俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

過疎化

2015-07-18 10:20:18 | Weblog
 地方の過疎化が進むのは当然だろう。地方には農家と漁師しか残らないのではないかと思うほど格差が大きい。地方の過疎化を防ぐためには何らかの優遇策が必要ではないだろうか。そうでなければ「平等」ではない。
 私は母の世話をするために田舎帰りをしたものの不便さに呆れている。私のような老人でさえそう感じるのだから行動的な若年層であればもっと不満に思うだろう。商業施設は貧弱だし労働環境も悪い。高校時代の同級生で地元に残っているのは教師を含めた公務員と医者と地方銀行員だけだ。
 雨が降れば泳げない。これは当たり前のことのようだが、大阪に住んでいた頃は雨でも屋内プールで泳げた。夏の晴れた日は屋外で、それ以外の日は屋内で泳いでいた。大阪では高級リゾート地のような生活を低価格で楽しめた。
 今住んでいる伊勢市での主な交通手段は自転車だ。競泳の萩野公介選手が骨折事故を起こしたように自転車は余り安全な乗物ではないが、雨が降れば更に危険性が高まる。視界が悪くなりブレーキは利きにくくなりスリップもする。これでは怖くて出掛けられない。電車もバスも便数が少なく、都会と比べれば割高だから利用する気にならない。だから雨の日は家に籠ることになる。
 伊勢市は決してド田舎ではない。人口13万人の地方都市だ。それでも都会と比べれば随分不便だ。流石に「♪オラの村には電気が無エ♪」ということは無かろうが「電車が無エ」という町、あるいは日に数便しか無い町は少なくなかろう。
 伊勢では土曜の夕刊が無い。まさかと思われるような話だが日経新聞と地域紙の中日新聞以外の土曜日の夕刊を見たことが無い。それにも拘わらず月間の購読料は都会と同じ4,037円だ。月に4・5回夕刊が少ないにも拘わらず料金は同じなのだから、全国共通の筈の新聞料金でさえ差が生じている。
 本を買うのも大変だ。大型書店は都会にしか無いから頼りにするのはブックオフ・オンラインだ。しかし書名だけを頼りにして購入するからしばしば失敗する。親切なブックオフは以前にブックオフで買った本であれば告知してくれるが他所で買った本はフリーパスだ。これまでに何度重複購入をしたことやら。だから大阪へ出掛ける度に10冊ぐらいは纏め買いをする。
 大阪へ出ようとすれば近鉄特急で1時間50分掛かる。距離的にはもっと遠い名古屋から大阪までは新幹線でたった50分だ。近鉄特急は1時間に2本程度しか無いが新幹線なら10本以上ある。しかも始発は早くから、終電も遅くまである。大阪へ出るための電車は伊勢よりも名古屋のほうが圧倒的に便利だ。都会のほうが便利なのだから人は必然的に都会に集まる。地方の長所は住居費の安さだけだ。不便な場所ほど安くなる。

強行採決

2015-07-18 09:37:02 | Weblog
 自民党の肩を持つつもりは無いが安保関連法案の採決は「強行採決」だったのだろうか。他紙やテレビはともかく、狡賢い朝日新聞は極力「強行採決」という言葉を使わず「採決を強行」と表現していた。これは朝日新聞でさえ強行採決とは見なし難いと考えているからだろう。
 強行採決という言葉はいかにも反民主的で暴力的なイメージがある。しかし採決をする側と採決を阻止しようとする側のどちらのほうがより非民主主義的だろうか。
 昨年12月の衆議院選挙の手口は悪辣だった。野党がバラバラになった時期を見計らって解散をした。私はこれこそ「強行選挙」だったと思う。これと比べれば今回の採決は決して「強行」ではない。
 多数決は民主主義の根幹だ。これを否定すれば民主主義というシステムそのものが崩壊する。だから、野党が何等かの事情で採決に参加できない時を狙った採決でなければ強行とは言い難い。むしろ暴力的な手段で採決を阻止しようとすることこそ反民主主義だろう。少数派が反対すれば採決さえできないような仕組みは多数決よりも悪い「少数決」だろう。
 今回の採決が抜き打ち的でなかったことは明らかだ。だからこそ一部の政治家はプラカードを事前に準備して、委員長や議席ではなくカメラに向けてアピールをしていた。プラカードの総てがテレビカメラに向かっている姿は醜悪だった。
 昨年2月、タイのインラック政権は総選挙を実施しようとした。国を破綻させかねないポピュリズム政策を採るインラック政権は選挙になれば勝てると確信していた。選挙で勝てないと考えた反政府側は選挙阻止を図った。多くの投票所が占拠されたために選挙は無効になった。議会政治が機能しなくなったから5月に軍事クーデターが起こって今に至る。
 私はインラック政権やギリシャのチプラス政権のポピュリズム政策には大反対だ。私はポピュリズムを民主主義の「鬼っ子」だと考える。未来を犠牲にして現在の安逸を提供する政策は、未来のことなど気に掛けない多数者の支持を集め易い。メタボになりそうなそんな甘ったるい政策ではなく、口に苦い良薬こそ求められるべきだろう。しかしタイの民主主義を崩壊させたのは選挙を暴力的に阻止した反政府勢力だろう。現時点では多数決に代わる制度が無いのだから、多数決の否定は民主主義の否定になる。現行制度の元では採決する権利を奪うことはできない。私は未来の人々も含めた多数決を理想とするが、これを制度化することはできない。今の有権者が未来に充分に配慮することを期待するだけだ。