GO-TOキャンペーンとやらに抗して、夏の最後に旅を計画した。
メンバーはキャンペーン対象外のTOKYO在住だ。同じように税金払ってるのに??と、不平等を呪うメンバー!
有名クラシックホテルに投宿した。満室だ。
クラシックとは古いだけであった。黴臭い、煙草臭い、全てにメンテナンス不足、センスの無い従業員と最低のサービス品質にメンバー全員不満爆発であった。
一泊目の夕朝食に懲り、以前から気になっていた日光湯葉料理の店に夕食を予約した。
これが大当たりであった。
当店の道路向かいにある日光珈琲の空席待ちの間に、パンフレットを見ながらウロウロしていたところ、当店の若女将に声を掛けられ、夕食の予約をお願いしたものである。 これもご縁であろうかと。
一階に三部屋の個室があり、コロナ禍の影響もあり現在一日一組限定で懐石料理を提供しているとのこと。
実に上品な当代女将が、ピシッと着こなした和服で運んでくれる料理が始まった。
山芋を出汁と寒天で豆腐様に仕立てた付き出しである。筆者の淡雪羹??の問いに女将の丁寧な説明である。 実に繊細な出汁と滑らかな舌触りに始まる料理の期待は高まる。
生湯葉と烏賊の刺身である。涼やかにグリーンアスパラと胡瓜が出汁洗いの手間をかけて添えられている。
同行の中国籍の友人が"出汁洗い"の調理に感激の態である。
三品目は合鴨と結び湯葉の茶わん蒸し。
思ったより濃いめの味付けは、具の合鴨に合わせたのであろうか。載せられた酢だちで味の変化が生まれて絶妙である。飾りつけだけではない取り合わせの意味が配されて妙である。
煮物である。 茄子の揚げ煮びたしと、同じくしっかりと出汁を含ませたトマトと隠元、主役の湯葉である。
筆者もこの時期、良く作る茄子の揚げ浸しであるが、揚げた後の出汁煮の処理に技が隠されているとの女将の言である。
焼き物は、ご当地物の虹鱒を燻製にして、秘密の処理が施されている様である。
単なる燻製ではなく実にしっとりと脂の回った柔らかな旨みと食感である。 筆者には少々塩分の効きすぎの感はあったが、同行メンバーには高評価だ。
六品目は 汁椀である。
青菜に人参、えのきとシメジと鳥そぼろの餡で、巻揚げ湯葉を汁物に仕立てた逸品である。
使われる器の変化と取り合わせも、細やかな日本料理職人と主人の心配りが思えて実に心地よい時間が過ぎてゆく。
揚げ物は、海老二尾を湯葉で一つにして揚げたのを、抹茶塩で頂く。付け合せは椎茸と獅子唐辛子。
小ぶりではあるが二尾合わせることで、海老の食感が豊かで甘みが増した感。
八品目は酢の物
鬼怒川の奥地の清流で育てた鱒と生湯葉を酢の物に仕立てた逸品。脂の乗りと爽やかな味の鱒に選ばれた素材を実感。
地酒の純米大吟醸の酔いと併せて、満腹満足の態の筆者である。
食事で、氷見うどんの温かいのと冷たいのを一品供された。筆者は暖かいのを所望。
細身でつるつると喉越しの良い饂飩である。 満腹の胃袋に苦も無く飲み込まれてしまった。
次がデザートだと聞いて、同行女士連からもっと食べ続けたいと名残惜し気な声が上がって、驚!!
最後が水菓子
奄美の黒砂糖を寒天で固めたゼリーの周りに豆乳を流し、豊水梨と柿を配した一品。 素朴な黒砂糖の味が豆乳で実に上品に変化している。果物と併せて自然の甘さが接妙な和食デザートとなっている。 香ばしい焙じ茶ガ供される。
併せて十品のコースだったのかと、名残惜しくも最後の酒を飲み干していたら・・・・
女将の心配りであろうか・・・
抹茶が供された。 家族付き合いの中国籍の友人の話をしたので、和食懐石のおもてなしの気持ちであろう。
実に心地よい応接の店であった。200年を超える老舗の真髄なのであろう。 クラシックとは云いつつ明治以降創設100年経過の底の浅さを見せるホテルの不評を挽回してくれた高井家さんであった。