俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

マタハラ

2014-08-03 10:22:04 | Weblog
 こんな課長がいたら職場はどうなるだろうか。欠勤・遅刻・早退を繰り返し、どんなに忙しくても定刻で帰り、大切な打ち合わせでもドタキャンをする。誰でもこんな課長は降格かクビにすべきだと考えるだろう。こんな仕事ぶりを認めよと言っているのが反マタハラ(マタニティ・ハラスメント)を主張する人々だ。
 企業には企業の掟がある。仕事よりも家庭を優先してはならないということもその1つだ。誰もがそれに耐え、義理と人情、あるいは忠と孝の板挟みになって苦しんでいる。緊急時の1回限りであればそれも許容されよう。しかしその埋め合わせをしなければならない。埋め合わせもせずに同じことを繰り返すようであれば干される。
 企業の掟がこうなるのは当然のことだ。殆んどの企業は収支ギリギリのところで経営している。最低限の投資で最大限の利潤が求められるように、人事も最小限の人員で最大限の成果が要求される。すき家の場合は流石にやり過ぎだとは思うが、労働者は報酬に見合った、あるいはそれ以上の働きが求められる。人件費を湯水の如く無駄遣いするお役所とは違って企業経営は非常にシビアなものだ。
 そんな中で育児中の女性だけが業務に見合わない報酬を得るということに合理性があるとは思えない。報酬は業務に見合ったものであるべきであり、これはマタハラや女性差別ではない。私は一時的降格人事を提案したい。育児期間中は責任が軽く拘束時間も短い職場へ異動して業務相応に賃下げをする。子育てに手間が掛からなくなれば基本的には元のポストに戻る。勿論これは選択制であり、夫や親などの協力を得られる人であれば降格など選ばずにそれまでどおりにバリバリ働けば良い。楽な業務で高額な報酬を得ようとするのは厚かまし過ぎる。2日付けの朝日新聞で、三井住友銀行には総合職から一般職への臨時異動制度があることを知った。もっと普及して欲しいと思う。
 私は過度な厚遇よりも適切な処遇のほうが女性のためにも良いと思う。仮に育児期間中であろうともそうでないように処遇しなければならないことになれば企業側が女性の採用や登用を見合わせることにもなりかねない。不公平な制度はどこかで破綻するものだ。故障を抱えていつ戦力外になるか分からないような選手を主力に据えようとするチームなどあるまい。
 女性の雇用充実を錦の御旗として掲げて過度の厚遇を求めることは結局女性のためにならない。業務に見合った報酬にすることが女性にとっても企業にとっても最も合理的だと私は考える。

アイシング(続・炎症)

2014-08-03 09:39:38 | Weblog
 昔は、野球の投手は肩と肘を冷やしてはならないとされていた。しかし現在の投手は登板後にアイシングをする。アイシングには肩や肘の炎症を予防する効果があると言われている。
 アイシングには痛みを抑える効果もある。但しこれは痛みそのものの軽減ではなく、痛覚を鈍化させることによって痛みを感知しにくくしているだけだ。丁度、大量に砂糖が含まれる飲料水でも冷たければ甘ったるく感じないように、低温が痛覚を麻痺させているだけだ。
 アイシングが炎症を予防することは事実だろう。スポーツ医なら無数の事例を挙げて証明するだろう。しかし炎症を起こさないことによって肩や肘の故障が防止できることは証明されていない。ここに論理の短絡がある。
 酷使すれば炎症を起こして痛む。ここで重要なことはどこが患部であるかだ。患部は関節や筋肉だ。ではなぜその周縁部が炎症を起こして痛むのか、代謝機能を活性化させて患部を治癒するためだろう。患部を治癒するために起こる生体反応が炎症でありそれを抑制することは治癒を妨害することになる。
 因果を取り違えている。関節や筋肉に損傷が生じた場合に周縁部に発生する炎症を障害と考えているが、これこそ自然治癒力の発現そのものだ。炎症が起これば血流が増えて代謝機能が向上する。炎症を抑えてしまえば自然治癒力が働きにくくなる。
 火事が起これば消防隊が来る。火事と消防隊には因果関係がある。火事を無くせば消防隊は来ないが、消防隊が来ないようにしても火事は無くならない。道路を狭くして消防車が来れないようにすれば火事が無くなると考える人はいないが、それと同様の錯覚に基づいてアイシングをしているのではないだろうか。炎症を抑えれば損傷は治らない。それは消防隊の活動を妨害するような愚行だ。結果に対する対策は原因に対する対策にはならないし、対策に対する妨害であれば有害なだけだ。影を真っ直ぐに直しても本体が真っ直ぐに直る訳ではない。
 ダルビッシュ有選手の「中6日」発言がアメリカで波紋を広げているようだがそれは投手の肘の故障が社会問題化するほどに増えているからだろう。アイシングによって腫れず痛まない状態のままで損傷が温存されている。これはコレラの患者の症状だけを薬で抑えて退院させるような暴挙にも等しい。損傷が放置されるから肘の手術が増えているのだと私は考える。
 対症療法に対する過信こそ人間の思い上がりだ。現代の医療に可能なことは自然治癒力を支援することだけだ。現代医学だけでは治療など不可能だ。自然治癒力に対する妨害は絶対にしてはならない。専門家による反論に期待したい。