俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

農業(2)

2013-03-21 10:06:00 | Weblog
 私の最初の海外旅行先はグアムだった。沖縄へ行くよりも安いと気付いたからだった。こんなセコい理由で選んだにも関わらず、当初はステーキハウスを食べ歩くなど結構贅沢な旅行を楽しんでいた。「安い」と思ったからだ。グアムやハワイは離島なので米本土よりも物価は高いのだがそれでも随分安く感じた。
 日本の食料自給率は40%しか無い。ところが日本の農業の生産額は8兆円で世界で5位だと言う。この不可解なギャップの正体は何だろうか。実は日本の食品の価格は異常に高い。日本にしか住んでいなければこの事実に気付かないが、海外旅行をすれば外国の食品の安さ=日本の食品の高さに嫌でも気付かされる。ではなぜ日本の食品は高いのか。それは半鎖国状態だからだ。国内にいる限り日本人は非常に高い食費を負担させられていることに気付かない。国民が無知な状態に閉じ込められているのだから北朝鮮を笑えない。
 TPPで外国の安い農作物が輸入されれば日本の農業が滅ぶと言うが、国際価格から乖離した高い食費を負担させられている日本人消費者こそ被害者なのではないだろうか。国際的に見れば充分な収入を得ているにも関わらず日本人が幸福を実感できないのは、教育や福祉とかいった問題ではなく単に高過ぎる食料品が原因なのではないだろうか。
 農協はことあるごとに補助金の増額を要請する。ウルグアイラウンド関連の補助金だけでも6兆円だったそうだ。補助金は勿論税金だ。補助金で散々国民に負担をさせておいて異様に高い食品しか供給できないのなら日本の農業など滅んだほうが国民のためになるのではないだろうか。農業にとって害虫や寄生虫は大敵だが、補助金漬けの農業こそ日本に巣くう害虫や寄生虫なのではないかとさえ思える。
 

リスク

2013-03-21 09:40:38 | Weblog
 「○○を食べれば△△(病)になるリスクが50%高まる」という類の報道がしばしばある。これらのデータは本当に意味があるのだろうか。
 例えば2%の人が発病する生活習慣病(非感染症)があるとする。特定の集団では3%の人が発病するならリスクが50%高いとされる。しかし病気に罹らなかった人に注目すれば、全体での98%に対してこの集団では97%が大丈夫だったということだ。つまり1-97÷98=0.0102なので百分率にすれば僅か1.0%危険度が増すに過ぎない。これを「リスクが50%増す」と主張することは数学的に考えて妥当なのだろうか。
 あるいは健康食品などで「リスクが2割減る」という内容が曖昧に表現されていることがある。薬事法に触れないために曖昧に表現しているが、この元データが本当だとしても、こちらはどうだろうか。仮に10%の人が罹る病気が8%になれば2割減ったことになる。しかし同様に罹らなかった人に注目すれば90%が92%に増えるだけだ。2割ではなく2.2%の効果しか無いのではなかろうか。
 肉や塩や砂糖や炭水化物や清涼飲料水などがこんな論法で有害だと主張されている。しかしこれらのデータは上述の例と大同小異なものに過ぎない。小さな数値を捕らえて文字通り針小棒大に騒ぎ立てることは有害無益とさえ思える。
 どの食品も多かれ少なかれ有害性がある。有害性の無い食品は存在しないのだから、もし特定の野菜ばかりを大量に摂取すれば、その野菜特有の毒素が蓄積されて病気になるだろう。「あれは悪い・これは良い」ではなく偏らない食事こそ奨励されるべきだろう。

