俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

妊婦

2015-07-10 10:01:08 | Weblog
 出産数は平日の昼間が圧倒的に多いらしい。誕生日なら誰でも知っているが誕生曜日を知っている人は少ないから意外な盲点だ。年末年始が誕生日の人が少ないことは割と知られているが、日曜・祝日生まれも少ない。
 何とも奇妙な話だが、こんな異常なことが起こるのは人為が働くからだ。医師が陣痛促進剤を使って出産日時をコントロールしているからこんなことになる。自然分娩では深夜から早朝にかけての出産が多いらしいから明らかに歪な操作だ。
 これを善意に解釈することはできる。スタッフが充分で父子のご対面もし易い時間帯に生まれれば何かと好都合だ。島根県のあるショッピングセンターでは爆買いする中国人の来店時刻に合わせて中国語の通訳を急遽50人も雇ったそうだが、買い物であれ医療であれスタッフが充実した時間のほうが安心・安全だろう。
 しかし母子のためにこれは良いことだろうか。陣痛促進剤の量を増やして出産日・出産時刻を強制的に早められて無害であるとは考えられない。これは母子のためではなく医師と看護師の都合のために無理やり産まされているのではないだろうか。休日や夜間に働きたくない医師や看護師の都合に出産日時が合わせられているのなら本末転倒ではないだろうか。
 これは決して杞憂ではない。陣痛促進剤を過剰に投与されて植物状態にされた女性の裁判が先月18日からさいたま地裁で始まった。詳しい事情はよく分からないが、どんな薬にも必ず副作用があり、陣痛促進剤が母子に悪影響を与える可能性は決して低くない。医療機関従業員の勝手な事情のために妊婦が危険に晒されている現状は問題視しても良かろう。
 妙な理屈を使うが、妊婦は一人ではない。胎児と合わせて二人だ。法的にはともかく実質的に妊婦は二人の命を預かっている。妊婦の安全を軽く扱うことは二人の命を軽視することになるだろう。病院側にそんな自覚があるのだろうか?

ポピュリズム

2015-07-10 09:32:05 | Weblog
 与党に文句を言うことだけが仕事なら野党の存在価値は乏しい。そんな低レベルの政党の主張はポピュリズムに偏る。
 日本共産党の公約は「賃上げ」や「高福祉」や「減税」などだが、共産主義や社会主義の本質は「大きな政府」であり大増税は必須だ。「天皇制廃止」や「日米同盟破棄」のような根本的理念には極力触れまいとする。
 かつての「自・社・さきがけ連立政権」が誕生した時の社会党の豹変ぶりは酷過ぎた。「非武装中立」や「安保反対」といったそれまでの党是を放棄した。この一事だけで社会党は壊滅した。
 政権を取るまでの民主党もポピュリズム政党だった。「増税しない」「子ども手当」「戸別所得保証」「高速道路の無料化」などのバラ撒き政策を並べていた。その一方で新たな財源は「埋蔵金の発掘」しか無かったから、いざ政権を取ると政策が破綻して、マニフェストに背いて消費増税を訴えた。
 庶民は甘言に弱い。古代ローマの時代から「パンとサーカス」が人気取り政策だった。現代ギリシャも歴代の政権がポピュリズム政策を採り、失業対策として公務員を増やし続け年金の上積み競争をしたから国家財政は滅茶苦茶になった。それに輪をかけたのがチプラス首相の率いる急進左派連合だ。「財政緊縮策拒否」や「債務減免」といった我儘そのものの政策を掲げて政権を奪ったのだからEU諸国と協調することは不可能だ。こんなポピュリストに政権を預けるべきではなかった。
 空想的な理想を説く政治家は嘘つきだ。平和という呪文を幾ら唱えても平和は実現できない。為替に介入しても相場を自由に操作できない。高福祉のためには高負担が必要だ。謝罪ばかりしていれば付け込まれる。「最低でも県外」と沖縄県民を煽っても解決には繋がらない。
 国民全体のためになるのならポピュリズムも悪くない。しかし実際のポピュリズムは多数者に迎合して少数者に負担を強いる政策だ。シルバー民主主義は、老人の安逸のために若年層や次世代に負担を押し付ける世代間格差政策に過ぎない。現在の多数者の幸福のために未来を犠牲にすべきではない。