俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

薬効

2015-07-20 10:19:22 | Weblog
 通常の医療であれば治療効果があって初めて「効く」と評価される。様々な薬であれ手術であれ、治療効果があるからこそ承認されている。ところが癌の場合、治療効果は必ずしも期待されていない。腫瘤の縮小や延命効果があれば医療として承認される。この特殊性が悪用され易い。
 例えば胃癌患者に対する抗癌剤や放射線治療によって癌細胞が縮小したとする。この縮小はあくまで当初標的とされた癌細胞だけが評価対象にされる。仮に肺癌が新たに発症しても「効いた」ということになる。これでは細長い風船を押し込んで凹ませるようなものではないだろうか。別の場所が膨らむだけだ。これでも「効いた」と言えるのだろうか。あくまで陰口だが「抗癌剤は増癌剤」とまで言われている。
 同じ人についてその治療をした場合としなかった場合を比較することは困難だから、延命効果についてはデータのトリックが使われ易い。例えば抗癌剤の副作用で死んだ人の場合、全死亡率ではデータとして使われるが、癌死亡率の対象外になる。事故などを含めて他の原因で死ぬ人が多いほど癌死亡率は下がる。極論だが、全員が抗癌剤の副作用で死んでしまえば癌死亡者数はゼロになる。
 連絡を取れなくなった人の扱いも酷い。死亡したから連絡が取れなくなった可能性が高いがデータ操作に利用される。1年間、生死が確認できなかった患者であればいつ死んだか分からないことを利用して生存期間を任意に増減できる。
 軽度の患者を混入させることによって有効性が高いように捏造することもある。承認申請をする薬に軽症者を、比較対象薬に重症者を割り振れば簡単に優良性を「証明」できる。臨床データの捏造は、散々騒がれた血圧降下剤ディオバンだけの話ではない。
 捏造ではないが数字のマジックも少なくない。100人中99人が死ぬ病気で2人助かれば「生存の可能性が2倍になった」と騒ぐ。しかしこれは99%から98%に1%下がっただけだ。誤差の範囲内だろう。
 癌のような先端医療でさえこのザマなのだから通常の医療はデタラメとオカルトの世界だ。頭痛薬の効能は頭痛の原因を取り除くことではなく頭痛を感じにくくするだけだ。頭痛薬の最大の副作用は頭痛の慢性化と言われている。笑えない笑い話だ。
 風邪の治療薬を発明すればノーベル賞が貰えるとまで言われているのに、不快な症状を緩和するだけの対症療法が横行している。1に睡眠、2に休養、3に栄養ではないだろうか。癌や風邪のような治療できない病気や老化現象などに関してはデタラメ医療が氾濫している。

臨界期

2015-07-20 09:37:38 | Weblog
 ある時期迄に適切な刺激が与えられないと成長が阻害されてしまう。これを臨界期という。視力であれば生後100日程度だ。先天性白内障の手術は生後100日以内でなければ効果が激減するそうだ。
 言語の習得にも臨界期があるようだ。特殊な事情があって10歳頃迄に言語を修得できなかった人の場合、その遅れを取り戻すことは殆んど不可能だと言われている。このことを根拠にして英語の早期教育が主張されるが、私は英語教育よりも日本語教育のほうが重要と考える。日本人の英語力が低いのは時期が原因ではなく使用頻度が原因だろう。日本ほど外国の文献が自国語で読める国は稀だ。殆んどの国では翻訳文化が貧弱なので英語で読まざるを得ないだけだ。だから英語力が高い。文化レベルが高いからこそ世界中の文献を日本語で読めるということを素直に喜ぶべきだろう。
 肉体にも精神にも臨界期がある。臨界期を過ぎれば成長は難しい。定年後に脳と体を鍛えようと思っても成長させることは難しい。現状維持が精一杯だろう。
 男性の場合、20代迄に鍛えれば筋肉が発達する。私は高校時代サッカー部に所属していた。その頃は日に日に太腿が太くなった。そのせいで就職する時にスーツ選びで困ったものだ。太腿で合わせるとウェストなどがブカブカになった。それから30年ほど経ってから同僚に「入社した頃の服が今でも着られる」と言って驚かせたが、何のことは無い。ウェストが太くなり太腿が細くなったから日本人の標準的な体型になり、当時の既製服が合うようになっただけのことだ。
 マッチョ老人を夢見たものだがそのためにはせめて40代迄に充分に鍛えておくべきだった。60代で鍛えても筋肉は成長しない。脳も若い内に鍛えておかないと手遅れになる。幾つになっても成長できるという話は嘘だ。老人を慰めるための俗説を真に受けて若い頃の鍛錬を怠っていれば後になってから後悔するばかりだ。