俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

酒税

2014-07-07 10:04:40 | Weblog
 政府・与党はビール類の酒税の見直しを検討しているそうだ。タテマエ上は「ビール税が高過ぎるから」ということらしい。ビール税はドイツの20倍、アメリカの12倍と言われているだけに、もし本当なら良いことだ。現在のビール税は本物が高く贋物は安く、になっており贋物を優遇するという良からぬ税制になっている。食文化の向上のためには本物優遇が望ましい。
 残念ながらホンネは全然違うようだ。2013年には本物のビールのシェアは50.0%まで下がっており今年は50%を切ると予想されるからだ。税率の高いビールのシェアをこれ以上下げたくないということだろう。
 繁雑になることを避けるために発泡酒は無視してビールと第3のビールを比較するが、酷い税制であることが改めて分かる。350mlの缶ビールをそれぞれ220円と140円として試算する。
 ビールであればその内訳は本体127円、酒税77円、消費税16円(酒税にも消費税が掛かるので二重課税になる)、合計220円となる。税金の占めるシェアは42%だ。本体価格127円に対して73%に当たる93円が課税されている。
 第3のビールの場合、本体102円、酒税28円、消費税10円、合計140円となる。税金のシェアは27%だ。本体価格102円に対して37%に当たる38円が課税されている。節税ビールと言われる第3のビールでさえ驚くほど税率が高い。煙草や輸入豚肉と比べれば低いとは言え酷税と言えよう。
 ビールの税率を下げて発泡酒と第3のビールの税率を上げようと企んでいるようだが、ここでもう1つ問題が生じる。チューハイなどの発泡性酒類の税率との整合性だ。第3のビールの税率を上げてチューハイを据え置くことは酒税法上難しいからチューハイも値上げされることになるだろう。
 本物の奨励と言えば聞こえは良いが、低価格品を値上げして高価格品を値下げするのだから富裕層優遇策になるのではないだろうか。
 なおフィリピンではここ数年で激しく値上がりしたが、それでも1本40円ぐらいで買える。ビール好きには良い国だ。

順応

2014-07-07 09:31:50 | Weblog
 母が最近、高血圧と診断されたため私も減塩食に付き合っている。すると味覚が変わってしまった。これまで普通に食べていた物が塩辛く感じるようになった。味覚は何と容易に感化されるのだろうか。
 味覚だけではなく視覚もすぐに慣れる。明順応・暗順応と言うように明るい場所にいても暗い場所にいてもその照度に慣れてしまう。
 嗅覚や聴覚は勿論のこと触覚でさえ同じ刺激を受け続ければ衣服や腕時計のように知覚できなくなってしまう。
 五感がすぐに順応するように感情も順応する。現状維持であれば余り不満を感じない。給料が上がらないことに不満を持つ人は、周囲の人の給料が上がって自分の相対的な地位が下がるから不満を感じる。周囲の人の給料が上がらなければ不満を持たない。人並みであることを良しとする。
 戦後の日本人のハングリー精神が強かったのはアメリカ人の生活という明確な目標があったからだ。アメリカ製のドラマがテレビで放映されていたからその豊かな暮らしに憧れたものだ。比較する対象があればそれと比較して満足したり不満を持ったりするが、比較する対象が無くなれば現状維持で充分だ。向上や改善をしようとはしない。
 無知を自覚しない人は学ぼうとしない。テレビや新聞が提供する情報を拾い集めていれば常識は満たされると考える。そういう人こそ積極的に学ぶ必要がある。我々は余りにも無知だ、余りにも情報統制されている。これまで、ダイオキシンは史上最悪の危険物だ、環境ホルモンによってオスが滅ぶ、血圧やコレステロールは薬で下げろ、原発は安全だ、憲法解釈を改めれば集団的自衛権は認められる、といった嘘によって国民は騙され続けている。散々嘘を垂れ流しておいて後で嘘と分かっても訂正されることは殆んど無い。悪いのは騙すほうだが、騙されるほうにも責任がある。自らの無知を知るべきだ。これは単に哲学的な課題ではない。自らの安全を守るために必要なことだ。