えなければ同様のことが国家レベルでも起こり得る。北朝鮮の誇大妄想や韓国や中国の異常な歴史観やナチス・ドイツなど沢山の実例がある。これが狂ったものかどうかは国内にいては分からない。外国に出れば少しは分かる。外国に出ても分からなければもっと重篤であり危険な状態だ。