俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

不正請求

2014-07-15 10:09:11 | Weblog
 号泣記者会見ですっかり有名になった野々村元県議だが、チケット店で使われた切手代と称する176万円は多分、商品券だったと思う。切手代としておけば政務活動費として請求できる。その商品券で買った物の領収書も政務活動費として認められる。この手口を使えば本来の経費の2倍の額が請求できる。多分、少なからぬ政治家がこの手口を使っているものと思える。
 昔、百貨店で、商品券を商品券で買える時代があった。領収書の品名を「進物品」とすれば交際費として経費で落とせた。これを何度も繰り返せば経費を幾らでも水増しできた。こうやって簡単に帳簿を操作して脱税ができた。
 この商品券で商品券を買うという手口は外にも悪用できた。百貨店の駐車場を使って、毎回商品券で商品券を買っていれば、数千円を寝かせるだけで延々と無料駐車が可能だった。今ではこの手口は使えない。
 アメリカでは医療費の不正請求の取り締まりが強化されている。制裁金と合わせて192億ドルがこの5年間に徴収されたそうだ。
 日本でも医療費の不正請求は日常的に行われている。アメリカほどの巨額にはならないと思うが、これを取り締まることによって収入増と医療費の削減が同時に可能になる。
 脱税を放置したままでの増税は理不尽だ。それは脱税によって不足する税収を善良な納税者に負担させる悪政だ。悪事を放任したままでの増税は全く不合理だ。
 政府はパチンコ税や携帯電話税などを検討しているらしいが、それよりも脱税や不正請求の撲滅に乗り出したほうが良いのではないだろうか。政治家の政務活動費や病院の不正請求を摘発するだけでかなりの収入増が見込める。善良な庶民から取り立てるよりも悪事の退治による増収のほうがずっと国民に歓迎されるだろう。

恐怖

2014-07-15 09:38:55 | Weblog
 論理と心理の両方を睨まねばならない。この二者はしばしば相矛盾する。それは単に知と情という意味ではなく脳構造の進化史に由来する。
 生物の進化は飛躍しない。常に従来の物の延長として進化する。原生動物から爬虫類へと進化した脳はその間、多分一度も作り直されてはいない。重層化することによって機能を高めた。まるでかつて香港にあった九龍城のように基本構造の上に次々に積み重ねられることによって高度化した。脳はパソコンのバージョンアップのように元の機能をそのまま残して新しい機能が付け加えられた。だから先に原始的部分が反応する。爬虫類の脳が反応した後、哺乳類の脳、そしてそれから人類の脳が反応する。最後に反応するのが人類の脳つまり理性だ。人類以前の脳と人類の脳が別々に反応する。これが情と知の違いになる。
 人類以前の脳とは以前から持ち続けて現在も持っている脳だ。それは決して原始的という意味ではなくむしろ動物として基本的かつ根本的なものだ。自己保存欲とか性欲や快・不快原則などの動物として普遍的かつ不可欠な機能だ。
 動物は様々な情動を持つがその中でも最も重要なのは恐怖だ。危険なものを察知して一刻も早く逃げることが生命維持のためには最重要だ。あらゆる知覚は危険察知を目的として発達した。
 人類においても恐怖が最重要だった。猛獣や天災から逃れることが最優先課題だった。ところが猛獣は近辺にはいなくなり台風であれば事前に予測できる。恐怖の対象が実質的に無くなっても恐怖の感情だけが残っている。だから人は必要以上に怖がってしまう。食品添加物や新型インフルエンザに怯えるのは恐怖という情動が強過ぎるからだ。対象を失った情動は暴走する。
 人類には理性が備わっている。強過ぎる恐怖心を克服できるのは人類の脳つまり」理性に依る。恐怖心は動物として必要な情動ではあるが文明社会においてはパニック反応のように最早有害な情動であることが少なくない。犬でさえ訓練すれば雷や花火の音でパニックを起こさなくなる。多分、人類の脳は犬よりも高性能だろう。
 通常、有害な性質は淘汰されるものだが、人類は今尚、進化の途上にある。中国文明でさえ僅か4,000年の歴史しか無い。こんな短い期間では充分に進化しない。最早有害とさえ思える恐怖心が克服されずに温存されている。