審判

2013-03-19 11:03:32 | Weblog
 選手一人で八百長を演出するのは難しいが審判はたった一人でも八百長試合を演出できる。
 判定が問題になった国際スポーツ大会が続いた。フィギュアスケートの世界選手権と野球のWBCだ。
 昔からよく揉めたフィギュアスケートの採点はかなりガラス張りになっているので私は余り不満を感じないが、WBCの主審の判定には少なからず疑問を感じる。特に昨日(18日)の日本対プエルトリコ戦の主審は酷かった。判定基準がバラバラだったように思う。
 前田健太投手の決め球は外角低め一杯に落ちるスライダーだろう。これがストライクと判定されるかボールと判定されるかは大違いだ。昨日の主審の判定は甘かったり辛かったりして一貫性が無かった。そのため最後までストライクゾーンが確定せず前田投手にとっては満足できる投球ができなかった。
 ゲームの判定ではないが、レスリングが中核競技から外された経緯も不透明だ。国際性・人気など39項目の評価基準に基くと言うがその内容は公表されていない。総合的判断というタテマエで恣意的判断が横行するなら困ったことだ。
 選手はルールに従ってプレイする。ルールの中でベストを尽くす。ファンもルールに基いてゲームを楽しんでいるのであって、審判がルールを破ればゲームはぶち壊しになる。審判がゲームの生殺与奪権を握っているのだから、選手のランキングと同様に審判のランキングもあって良かろう。判定する者に対する評価があって然るべきだろう。審判の育成は選手の育成と同じぐらい重要だ。下手な審判や悪い審判は選手もゲームも駄目にする。

税収増

2013-03-19 10:37:01 | Weblog
 増税の目的は税収増だ。来年の4月に消費税率が5%から8%に上げられるのも税収を殖やすことによる財政再建を目論んだものだ。しかし税収増のために増税をすることは下策だろう。上策は増税をせずに税収を増やすことだ。
 そんなことが可能だろうか。1つはサラリーマンの収入を増やすことだ。自営業者などとは違ってサラリーマンの収入はガラス張りになっているので、サラリーマンの収入が増えれば必ず税収も増える。意外なことに企業にとって人件費率は余り高くない。大抵の企業は10%前後に過ぎない。人件費を5%殖やしても企業の収益は0.5%分低下するだけだ。その一方で税収は累進税率があるので確実に5%以上増える。安倍首相が企業に対して賃上げを要請するのは税収増という狙いもあってのことだろう。
 もう1つは物価を上昇させることだ。これも意外な盲点なのだが、適度のインフレは企業業績にとってプラスに働く。安く買って高く売れるからだ。つまり買った商品を横流しするだけで利益が生まれる。材料を加工した製品も、先に動いたほうが後から材料を加工する企業よりも優位になる。穏やかな物価上昇は経済を活性化させる。この20年の経済政策はインフレを恐れる余りにデフレを放置していた。
 物価を上昇させるのは簡単だ。物価を抑える政策の逆をやれば良い。金(かね)の値打ちは需要と供給で決まる。金を増やせば物価は上がるし為替レートは下がる。リーマンショックの時点で殆んどの国が通貨供給量を大幅に増やした中で、日本はその対応が不充分だったために円高を招いた。円安にする最善策は通貨量の増加であって為替介入ではない。民主党時代の馬鹿な大臣は下手な為替介入をして国益を損なったが、安倍首相のブレインは彼らよりもずっと優秀なようだ。

時と金

2013-03-17 09:16:17 | Weblog
 人的サービスを受ける場合、時間が長いほど料金は高くなる。マッサージだろうと風俗店だろうとそれは共通だ。しかしそれは快適なサービスに限定されるべきだろう。不快なサービスなら時間の長さは付加価値ではなくデメリットだ。
 長時間の歯の治療は極めて不愉快だ。どうせ同じくらい痛いのなら、あるいは多少痛みが増してでも、短時間で終わらせてもらいたいと思う。
 食堂で調理を待つ時間も無駄な時間だ。昔の人は鰻屋で1時間待ったそうだが私にはできそうにない。ファストフードのほうがずっと好ましい。寿司やソバは江戸っ子のファストフードだったらしい。
 都会では当り前の短時間理容店が地方には殆んど無い。これは全く困る。私にとって散発は特に不愉快な時間なのでできるだけ早く済ませたい。ところが時間が長くて高い昔ながらの散髪屋しか無い。彼らとしては客数が限られているだけに少しでも付加価値の高い理容にして客単価を上げているつもりなのだろうが有難迷惑だ。私にとっては短時間なほど好ましい。同じレベルの仕事を半分の時間でやってもらえるのなら2倍払っても良いとさえ思う。
 人件費から考えれば長時間なら高コストということになるが客としては納得できない。これは仕事の遅い者に時間外手当を支給するような馬鹿げた仕組みであり、料金は時間ではなく成果に見合うべきだろう。
 最近、コンビニなどの弁当がよく売れているそうだが、これはファストフードよりも更に早いということも一因ではないだろうか。time saving(時間節約)ということをもっと重視しても良いように思える。

麦の加工貿易

2013-03-17 08:45:29 | Weblog
 歴史に「もし」は禁物かも知れないが、もし農林水産省が小麦の輸入に関して過剰な規制をしていなかったら日本の産業構造が変わっていたかも知れない。主要産業となり得ていた事業の大々本命は即席麺だ。現在、世界で年間何と1,000億食も消費されている。これを発明したのは安藤百福氏であり、その後の様々な改善も殆んどが日本で生まれた。普通なら日本は即席麺の輸出大国になって然るべきなのにそうならなかった。小麦が国際価格の2・3倍もするからだ。そのために膨大な海外需要に対して国内生産ではなく海外生産やライセンス供与という形を取らざるを得なかった。もし国内での小麦の流通価格が正常なものだったら輸出工場によって大量の雇用が生まれ現在も主要産業となっていただろう。因みに即席麺の日本の輸出量は僅か4,700万食に過ぎない。多分、殆んどが在外邦人向け需要だろう。1,000億食とのギャップは余りにも大き過ぎる。
 資源の乏しい日本は加工貿易によって富を得た。自動車も家電も輸入した原材料を加工して輸出する。もし鉄や石油などの国内流通価格が小麦のように不当に吊り上げられていたらこんなビジネスは成立しない。
 小麦の価格は農水省による独占的国家貿易によって徹底的に歪められた。農水省の愚策さえ無ければ、日本は即席麺だけではなく菓子やパスタなども含めた加工食品の輸出大国になっていたのではないだろうか。旨味を発見した日本人の味覚は鋭い。加工食品において世界最高レベルの商品を作ることぐらい大して難しくなかろう。
 世界一の小麦輸入国は何とイタリアだ。世界中から良質な小麦を輸入してパスタに加工して輸出している。日本が見習うべき戦略はイタリアのパスタであり、日本の自動車・家電だった。麦農家を守るという大嘘を使って只管省益に励んだ農水省は亡国の徒とさえ言えよう。

隕石

2013-03-15 09:37:43 | Weblog
 丁度1ヶ月前にロシアに落ちた隕石は日本人にとっては非現実的なものだった。大量に放映された映像は余りにも現実離れしていたのでまるで映画のシーンのようにさえ感じられた。しかしロシア人にとってはそうではない。こんなあり得ないことが現実になったことから少なくない人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているらしい。
 この事件は、現在の科学では隕石落下事故を防げないことを実証してしまった。地上の特定の地点から発射されるミサイルの弾道なら予想できても、広大な宇宙のどこから飛来するのか分からない隕石にはお手上げだ。予防も予知も不可能だからその都度対応するしか無い。しかし隕石による被害は非常に稀な現象であっても、流星は毎日多数観測されている。燃え尽きなかった流星が隕石になるのだから、いつどこに落ちるのか全く分からない。
 こんな状況で原発の安全はどうやって守れるだろうか。非現実的なSFの話ではなく現実的な隕石襲来に備えて原発の周囲に迎撃ミサイル基地を作るべきだろうか。仮に最大限の投資をして最新の兵器を集積しても原発を隕石から守ることはできまい。
 結局、守れないものは作るべきではない、ということだろう。隕石によって破壊されても「運が悪かった」と諦められるもの以外は作るべきではない。隕石に対処できるほど科学文明が発達した時点で初めて人類は原子力を利用する資格を得るのではないだろうか。

遠近法

2013-03-15 09:01:56 | Weblog
 13日付けの「麦の関税」で農林水産省を酷評したが、これは国民として、国益を損なう農水省の隠蔽体質を非難したのであり、農水省を「悪の組織」として断罪した訳ではない。彼らは個人ではなく農水省職員として最大限の省益を得るために働いているだけだ。
 人は視覚だけではなく精神においても遠近法に縛られている。近くのものは大きく、遠くのものは小さく見える。従って最も大きいのは自分とその家族であり、次に大きいのは農水省関係者、一般の国民は遥か遠くの小さな存在に過ぎない。
 彼らはこう主張するだろう。
 私は最難関の国家公務員1種試験(旧:高文・・高等文官試験)に合格して高級官僚になったエリートだ。それにも拘わらず銀行やIT企業に就職した同窓生だけではなく地方公務員よりも安月給だ。これは不当なことだ。
 幸い農水省には多くの役得がある。これらは優秀な諸先輩が築き上げた農水省職員の財産だ。これらを死守することは農水省およびOBのために必須であり現役職員の重要な責務だ。
 小麦で得る省益は18,530円(ペーパーマージン)×570万t(年間輸入量)≒1,000億円に過ぎない。こんなはした金を、国民のために身を粉にして働く我々および特殊法人のために使って何が悪かろう。もしこの金を国民に還元しても一人当たりたったの1,000円だ。平成21年にバラ撒かれた定額給付金は一人当たり12,000円・総額2兆円だったが大した経済効果は無かった。それと比べて我々が毎年使う1,000億円は有効に活用されている。
                *              *
 もし開き直って正直にこう発表するなら私は文句を言わない。裏金を国民に隠蔽していること、そしてそれをマスコミが黙認していることを非難しているだけだ。隠さずに公表したらあとは社会が判断することであって私は関与しない。

麦の関税

2013-03-13 11:04:02 | Weblog
 12日に自民党のTPP対策委員会は「守り抜くべき国益」として関税の堅持を求める品目に、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の5品目を挙げた。
 他の品目はともかく、麦の関税が国益に適うとは考えられない。ただの省益、農水省の天下り団体の利益だけが目的ではないだろうか。
 まずそれぞれの自給率を見よう。米100%、牛肉43%、豚肉50%、乳製品68%、砂糖類34%であり、これらの農家を保護するのなら分からないでもない。しかし小麦の自給率は14%で大麦・裸麦は8%だ。合わせて10%程度の自給率しかない麦の関税を守ることがなぜ国益に適うのか全く理解できない。
 しかも国産の小麦の多くが米の減反政策に基く転作物だ。転作農家には10アール当り35,000~70,000円の転作奨励金が支払われるので転作地の農産物は非常に杜撰に管理されている。「日本は世界5位の農業大国」に拠れば国産の小麦は「品質が極めて低いということを、農水省と農業団体は公式に認めている」ほどの代物だ。こんな麦と麦畑を守る必要があるのだろうか。むしろ麦の作付けを禁止して総て非課税で輸入したほうが国民および国内産業(食品加工業)のためにずっと有益だ。
 農水省が麦を聖域化したがる本音は国家貿易の維持だろう。信じられないような話だが農水省は小麦の貿易を実質上独占することによって毎年1,000億円以上の利益を得ている。これを一般会計ではなく特別会計に組み込んで、国民からは見えない省益にしている。
 許し難い現状をTPPでも守ろうとする農水省の露骨な省益追及を絶対に許すべきではない。マスコミが今後ちゃんと報道してくれることに期待したい。マスコミが駄目なら「赤旗」でも何でも構わない。この犯罪的行為を国民に広く知らしめてほしい。

公務員

2013-03-12 09:31:21 | Weblog
 憲法に関する議論が盛んだ。以前からの9条「戦争の放棄」以外に96条「憲法改正の手続」が俎上に載せられている。1票の格差も14条「法の下の平等」に基いて定数是正が求められている。
 そんな中で明らかに違憲状態でありながら政官がグルになって無視している条項がある。第15条「国民の公務員選定罷免権」だ。条文は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」とされており、その第3項には「公務員の選挙は、成年者による普通選挙を保障する。」と明記されている。
 ここで言う「公務員」とは誰のことだろうか。国会議員も最高裁判事も地方公共団体の首長および議員についても別途定められているのだからこれら以外の通常の意味の「公務員」と考えざるを得ない。しかし国家公務員であろうと地方公務員であろうと、「選定」したことも「罷免」したことも「選挙」をしたことも無い。これは明らかに憲法違反ではないだろうか。早急に少なくとも国家公務員上級職を選定する普通選挙が必要だろう。最低限でも問題のある公務員に対する罷免権を行使すべきだろう。国民が公務員を罷免できるなら態度の悪い公務員は随分少なくなるだろう。
 私は決して法律至上主義者ではないが、「憲法を守れ」と声高に主張する人がこの条項を無視することは不当だと思う。これでは「憲法のうち我々に都合の良いものを守れ」と言っているに過ぎない。憲法として定められている限りそれに従うことは国民の義務であり、15条についても遵守か改正かを検討する必要がある。放置するのなら無法国家・脱法国家だ。法曹界は「国民主権の理念に過ぎない」として骨抜きにしているが9条同様、明らかな曲解だ。